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新宿花園神社に水族館劇場 満洲ロマンを突き抜けて建つ!

4/11(木) 15:48配信

ニュースソクラ

【インタビュー】水族館劇場代表・桃山邑氏

 春爛漫、東京・新宿の花園神社で「水族館劇場」の新作、『Nachleben(ナッハレーベン)揺れる大地』(4月16日まで)を観た。メディアには新元号「ビューティフル・ハーモニー」が溢れ、人びとは花見酒に酔い痴れる。そこに強烈なぶちかましだ。Nachlebenとはドイツ語で「死後の生」の意味だという。

 水族館劇場の演劇は、代表の桃山邑(ゆう)と役者たちが仮設資材で芝居小屋をつくるところから始まっている。図面を引き、鉄パイプや足場を複雑に組んで客席も設え、その場所に合ったスペクタクル空間を、ひと月以上かけて築く。「土着」への並々ならぬこだわりである。

 そして、公演初日を迎えると、野外劇で芝居の幕は開き、小屋のなかに誘われる。ヒエラルキーに覆われた現実社会から、怪しげで荒々しい祝祭空間へと入っていく。漂白された「正しさ」にうんざりしている身には、この結界をこえる感じがここちよい。

 劇は、満洲男と名乗る少年の地下道にわびしく響く歌声で滑りだす。世阿弥が幼少期の役者の魅力を言い表した「時分の花」が咲いている。

 舞台に外国人労働者が汗を流す建築現場が現れた。生身で亡者を演じる役者たちの傾(かぶ)き方が尋常ではない。舞台は回り、大日本帝国の傀儡国家「満洲国」の巷に変わる。

 かつて関東軍の発案で満洲に送り込まれた満蒙開拓団と、豊かな日本に出稼ぎにくる外国人労働者が重なって見える。貧農出身の女工の長台詞は、以前、私が取材したネパール人の女性結核患者の「咳」のようだ。

 その女性は、夫とともに調理師の技能ビザで来日した。夫は国民健康保険に入れたけれど、家計に余裕がなく、自分は無保険で病院に行けなかった。体調を崩すと母国から山のように持参した薬を飲んで紛らしているうちに結核に罹ってしまった。国民国家の制度は、内向きでよそ者に冷たい。近代って何だろう。

 などと、余計な妄想にとらわれている間に、芝居は、あの世とこの世の狭間でけたたましく進み、クライマックスへとなだれ込む。なにが凄いって、とにかく「水」です。大量の水を芝居の道具立てで使いこなす桃山と役者たちの活力に脱帽した。一昨年の横浜・寿町公演では、なんと25トンもの水を使ったという。水、水、水……と口中でつぶやく。

 幕が下り、なぜか「水戦争」を連想しながら芝居小屋を出た。

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最終更新:4/11(木) 15:59
ニュースソクラ

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