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人手不足は本当に「悪」なのか 騙され続ける日本人

4/9(火) 8:06配信

ITmedia ビジネスオンライン

 4月5日、東京商工リサーチが、「人手不足」関連倒産が前年度から28.6%増の400件となって過去最多だと発表した。

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 という話を耳にすると、「そら見たことか、一刻も早く外国人労働者をジャンジャン投入しろ!」とドヤ顔で主張される方も多いことだろう。

 あるいは先日、子どもたちへの謝罪が話題となった五島勉氏の『ノストラダムスの大予言』ばりに、「このまま人手不足が進行すると日本が滅びる!」という恐怖にとらわれて眠れぬ夜を送っている、という方もおられるかもしれない。

 いずれにせよ、日本の「人手不足」というものが、いよいよのっぴきならない状況になった、と危機感を抱く方が大半なのではないか。ただ、筆者の感想はちょっと違う。危機感を抱くのはまったく同じなのだが、その中身は180度逆なのだ。

 このニュースをネガティブに受け取る方が多いことは、「人手不足=悪いこと」と信じられており、「人手不足倒産」は社会全体で避ける「悲劇」だと思われているということだ。

 これはかなりマズい。

 「人手不足=悪いこと」なので、「人手不足」を招く「賃上げ」も「悪」とされてしまうからだ。

 賃金が上がらないと、先進国で最下位の労働生産性はいつまでたっても上がらない。それは低賃金労働者を拠りどころとした「低価格・高品質」競争が続くことでもあるので、日本のデフレ脱却は夢のまた夢ということだ。

 つまり、「人手不足=悪いこと」という常識が続く限り、日本に明るい未来は訪れないということだ。

 「はあ? 日本中が人口減少で働き手がいなくて困っているのに、そんなワケのわからぬイチャモンをつけるような反日ヤローは今すぐ日本から出て行きやがれ!」という愛国心溢れる方たちからの罵詈雑言が飛んできそうだが、そもそも「人手不足」と、今の日本が直面している「人口減少」はそこまで大きな因果関係はない。

「雇用ミスマッチ」が大きな要因

 厚生労働省職業安定局の「人手不足の現状把握について」(平成30年6月1日)を見れば明白だが、日本の人手不足は局地的な現象で、建設業、宿泊業・飲食サービス業、医療、福祉、運輸業、郵便業などのいわゆる「人手不足産業」と、そうではない産業に大きな落差がある。

 そして、これらの分野別の分析を見ると、人手不足の原因・特徴は「労働者時間が長く、給与水準が低い」(運輸分野)、「休日が少ない」(建設分野)、「賃金が安い」(介護分野・宿泊業、飲食サービス分野)とある。

 もうお分かりだろう。人手不足は人口減少うんぬん以前の問題で、過酷な労働条件にもかかわらず低賃金がゆえ働き手から敬遠されるという「雇用ミスマッチ」が大きな要因なのだ。

 「雇用ミスマッチがあるのは事実だが、それを悪化させているのは人口減少だ」と食い下がる人手不足業界の方も多いかもしれないが、この問題に人口が減った、増えたが関係ないことは既に歴史が証明している。

 例えば、人口が右肩上がりに増えていた1960年代も、日本は「深刻な人手不足」が社会問題になっている。人手不足が原因で中小企業はバタバタと倒れ、1965年の中小企業白書によれば、倒産は4200件にものぼった。

 そう聞くと、「人は増えていたけれど、高度経済成長期でそのペースを上回るほどの人手が必要だったんだな」とか思うかもしれないが、この事態を招いたのは「人の数」ではなく「賃金」である。

 『大企業 過剰人員整理急ぐ 中小企業 人手不足が深刻化』(読売新聞 1962年6月12日)という当時の新聞記事を見ても分かるように、実はこの時代、大企業の製造業は、臨時工という非正規から正社員にしたものの、事業縮小、集中生産などで人が余ってリストラを敢行していた。

 そうやって労働力がちまたに山ほど溢れているにもかかわらず、中小企業は「人手不足」でバタバタと倒産をしていたのである。

 中小企業がほしいのは、安い金でコキ使える若者だが、大企業からクビを切られてちまたに溢れているのは、賃金要求の高い中高年。彼らはそもそも重労働・低賃金の「人手不足業界」で働こうというつもりもない。

 当時はこれを「中小企業にとっては“見込みなき求人”が激増するという皮肉な現象」(同上)と説明したが、現代でいうところの「雇用ミスマッチ」であることは明らかだ。

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