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命授かり「覚悟ができた」 被災地でたこ焼き店、20代夫婦の決意

4/13(土) 9:31配信

西日本新聞

 熊本県南阿蘇村の南外輪山の麓。村で唯一のたこ焼き店「万福小屋 どんぶらこ」は、今春で開店から2年を迎えた。営むのは熊本地震前年の2015年に移住した20代の夫婦。被災の傷痕が色濃く残る頃に2人は店を開き、結婚し、新しい命を授かった。「ここでずっとやっていく覚悟ができた」。復興へ向かう村に根を張ると決め、きょうも鉄板の前に立つ。

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 熊本市方面へつながる県道28号沿い。阿蘇五岳を真正面に望む場所に店はある。元は野菜の無人販売所だった小さな小屋だ。「ここからの景色が最高なんですよ」。店主の山口雄大さん(29)は山々を見やる。

 雄大さんは神奈川県出身、妻の朋子さん(29)は石川県出身。それぞれ世界を旅した後に留学先のフィリピンで知り合い、帰国後に一緒に暮らすことを決めた。それも田舎で。「自分たちが『ここだ』と思える土地を見つけよう」と日本各地を回る中で、南阿蘇の風景にほれ込んだ。

 旅館やホテルに住み込みで働きながら家を探し、古い住宅を借りて自分たちで修復した。これから将来を描こう。そんなときに、熊本地震に襲われた。

たこ焼きを選んだのは村民の一言がきっかけ

 16年4月16日の本震で借家は半壊し、友人を頼って福岡県糸島市に避難した。村の主要道はことごとく寸断。拠点を糸島に移すことも考えたが、近所の高齢女性の安否が気になり、10日ほどで村に戻った。

 みなし仮設住宅として別の空き家を借りた。しかし、仕事が見つからない。「自分たちで何か店を出そう」。考えた末にたこ焼きを選んだのは「村にたこ焼き屋があったらよかな」という村民の一言だった。

 近くの県道トンネルが復旧した約1カ月後の17年2月に店をオープン。「どんぶらこ」という店名は、ふらふらと村に流れ着いた自分たちをイメージした。

 味にこだわり、県内産の菜種油で焼く。看板メニューはたこ焼きとタコスを合わせた「多幸(たこ)巻き」。幸多かれの願いを込めた。世界を歩き回った2人らしい味が、客を呼び寄せた。

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最終更新:4/13(土) 9:31
西日本新聞

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