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T・ウッズが「生かした転機」と「生み出したチャンス」【舩越園子コラム】

4/15(月) 12:08配信

ゴルフ情報ALBA.Net

首位に2打差の2位タイで「マスターズ」最終日を迎えようとしていたとき、タイガー・ウッズ(米国)は「すべてはプラン通りだ」と噛み締めるように頷いていた。一つひとつステップを踏み、順路通り、計画通りに進んできていることに、ウッズは満足感を示し、それが自信になっていると言った。

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「オーガスタで優勝争いをするのは久しぶりだ。でも、去年のメジャー2試合で優勝争いに絡んだ経験が、明日の最終日にきっと役に立つはずだ」

ウッズは昨年、「全英オープン」でフランチェスコ・モリナリ(イタリア)と勝利を競い合い、敗れた。続く「全米プロ」でも勝利ににじり寄ったが、ブルックス・ケプカ(米国)に敗れた。そんな悔しい経験も、踏むべき順路であり、プラン通りだと語ったウッズが、いざ今年のマスターズ最終日に挑み、そのモリナリやケプカを抑えて勝利したことは、ウッズが言う通り、すべてが順路通り、プラン通りに進んだことを示しているのかもしれない。

だが、最終日の展開は、ウッズのプラン外、想定外の動きをしたのだと思う。

「12番で流れが変わった」

アーメンコーナーの12番(パー3)でモリナリが池に落とし、ダブルボギーを喫したことは、ウッズのプランの中にあらかじめ描かれていたはずのない出来事だったはずだ。

あの12番でウッズは首位に並んだ。ウッズが振り返った通り、12番が転機になったことは間違いない。モリナリが池に落とし、ダブルボギーを叩いたことは誰にとっても驚きの出来事だった。だが、それはウッズにとって、モリナリから「もらった転機」なのかと言えば、そうではない。

本当に流れを変えたのは、あのホールでウッズがしっかりパーを拾い、千載一遇のチャンスを生かしたこと。そう、12番はウッズにとって「もらった転機」ではなく「生かした転機」だ。だからこそ、13番、15番、16番のバーディへとつながっていったのだろう。

一時は首位に5人が並ぶ混戦状態になったが、そこから抜け出したウッズに誰も追撃をかけることはできなかった。最後まで追いつくチャンスが残されていたのはケプカだった。だが、上がり2ホールは絶好のバーディチャンスを続けざまに逃がし、そうやって他選手たちの動向がウッズの終盤を徐々に「楽にする」流れになっていった。

それも一見、ウッズにとって「もらったチャンス」のようだが、そうではない。

2008年以来、ウッズはメジャー優勝から離れ、不倫騒動で冷たい視線にさらされ、スイング改造、不調、成績低迷、4度に渡る腰の手術、戦線離脱、そしてあの逮捕劇と、さまざまな苦難に直面しては乗り越えてきた。

昨年1月に戦線復帰し、7月と8月のメジャー2大会で優勝争いの緊張感を思い出し、9月の「ツアー選手権」で復活優勝。そうやってステップを踏みながら歩んできた。

そんなウッズの長い長い道程をよく知っている他選手たちは、彼の恐るべき忍耐強さと人間としての挽回力に圧倒されたからこそ、目には見えない何かを肌で感じ、心を揺さぶられ、その結果、彼らのゴルフが最後には揺れてしまった。だから今年のマスターズの大詰めで、誰もウッズに太刀打ちできなくなったのだ。

そんな最終日終盤の流れは、崩れた選手、伸ばし切れなかった選手たちからウッズが単に「もらったチャンス」ではなく、ウッズが長い歳月をかけて、あらためて身に付けた粘りのオーラで「生み出したチャンス」だったのだ。そうやってウッズは、マスターズ5勝目、メジャー15勝目を掴み取った。

「これまでで一番大変な優勝だった」

その優勝は、世界中の人々から一番祝福された優勝だったと私は思う。

文・舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

(撮影:GettyImages)<ゴルフ情報ALBA.Net>

最終更新:4/15(月) 12:08
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