ここから本文です

“ゴーン予備軍”は存在する――「怪物」を生まないために

4/12(金) 8:42配信

ITmedia ビジネスオンライン

 日産自動車のカルロス・ゴーン前会長を巡る事件報道が再び過熱している。4度にわたる逮捕劇に加え、記者会見を阻まれたゴーン前会長本人が無実を主張している動画を弁護団が公開するなど、劇場型の展開が続く。

【画像】「ゴーン報道の第一人者」井上久男氏の経歴

 日産や検察、弁護側のリークとみられる情報が錯綜する一方で、問題を単なる同社の“お家騒動”に終わらせず、「ゴーンとは一体、何者だったのか」と問う言説が現れ始めた。朝日新聞記者時代から長年にわたり日産とゴーン氏を追い続け、『日産vs.ゴーン 支配と暗闘の20年』(文藝春秋社)を2月に上梓した井上久男氏も警鐘を鳴らす1人だ。

 前編記事(「ゴーンという『怪物』を生んだのは誰か 日産“権力闘争史”から斬る」)では、ゴーン前会長の登場前から「独裁者」が現れ、派閥抗争を繰り広げてきた日産の歴史をひもとき、“怪物”を生み出した土壌について指摘した。後編では、ゴーン前会長に何度も単独インタビューをしてきた井上氏に、希代のカリスマの実像とゴーン事件が日本社会に残す問題について直撃した。

――井上さんは2007年と18年にゴーン前会長に単独インタビューをしています。ゴーン前会長はやはりカリスマ性や魅力を感じる人物にも見えますが、実際の印象はどのようなものでしたか。

井上: メディア対応がうまい人ですね。30~40分くらいの取材で原稿が何本も書けるくらいでした。想定問答が用意されていなくても、自分の頭で考えたことをビシッとしゃべれる。メディアには有難い人物です。

 彼は「プロの経営者というものは複雑なことをシンプルに説明できる」ということをモットーにしていました。若い時から経営者を務め、メディアや株主、従業員といったステークホルダー(利害関係者)に対して、どのように説明すれば理解してもらえるかを考え、自分なりに訓練してきたし、分かりやすく伝える才能もあるのだと思います。

――来日以来、何度もインタビューをされていますが、彼と直に接して印象が変わったことはありますか。

井上: メディアに対してのしゃべり方、考え方は(日本に)来た時から変わっていないと思います。「ああ言えばこう言う」というのがうまいところもあるし、逆に自分が反論できないと思うと「私は自信がないです」というような発言をしてしまう。

 07年にゴーン氏が来日以来、初の減益になり、全国行脚して日産の関係者に取材をして、長いレポート記事を書いたのですが、その時のインタビューでは「経営者も良い時と悪い時がある。私だって自信がない時はありますよ」と言っていました。率直に認めてしまうところもある。ちょっと憎めないところ、愛嬌もあるんですね。ただそれは表の顔であって、もう一つの「裏の顔」があったということでもあります。

 ともかく、メディアは大事にする人でした。スケジュールさえ合えばきちんとインタビューも受けてくれた。雑誌でボコボコに批判する記事を書いたらゴーンさんはカンカンに怒りましたが、ちょっと間を空けると取材を受けてくれましたよ。「I know your face(あなたの顔を覚えている)、今日も悪い記事か」と。メディアにどう描かれているかを常に気にしていました。

1/4ページ

最終更新:4/12(金) 8:42
ITmedia ビジネスオンライン

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事