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Deep Techスタートアップのエコシステム創成へ J-TECH STARTUP認定の7社が表彰

4/16(火) 6:00配信

アスキー

2月8日に、技術系ベンチャー企業支援組織である一般社団法人TXアントレプレナーパートナーズ(TEP)が主催するイベント「第3回 J-TECH STARTUP SUMMIT」を開催。J-TECH STARTUP 2018に認定された企業7社が表彰された。

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 2月8日に、技術系ベンチャー企業支援組織である一般社団法人TXアントレプレナーパートナーズ(TEP)が主催するイベント「第3回 J-TECH STARTUP SUMMIT」を開催。J-TECH STARTUP 2018に認定された企業7社が表彰された。今回認定されたのは、エンジェル出資やクラウドファンディングからの資金調達を受けている企業や起業予定者の5社(シード期)と、ベンチャーキャピタルなどから出資を受けて、資本金1億円未満でかつ従業員数50名以下の未公開企業の2社(アーリー期)。
 
【シード枠】
●Assist Motion株式会社(エレクトロニクス・ロボット)
●株式会社Aster(マテリアル)
●株式会社ASTINA(エレクトロニクス・ロボット)
●株式会社セルファイバ(医療・ヘルスケア)
●株式会社メディアラボRFP( 医療・ヘルスケア)
 
【アーリー枠】
●株式会社Atomis(ナノテクノロジー・マテリアル)
●株式会社VRC(IT・ソフトウェア・ネットワーク・AI)
 
※50音順
 
 J-TECH STARTUPを起ち上げたTEPの代表理事である國土晋吾氏は、冒頭の挨拶で「インターネットのサービス系やアプリ系の会社は、事業を一度イグジットして新しい事業をする人や、エンジェル側にまわって新しいシーズを育てるような1つの循環ができつつあります。また、手本となる会社がでてきて、それに続けという形になってきています。しかし、Deep Techと呼ばれる分野、たとえばロボットや医療系、材料系、エネルギー系などといったジャンルは、まだそういった循環系ができていません。この分野でもうまく循環を作りたく、まずは創業まもない企業に対して資金を調達するお手伝いをしようと、このような認定制度を作りました」と語り、こうした企業への協力を訴えた。
 
 認定式の前に、まずは選ばれた7社によるプレゼンが行なわれた。プレゼンした順に紹介していこう。
 
株式会社ASTINA(エレクトロニクス・ロボット)
 ASTINAは「ふだん使いのロボティクスを」というコンセプトのもと、ロボット掃除機に代表される実務系ロボットのように明確なユーザーメリットを提示するような製品なら十分な出荷台数が見込めると判断。代表取締役の儀間匠氏は、「家電業家に革新をもたらす世界初の家庭向けロボットメーカーを作ることを目指している」と語る。
 
 まず、開発したのが洗濯物をかごに入れるだけで、全自動で畳んで衣類によって分別して収納するタンス「INDONE」だ。独自の機構とAIによる画像認識を組み合わせて実現するもので、日常よく利用される下着やTシャツといった衣類に対応。夫婦が協力して家事ができる環境を目指し、30万円から50万円程度の価格設定で販売を予定している。
 
 競合としてはセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズの「laundroid」や家事代行業などでだが、価格が安いというのが強みである。2020年の販売を目指して出資を募っている。
 
株式会社メディアラボRFP(医療・ヘルスケア)
 メディアラボRFPは、2018年8月に創立したばかりの企業で、アルツハイマー病(AD)をはじめとする認知症の発症を予防する薬を開発している。認知症の薬は大手製薬会社が取り組んできているがことごとく失敗している。
 
 これまでは、認知症を発症してからAβワクチンやAβ抗体などを投与してきたが、すでに死んでしまった神経細胞を回復できず、失敗を繰り返してきた。むしろAβ病理やtau病理が脳にたまり始めた未発症の方に薬を投与することで、症状を予防するという流れになってきた。また、Aβ病理だけでなくtau病理も取り除く必要があること、そして、脳へ直接届く投与を行なうことで効果を上げられることがわかってきた。
 
 メディアラボRFPでは、すでに世の中に出回っている薬でAβやtauを抑制するものを見つけ、投薬方法として点鼻薬にすることで、脳内へ直接到達するようにした。現在ほかの企業が開発しているBASE阻害薬や抗Aβ抗体に比べても、メディアラボRFPが開発したML1808は安全性も利便性も高く、価格も安くできるという優位性がある。
 
