ここから本文です

「令和」はもともとは中国の「帰田賦」「蘭亭集序」が出典

4/12(金) 14:01配信

ニュースソクラ

【中国ウォッチ(12)】「万葉集」の編者も、「帰田賦」を読み、借用

 「新しい元号は、『令和』です。万葉集巻五、梅花の歌32首の序文から引用しました。『初春の令月にして、気淑(よ)く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香を薫(かおら)す』との内容で、梅の開花ともに訪れた春への喜びを歌った部分です」(菅義偉官房長官)

 「万葉集は幅広い階層の人々が詠んだ歌が収められ、我が国の豊かな国民文化と長い伝統を象徴する国書です」(安倍晋三首相)

 4月1日午前11時半過ぎ、菅官房長官が、来月からの元号を発表。安倍首相は、「大化」から数えて248番目にして、初めて中国の古典ではなく日本の国書から取った元号を定めたことに、胸を張った。

 だが、この発表から2時間後には、中国の知人の大学教授から、「異論」のウィーチャットが、私のスマホに入ってきた。曰く、

 「この『令和』の出典が、東漢の偉大な文学者で、天文学者でもあった尚書の張衡(西暦78年~139年)の有名な『帰田賦』から来ていることは明白ではないか。『帰田賦』の2段目の冒頭『仲春令月 時和気晴』がそれだ。中国の中国文学学科の学生たちなら諳んじられるほどの語句だ。

 この語句は、初春を表す代名詞のようになっていて、書聖と呼ばれた王羲之(西暦303年~361年)の有名な『蘭亭集序』も、『帰田賦』を意識した作りになっている。

 『万葉集』の編者も、『帰田賦』を読んでいて、そこから借用したとしか思えない」

 そう指摘されて、少し興醒めしてしまった。安倍首相が、全日本国民が注視する前で誇った「日本の国書から取った」との発言は何だったのか?

 そこで日本古典文学全集の『萬葉集 梅花歌 序』から、この原文をあたってみた。原文は漢文で書かれていて、「初春令月 気淑風和」というのが、「令和」をピックアップした部分だ。

 さらに、『帰田賦』の全文と、『萬葉集 梅花歌 序』の全文を、原文で読み較べてみた。さらに『蘭亭集序』の原文も読んでみた。

 すると、確かに全体が似かよっている。そもそも「令和」を借用しているのだから、間違いないだろう。

 ここからは推測だが、『萬葉集 梅花歌 序』を書いた奈良時代の日本の貴族たちは、『帰田賦』と『蘭亭集序』を読み込んでいた。そして、それらの世界に憧憬の念を抱いていた。そこで中国の文人貴族をまねて、その世界を日本で再現しようとして、初春に大宰府で歌会を開いて、『萬葉集 梅花歌 序』を書いたのではなかろうか。

 すなわち、純粋に初春に歌会を開いて詠んだのではなくて、もともと中国の名作の世界を日本で再現しようとする意図が先にあった。そのために貴族たちが歌会を開いて、その雰囲気に合った歌を、皆で詠み合ったというわけだ。

 だが、中国政府は間違っても、「『令和』の著作権は中国にある!」と騒ぎ立てたりはしない。素知らぬ顔をしている。そんなことをしたら、安倍首相と日本に恥をかかせ、日中関係が悪化してしまうのは自明の理だからだ。

 それでも、もし中国が言いがかりをつけてきたら、日本にも反論の言葉はある。

 「もう著作権はとっくに切れていますよ」 

■右田 早希(ジャーナリスト)
25年以上にわたって中国・朝鮮半島を取材し、中国・韓国の政官財に知己多い。中国・東アジアの政治・経済・外交に精通。著書に『AIIB不参加の代償』(ベスト新書、2015年)

最終更新:4/12(金) 14:01
ニュースソクラ

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事