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吹き出す粒子、険しい地形 - NASA探査機が観た小惑星「ベンヌ」の姿

4/15(月) 11:43配信

マイナビニュース

米国航空宇宙局(NASA)は2019年3月20日、小惑星探査機「オサイリス・レックス(オシリス・レックス)」の観測により、小惑星「ベンヌ」の表面から小石や岩などの粒子が噴出していることを発見したと発表した。

【写真】サンプルを採取するオサイリス・レックスの想像図 (C) NASA

また、地形が予想以上に険しいことも判明。探査機の着陸や、石や砂などのサンプルを採取する計画は、予想外の困難に直面した。

ベンヌの地表から吹き出す粒子

オサイリス・レックス(OSIRIS-REx)は、NASAの小惑星探査機で、小惑星「ベンヌ(Bennu)」を訪れ、周囲を回りながら探査するとともに、地表に着陸し、石や砂などのサンプルを回収して地球に持ち帰る「サンプル・リターン」を行うことを目指している。これにより、太陽系の起源や、地球の水と有機分子の起源、そして小惑星の資源や、小惑星の地球衝突に対する備えなどについて理解を深めることができると考えられている。

探査機は2016年に打ち上げられたのち、2018年12月3日にベンヌに到着。同31日にはベンヌの上空約1.61kmを回る周回軌道に入った。

ベンヌに到着した直後の2019年1月6日、探査機はベンヌの地表から粒子(小石や岩など)が吹き出していることを発見。これまでの観測で、確認できた放出は11回で、そのうち3回はかなりの数の粒子が放出されたことがわかったという。

吹き出した粒子の大きさは、小さいものは1cm、大きいものでは数十cm。吹き出たあとの粒子は、ベンヌの重力に引かれて地表に落下するものもあれば、ベンヌの周回軌道に入るもの、また重力圏を抜けて惑星間空間に飛び去っていくものもあったとしている。

研究チームは粒子の分析を進めるとともに、なぜ吹き出しているのかという原因の分析も続けている。なお、探査機に衝突するなどの危険性はないという。

予想外の険しい地形、着陸計画に影響か

オサイリス・レックスはまた、ベンヌの地表に大きな岩がいくつもあり、険しい地形が広がっていることを発見した。

研究チームは従来、地球からの観測データから、ベンヌはおおむねなめらかな地表をしており、大きな岩はあっても数は少ないと予想していたが、それに反する結果となった。

この違いは、従来のコンピューター・モデルでは適切な予測ができなかったために生じたとされ、さっそくベンヌからのデータをもとに、モデルに修正を加えたという。

NASA惑星科学部門のLori Glaze部長代理は「オサイリス・レックスによるベンヌの探査の最初の3か月は、驚きと、素早い思考、そして柔軟性が求められる、発見ばかりの日々でした」と語る。

「この険しい地形は私たちにとってまったくの予想外でした。本当に驚くことばかりですが、この刺激的な旅は、まだ始まったばかりです」

この問題は、オサイリス・レックスの着陸計画に大きな影響を与えることになるかもしれない。もともと開発チームは、それほど険しい地形ではないだろうという予測に基づき、「TAG(Touch-and-Go)」と呼ばれる計画を立て、半径25mのエリア内に着陸することを念頭に探査機を設計、開発した。しかし、現時点でそれほどの広さの場所は見つかっていない。

運用チームでは、なるべく広けた場所を探すとともに、当初の想定よりも狭い場所に正確に着陸するため、「ブルズアイTAG(Bullseye Touch-and-Go」と呼ばれる新しい着陸計画を開発しているという。

NASAゴダード宇宙飛行センターで、オサイリス・レックスのプロジェクト・マネジャーを務めるRich Burns氏は「ベンヌ近傍での運用を通じて、私たちの探査機と運用チームは、設計時の要求を上回る性能を発揮することができるようになりました。ベンヌは私たちに、この険しい地形に挑んでこいと挑戦状を叩きつけてきました。そしてオサイリス・レックスは、その挑戦を受けることができると確信しています」と語る。

オサイリス・レックスは今後もしばらくは、ベンヌの周囲を回りながら探査を続け、今年12月から着陸に向けたリハーサルを開始。そして2020年の7月ごろに着陸、サンプル回収に挑む。

その後、2021年3月ごろにベンヌを離脱。2023年9月に、サンプルが入ったカプセルを地球に投下し、ミッションを終える予定となっている。

さらに観測成果も続々

オサイリス・レックスはまた、ベンヌで「ヤルコフスキー・オキーフ・ラジエフスキー・パダック効果」、もしくは略して「ヨープ(YORP)効果」と呼ばれる現象の直接観測にも成功した。

YORP効果とは、ベンヌのような不均一な形をした小惑星などにおいて、太陽から受ける光の圧力と、天体表面から出る熱放射のバランスが、場所によって異なることから、回転力が生まれ、自転速度が変化する現象のこと。オサイリス・レックスの観測によると、ベンヌは100年ごとに約1秒、自転速度が遅くなっているという。

さらに、探査機に搭載されているカラー・イメージャー「MapCam」と、熱放射スペクトロメーターの観測データから、地表に磁鉄鉱(マグネタイト)があることもわかったとしている。


出典

・NASA Mission Reveals Asteroid Has Big Surprises | NASA

・Bennu Images Reveal Unexpected Discoveries | NASA

・OSIRIS Rex Fact Sheet

・Asteroid Operations - OSIRIS-REx Mission


著者プロフィール

鳥嶋真也(とりしま・しんや)

宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュースや論考の執筆、新聞やテレビ、ラジオでの解説などを行なっている。


著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)など。

鳥嶋真也

最終更新:4/22(月) 13:06
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