ここから本文です

競歩20キロ世界最速男・鈴木雄介、50キロで日本新…「永久追放」温情処分に「恩返し」

4/15(月) 6:04配信

スポーツ報知

◆競歩 全日本輪島大会(14日、石川県輪島市日本陸連公認コース)

 19年ドーハ世界陸上代表選考を兼ねた男子50キロで、20キロ世界記録保持者の鈴木雄介(31)=富士通=が3時間39分7秒の日本新記録で優勝した。野田明宏(自衛隊)の従来記録を40秒短縮。17年10月に強化費不正申請問題で受けた半年間の資格停止処分を乗り越え、50キロでも力を示した。川野将虎(20)=東洋大=は日本学生新記録となる3時間39分24秒で2位。16年リオ五輪銅メダルの荒井広宙(30)=富士通=は4位で、世陸代表が絶望的となった。

 新境地だった。20キロ世界最速の鈴木が、初の本格参戦となった50キロで日本最速を証明した。「勝てて誇らしいし、うれしいけど、葛藤もある。新参者が勝って、変に申し訳ない」。ただリオ銅の荒井らを倒して樹立した3時間39分7秒は、五輪表彰台を争う力の証しだ。「金メダルを取りたい。貪欲にその気持ち。何が何でも金メダルを取りたい」とクールな表情に熱を込めた。

 序盤からリオ20キロ7位の松永大介(24)=富士通=が日本新記録ペースで一人旅。鈴木は「いかに我慢するか」と集団で脚をためた。35キロで松永は左足裏のマメが破れ棄権。勝機は来た。「リミッターを外して歩いた」。37―38キロは最速ラップの1キロ4分4秒。荒井、丸尾、小林ら有力勢をスピードでちぎった。所属の今村文男コーチも「記録にはびっくりしていない」と認める自力で、堂々勝ち切った。

 先月の全日本能美大会で20キロの世陸切符を逃した後、ジョギングをしながら東京五輪に思いをはせた。「(山西、池田ら)若手とバクチ勝負をするか、プライドを捨てても(50キロで)金メダルを目指すか。(選手層が比較的薄い)50キロは代表権も取りやすいし、選択肢としてあり」。元々、年1~2回は40キロを歩くなど、50キロを見据えた練習もこなしていた。20キロのスピードを50キロに生かす“二刀流”の決断は正しかった。

 そけい部が痛むグロインペイン症候群に苦しんだ2年間。大観衆の中を快調に歩く自分の姿を何度も夢で見た。遠ざかり、痛感した。「競歩が好きだし、アスリートであることが幸せ」。17年10月には強化費不正申請問題により、半年間資格停止。東京五輪まで間のある18年3月までの処分期間に、陸連の温情も感じた。「本来は永久追放にしてもおかしくないが、復帰の期待を込めた、と言われた。恩返しのためにも、復帰しないといけない」。競技ができる幸せを体現した今回の日本新は、4年前の世界新と違う価値がある。

 内定条件を満たしたドーハ世陸は、東京五輪への影響を考慮して辞退も示唆。20キロか50キロのどちらかで狙う五輪制覇だけに照準を定め、本大会へ戦略を練る。「20でも50でもいい。目標は東京の金メダル」。期待し、支えてくれる周囲のため、決して妥協できない頂点がある。(細野 友司)

 ◆競歩の東京五輪への道 20キロ、50キロの国別の代表枠は最大3。19年ドーハ世界陸上で表彰台に立った日本勢最上位の選手は、即時内定を得る。それ以外の選考は未定で、50キロは今年10月の全日本高畠大会や来春の全日本輪島大会が選考レースとなる見込み。20キロも世陸での内定条件は50キロと同様で、選考レースは20年2月の日本選手権や3月の全日本能美大会となる見込み。

 ◆鈴木 雄介(すずき・ゆうすけ)1988年1月2日、石川・能美市生まれ。31歳。辰口中1年で競歩を始め、小松高時代に全国高校総体制覇。順大では06年に世界ジュニアとアジアジュニアで1万メートル競歩銅メダル。11年大邱世界陸上20キロ競歩で8位入賞。12年ロンドン五輪36位。14年仁川アジア大会銀メダル。15年3月の全日本能美大会でマークした1時間16分36秒(20キロ)は、現在男女通じ日本勢唯一の世界記録。169センチ、57キロ。

最終更新:4/15(月) 7:22
スポーツ報知

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事