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道草の楽しさ、忘れてませんか?「不便だからこそいいことがある」を学問にした京大教授の話

4/12(金) 12:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

スマホに質問すれば何でも答えてくれる。電子レンジを使った調理から自動車の車庫入れまで、難しいことは機械に任せておけば安心。そんな時代に、あえて「不便だからこそのいいこと=不便益」の大切さを訴え続ける学者がいる。システムデザイン論が専門の京都大学特定教授・川上浩司さんに、「不便益のススメ」のわけを尋ねた。

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グーグルマップに頼り、道を間違えた記者

取材の待ち合わせは東京都心のJR新橋駅。まずは川上さんの写真撮影のため近くの公園に移動しようと、記者のスマホに入っているグーグルマップを頼りに出発した。

1、2分で着くはずが、なじみの薄い場所だったため歩き出す方角を誤り、数分のロス。川上さんに平謝りした。

思えば、いつのころからか時折こんな失敗をするようになった。

以前は時間に遅れないよう事前に地図をしっかり確認するのが当たり前だったし、初めての場所で大事な約束がある時は現地を下見することもあった。

今はスマホアプリが目的地へ案内してくれるので、そうした準備はほとんどしない。スタート直後はどの方向へ歩いているのか正確に分かりにくいこともあると分かってはいるのだが、それでもつい頼ってしまう。

スマホもケータイも持たない川上さんは、楽しそうにこう話した。

「出張で知らない街に行く時には、最寄り駅と目的地や宿泊先などの位置関係を地図で事前に調べます。そうすると頭の中にその街の『メンタルマップ』ができます。

スマホのナビがあると次に行くべき場所へ直行するのでしょうけど、ぶらぶらと現地を歩いているうちに、自分のきゅう覚を頼りにふらりと入った飲み屋さんがお気に入りの店になった経験もあります。

そうしたことを通じて『この街に行ったぞ』という実感を得られ、ただの出張が旅っぽくなるんです。プチ旅行、ですね」

3回通った道は見えなくなるナビ

そんな川上さんが発案し、自身の研究室で試作してみたのが「かすれるナビ」だ。一度通った道が少しずつかすれていき、3回通ると真っ白になって見えなくなる。

ナビが便利なのは「正確で詳しい位置情報を確実に知らせてくれる」からだが、その便利さの一部をあえて欠けさせた。

このナビと、普通のナビを使って京都の街を散策した人たちに、実際に歩いた道沿いの風景の写真と違う場所の写真を見せ、「この風景を見たことがありますか」と尋ねる実験をした。すると、正解の割合は「かすれる」方を使った人たちの方が有意に高くなった。旅の思い出がよりはっきりと頭の中に残るわけだ。

ふつうのナビを使っていると「いつでも必要な情報を得られるので頭の中に入れる必要はない」という深層心理が働くのだろう、と川上さんはみる。

同じような発想で、回り道が新たな発見につながる「左折オンリー京都ツアー」を企画するなど、「不便益デザイン」を学生らと実際に形にしてみる活動を続けている。

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最終更新:4/12(金) 12:10
BUSINESS INSIDER JAPAN

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