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「カメラを託されて生きる目的が生まれた」“ホームレス“の人々が撮影した写真を販売するサイトが生まれるまで

4/10(水) 10:55配信

ハフポスト日本版

「ホームレス状態を生み出さない日本の社会構造をつくる」という目的のもと、ホームレスの人をはじめとする生活困窮者への就労支援、生活支援を行っている団体がある。大阪を拠点に活動する認定NPO法人Homedoorだ。

Homedoorは4月5日、ホームレス状態の人々をカメラマンに起用した新たな取り組みを始めた。企画を始めた経緯を、団体の理事・事務局長を務める松本浩美さんに聞いた。

“ホームレス”の人たちの現状は?

国の法律で《都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者》と定義される人々。世に言う「ホームレス」。

平成30年1月に厚生労働省が実施した全国調査によれば、確認されたホームレスの数は4,977人(うち、男性は4,607人、女性は177人)。数字だけを見れば、年々減少している。

しかし、社会全体が彼らを見る眼は依然として偏見が大きく、課題の1つである彼らの生活支援や就労支援もまだまだ道半ばというのが現状だ。

生きる目的を与えたのは、1台のカメラ

「ホームレス状態を生み出さない日本の社会構造をつくる」というのが、Homedoorのビジョンだ。

新たに始まった『Snapshot taken by Homeless』という取り組みは、ホームレス状態の方々がカメラマンとなり、各々の感性で日常のスナップ写真を撮影。撮った写真はwebサイト上で販売され、サイトの閲覧者はお気に入りの写真を購入できる。写真の売り上げは、撮影者であるホームレス状態の人に直接支払われるという仕組みだ。

撮影が行われたのは2018年5月から6月。10人の参加者に、それぞれインスタントカメラ4台が手渡された。撮影可能なのは、1人で約100枚。彼らに与えられた指示は「心が動いた瞬間にシャッターを切ってください」ということのみ。いつ、どこで、何を撮るのも自由だ。

この取り組みに参加した男性の1人に話を聞いた。男性は当時61歳。大阪市北区にある、とある橋の下で路上生活をしていた。元々は運送業に従事していたが、40代の頃に心不全になり、以後仕事が続けられず10年ほど引きこもりのような状況になった。家賃を払う事もままならなくなり、その後、路上での生活を余儀なくされたという。

カメラを渡された時のことを、男性はこう振り返った。

「素人だし、最初は何を撮っていいか分からんかった。だからどうしようと思ったけど、色んなものを撮ってたらいつの間にか夢中になってたんよね。楽しくて、心が無になれるというか...」

単に楽しいだけではなく、心境にも大きな変化があったと男性は言う。

「路上での生活って、心が死んでいくんです。1日がね、違った意味で『時間との戦い』なんです。早く日が暮れてくれへんかなーって。 路上で生活してることを恥ずかしいと思っていたし、人目も気にしていた。でもカメラを託されて、心が死んでいた生活の中に、生きる目的が生まれたんです」

「上手くもないし、通りかかったところで面白いと思ったものを撮る。ただそれだけなんですけど、2週間の期限の終盤あたりは、カメラワークなんかも考えたりしちゃってね...」

最初は「ノルマ」だと思っていた100枚。気がついたら、あっという間に撮り終えていた。

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最終更新:4/10(水) 10:55
ハフポスト日本版

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