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熊本地震時の「リアルな行動」を書籍に 避難所運営の大学生がライン履歴をまとめ 教訓つなぐ

4/14(日) 11:22配信

熊本日日新聞

 熊本県立大生らが、熊本地震時に避難所運営のため交信し合った無料通信アプリ「LINE」(ライン)の履歴をまとめた「熊本地震4・16 あの日僕たちは LINEでつないだ避難所運営の記録」(熊日出版)を出版した。A5判、112ページで、本震発生から3日間の生々しいやり取りを紹介。「経験を共有し今後に役立ててほしい」と呼び掛けている。

 「おにぎり足りません」「いちごが大量に余りました」-。本震が起きた2016年4月16日の履歴には、午後6時からわずか10分の間に、16人がやり取りした計40件のメッセージが残る。

 同大は本震2日前の前震を受けて避難所を開設。近隣住民ら最大約1400人を受け入れた。避難所運営に学生たちも関わり、連絡用の複数のライングループが自然発生的に立ち上がったという。

 これをリーダー格の3、4年生が主導して本震後の16日深夜までに登録メンバー約200人からなる「ボランティア本部」「避難場所」「リーダー」の3本に集約。伝達経路を明確にし、「スタンプは使わない」「不要な返信は控える」などのルールも決めた。

 近くの熊本赤十字病院の患者や赤ちゃん連れの親子など対応が難しい避難者もいたが、ラインによる迅速な情報共有で、何とか3日間を乗り切った。

 書籍化の構想は、地震発生から1年後の17年4月から始まった。当時の同大理事長で県の「くまもと復旧・復興有識者会議」座長の五百旗頭[いおきべ]真氏が、ラインの履歴について「防災を考える上で貴重な資料だ」と注目したのがきっかけだった。

 約120人が避難した武道場で責任者を務めた当時2年生の荒井祥さん(22)=同市中央区=をリーダーに、総合管理学部の澤田道夫教授(49)のゼミ生15人が中心となって編集作業に取り組んだ。

 本震後の16日夕から18日正午ごろまでの履歴は約2千件。このうち、「了解」などを意味する一部の返信は削り、約750件分を収録。当時の息遣いや臨場感を伝えようと、ほぼ原文のまま残した。

 澤田教授は「学生が普段から使い習熟したツールだからこそ非常時でもうまく転用できた」と指摘。「現場のリアルなやり取りを記録した本は日本で初めてと思われ、貴重だ」と評価する。

 荒井さんは記憶の風化や「思い出」として語られる現状に危機感を持つ。「『きつかった』という漠然とした記憶ではなく、具体的な行動記録を残して教訓を伝えることが大事。ぜひ、手に取って防災意識を高めてほしい」と力を込める。(社会部・前田晃志)

(2019年4月14日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

最終更新:4/14(日) 15:09
熊本日日新聞

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