 ただ、販売までの道のりは長い。2020年までに非臨床試験を終了し治験届を提出、その後試験を続け2031年に承認申請し2032年にようやく販売できる。承認申請するまでにかなりの資金が必要なため、投資してくれる企業を募集している。
 
株式会社VRC(IT・ソフトウェア・ネットワーク・AI )
 2003年に来日し翌年、早稲田大学大学院に入学。博士号を所得した謝英弟氏は、2016年にVRCを設立。アパレルなどに応用できる3D撮像システムの開発・販売・運用をしている。全自動3D撮影ソリューションを開発した同社は、リアリティーを追求しつつローコストでかつハイクオリティなシステムを目指した。
 
 リアルな3Dデータを追求することで、自由度は高く、寸法をそのまま反映できるため、VRやARといったエンターテインメントからファッション、ヘルスケアなどで活用できる。特に、EC市場では衣類関係の規模が大きく、成長率も高い。ただ、試着が出来ないので、フィット感がわからず、返品や交換が多くその分コストがかかっているのが現状だ。
 
 そこで、人物データのスキャニングをすることで、衣装データと合わせたとき、サイズの合わない部分が確認可能となり、ジャストフィットな衣装を購入可能になる。3Dスキャンは各社さまざまなシステムが開発されているが、どれも処理時間がかかるが、VRCの開発したシステムは、処理時間が約20秒と大幅に短縮。全自動で撮影から処理までできるため、ハイクオリティなデータを手軽に取得できる。現在は法人顧客30社と取引を行なっていて、今後もさらに売り込みを掛けている。
 
株式会社セルファイバ(医療・ヘルスケア)
 セルファイバは、細胞が従来の医薬品のように簡単に製造したり、流通することができないところに注目。それを克服するための技術を開発した。
 
 現在は、構造化不要の細胞を生産するには、人手でしか行なえず、そのため少量しか生産できない。さらに保管寿命も短い上、面倒な輸送手段も必要だ。ここを解決しないと、今後の再生医療において大きなネックになってくる。市場規模は今後右肩上がりで急速に伸びると予想されているものの、何らかのイノベーションがあることが前提でとなっている。
 
 セルファイバは、細胞の扱いに草を克服するための技術として「細胞ファイバ」を開発。チューブ状ゲルに入ったヒモ状細胞塊を開発。細胞を保護し一定品質を維持できるのが特徴だ。特に、規格化構造になっているため、三次元化組織の大規模製造に有用だと考えられ、実際研究室では一定の成果を上げている。
 
 これにより、従来の製造にかかった生産性の100倍効率よく、自動的に培養が可能になるとしている。現在は、実際に達成されるかの研究段階で、大手細胞販売企業や化学メーカーなどと提携して開発している。
 
 他社も同様の課題を解決する技術を研究開発されているが、あらゆる面で優れており、今後、ファイバ製造装置や消耗品の販売、ライセンスを供与して細胞製造受諾企業を増やし、安定的なビジネスモデルの構築を目指している。
 
株式会社Atomis(ナノテクノロジー・マテリアル)
 ガスを効率的に貯蔵したり分離したりする技術が評価され選出されたAtomisは、多孔性配位高分子の技術開発を行なっている。活性炭やゼオライトに代わる素材としてナノ構造の規則性をもった多孔性材料は、金属イオンや有機配位子を3次元設計で自由に組み立てられる。現在10万種あり年間6000本ほど論文が出ている化学業界では一大テーマになっている分野だ。
 
 この多孔性配位高分子は京都大学の北川進特別教授が発見したもので、これをもとに世界各国のベンチャー企業が研究開発を行なっている。そのなかで唯一日本のベンチャーがAtomisだ。すでに、製品化までこぎつけている企業もあり、研究段階からビジネスフェーズへ移行している段階である。
 
 Atomisではマテリアル分野だけでなく、次世代免疫抑制剤のライフサイエンス分野と次世代ガスデリバリーのエネルギー分野の研究開発を行なっている。マテリアル分野は、独自の合成プロセスにより、製造コストを下げることで企業にも利用してもらえるようになり、短期的な資金調達に役立っている。
 
 ライフサイエンス分野では、ガス成分を生体適合性MOFに閉じ込めて、生体内で分解・放出し、免疫制御を行なう医薬品の研究を行なっている。MOFは様々な形状にできるので、それとガスを組み合わせて新規創薬プラットフォームを構築している。
 
