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連載「作家の流儀―横山秀夫さんに聞く」(4) 逃れられぬ組織の呪縛 現場を封印して描く「現場」

4/13(土) 7:22配信

47NEWS

 横山秀夫さんの作品はどのようにして生みだされるのか。「組織と個人」というテーマを追求した『陰の季節』、ストーリー展開や謎解きが巧みな『第三の時効』、日航ジャンボ機墜落事故を素材に記者の使命を問う『クライマーズ・ハイ』、たった7日間しかなかった昭和64年の誘拐事件を創造した『64(ロクヨン)』…。まねのできない発想は、生みの苦しみを経て、重厚な作品に結実していた。(共同通信=田村文)

▽ゲエゲエ吐いてギブアップ

Q デビュー作『陰の季節』は、警察小説でありながら捜査畑の人が出てこない点が斬新でした。管理部門の人たちがうごめく。「組織と個人」というテーマは横山さんの真骨頂だと感じます。

A 本が出たとき、上毛新聞社を辞めてから7年たっていました。辞めてすぐの頃は組織の呪縛から逃れたという解放感を味わったのですが、でも長続きしなかった。国そのものが大きな組織体で、そこでのしがらみからは逃れられないということが骨身にしみた。組織とは、個を侵食する暴力装置である一方で、個人にスポットライトを当てて引き立たせる舞台装置でもある。組織体から離れたつもりで、実は何からも逃れられていないという状況を考えたとき、自然に出てきたテーマです。

Q 『半落ち』は警察官が、妻を殺したと言って自首してくるところから始まります。動機も経過も語るが、殺害から自首までの2日間については頑なに語ろうとしない。完全に落とせていないから「半落ち」。ベストセラーになりました。

A あれは「短編連作を」という依頼だったんですが、結果的に長編になった。最初は2、3人の語り手を登場させて事件を多角的にみるという構成にしようと思って書き始めたんです。でも書いているうちに、被疑者というのは司法のベルトコンベアーに乗せられると、心を解剖されないまま受刑者まで行き着いてしまうよなと思った。じゃあ最後の刑務所まで追いかけてみよう、と。書きたかったのは主人公の気持ちで、本人は何も語らないけれど、小説としては語ったことになるという形を作ってみたかった。

Q 『第三の時効』は連作短編集ですが、どの短編もあっと驚くどんでん返しがあって、本当に面白い。

A それまで警察小説は書いても、刑事ものを書いていなかったんですよね。自分が書くなら、やっぱり変化球を投げたいと思った。それで最初に思いついたのが『囚人のジレンマ』(『第三の時効』所収)でした。一線の刑事たちからすれば、神様のような存在である1課長が悩みまくる。できの良すぎる班長が3人もいるからです。つまり王道の刑事小説を、管理部門のフレームに入れたらどうなるか、という試みだったんです。

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最終更新:4/13(土) 7:22
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