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戦略的思考で、アートとビジネスの接続に挑むーーRELISH 井澤 卓

4/15(月) 13:12配信

SENSORS

「どんなにセンスがあるアーティストでも、作品制作だけで生活できている人はほんの一握り。僕は自分の経験を活かして、そこを補完できると思ったんです。彼らが本当にやりたいことだけで食べていけるようにするのが、自分の役割だと考えています」

Paint & Supplyでの制作風景

「アートとビジネスの接続」に挑む、若き起業家がいる。Yahoo! JAPAN、Googleでの営業職を経て独立し、昨年壁画制作チーム『RELISH』を立ち上げた井澤 卓氏だ。自ら制作を行うアーティストでもありながら、鋭いビジネス視点を持ち、RELISHを事業として成立させている。

なぜ井澤氏は、その価値が見えづらいアートを武器に、継続的な利益を生み出すことができているのだろうか。井澤氏へのインタビューから、その戦略と思考を探っていく。

「大事にされている」感覚を喚起。ポジティブなエネルギーを放つ、レタリング壁画の可能性

壁画とひとくちに言っても、ストリートのエネルギーを孕むグラフィティアートや、バンクシーのように社会風刺的アートなど、その種類はさまざまだ。RELISHが手がけるのは、文字を軸にした「レタリング壁画」。「文字のデザイン」における手法の1つであるカリグラフィーを用い、巨大な文字を描いている。井澤氏は、文字アートの最大の魅力は「嫌われにくいこと」だと言う。

井澤:文字って、みんなが日常的に触れているものだから、どんな人にも受け入れられやすいんです。抽象的なアートの場合、好みが分かれますが、文字は嫌われにくい。またそれだけでなく、みんなが「文字を書く」経験があるからこそ、精密なカリグラフィーを見た時に「すごい」と感じやすいと思っています。


さらに「手描き」のアートが空間にあると、そこにいる人たちは安心感を得られるのだという。

井澤:今の時代、デジタルツールでなんでも作れちゃうじゃないですか。たとえば床に貼る木目調のシートもそう。でも、そういうものから「ぬくもり」を感じることはできません。一方で、本物の木材を敷き詰めた床を見ると、なんだかほっこりしますよね。手間暇かけて、人の手が介されたものが身近にあると、そこにいる人たちは無意識に「大事にされている」と感じると思うんです。


レタリング壁画は、その制作に関わる人にもプラスのエネルギーをもたらすのだと、井澤氏は言う。未経験者でも取り組みやすいレタリング壁画の性質を活かし、RELISHでは、ユニークかつフレキシブルな組織体制を敷いている。コアメンバーである井澤氏とデザイナーの小泉遼氏以外は、案件ごとにメンバーを募っているのだ。

井澤:レタリング壁画はディレクションさえしっかり行えば、意外と未経験の人でも描けるんです。だから案件ごとに、友人知人から描きたい人を募っていて。「ペンキで描く」って子どもの遊びのようですごい楽しいんですよ。だから、関わってくれるメンバーの顔はすごくイキイキしていて...。RELISHオリジナルのアパレルも作っていて、制作時にはみんなでそれを着ています。スケーターのコミュニティのように、好きなことを軸にみんなで集うチームを作っていきたいんですよね。


自分の手によって何かを創造する行為は、自信を与えてくれる。井澤氏はRELISH設立前の会社員時代、自らそれを実感したことで、次世代の生き方を提案したくなったと言う。

井澤:会社でいくら大きい仕事をしても、「自分の仕事」とは思えなかったんです。だから新卒2年目くらいから、レザー小物を作ってみたり、Webページの制作をしてみたりしていて...。とにかく個人活動としてできる何かを探していました。でも「何かやりたい」と思っていても、その一歩を踏み出せない人もいる。RELISHに関わることが、そういう人たちにとってのきっかけになればいいなと思っていて。もちろん、関わってくれたメンバーにはできる限り報酬を支払うようにしているので、楽しみながらできる「新しい副業」としてRELISHを利用してほしいと考えています。

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最終更新:4/15(月) 13:12
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