 また、エネルギー分野では、100年間変わっていない47リットルのガスボンベを、MOFを使うことで、同量のガスを保持しながら、250mm立方程度のサイズで大幅に軽量化したものを開発している。水素ガスの供給に使うことで、一般家庭でも燃料電池として手軽に使えるようになる。
 
Assist Motion株式会社(エレクトロニクス・ロボット)
 2017年に信州大学発のベンチャーとして起業したAssist Motionは、高齢者をはじめとした身体動作の不自由な人へのウェアラブルロボットを開発・製造を行っている。従来、人間の動きをサポートするウェアラブルは大掛かりになりがちだった。Assist Motionでは高齢者でも衣服感覚で装着できるウェアラブルロボットの開発を目指した。
 
 協調を実現するシステム設計技術として特許を11件取得。また、モーターに代わるゲルを使ったソフトアクチュエータ技術も特許21件取得しており、ソフトアクチュエータ駆動のアシストスーツを開発している。
 
 登壇した橋本稔氏も装着していたのが、モーターを使った非外骨格型構造のウェアラブルロボットで、動きを検知して同調してアシストしてくれる。重量は5キロほどで、あまり力を使わなくても歩けるのが特徴だ。他社の同様のロボットに比べて、3分の1以下の重量で済んでいる。
 
 また、ゲルに電圧を印加することで変形することで、筋肉のような伸縮かる技術も開発。これを使えば、さらにソフトで軽量、静音なアクチュエータの製造が可能になる。これらの技術を使って、介護施設やアシストスーツ市場に参入していくことを目指している。資金調達はもちろん、製品のユーザーや製造メーカー、代理店を求めている。
 
株式会社Aster(マテリアル)
 Asterは、地震から命を守ることを目標に、高強度樹脂の開発・製造を行なっている。れんが造りのような組積造の建物は、ピラミッドをはじめ歴史が古く、いまだに世界で利用されている。組積造は地震に弱いため、倒壊する危険が高く、それによって命を落としかねない。
 
 これまで、組積造の建物を揺れによる構造崩壊のシミュレーションをしたとき、なかなか精密な計算ができず設計に生かされなかった。負荷のかかる部分を補強することで、地震に強い構造にできるものの、コストの問題や特別な職人も必要な部分もあった。
 
 そこで、簡単にかつ低価格で補強するコーティング剤を開発。新築やリフォームにも対応でき、塗るだけで強固になるため、職人も不要。これにより、吹付けコンクリートや一般的な高強度樹脂に比べても耐震性は高くコストも安くできる。
 
 発展途上国にも導入しやすく潜在規模は40兆円に上るとしている。
 
特許庁による技術系スタートアップのための知財戦略
 特許庁 総務部企画調査課 企画班長(スタートアップ支援チーム)の菊地陽一氏が登壇し、短時間ながら「技術系スタートアップのための知財戦略」と題した知的財産(知財)の必要性と特許庁の取り組みを紹介した。
 
 スタートアップ企業は信用も設備もマーケットも何もない状態から始めている。ただ破壊的な技術やアイデアを持っているはずで、こういうものは知的財産として守られるべきものであり、企業価値を決める大きな部分である。
 
 日本はアメリカに比べて知的財産に対する意識がまだまだ低く、特にIT関係の特許取得件数の低さが目立つ。一方、今回受賞した企業の多くは知的財産に対する意識は高いようなのでこれには該当しないかもしれないが。
 
 「自分のもの」と証明できるから実現することは、独占、連携、信用である。独占とは、自社の技術を他の人に使われないようにすることで、事業を差別化し、模倣されたときに戦うことを、連携とは、知財を大企業等との事業連携のためのツールとして用いることを、信用とは、資金調達やM&Aの評価、ブランドや技術力の裏付けとして利用することをいう。これらを踏まえると、知財はスタートアップにとって必須なツールであるといえる。
 
 とはいえ、すべてに対して特許を取るべきではなく、知財戦略が必要だ。特許取得にはお金もかかるし、中身が公開されてしまうため、無駄に情報を外へ出してしまうことにもなりかねない。何を知財化するかは計画的に考える必要がある。
 
 たとえば、参入障壁として多数の特許をとったり、他社から知財を侵害された場合にその侵害を暴けるものは徹底的に権利化し、暴けないものは秘匿化するといった使い分けをしたり、あるいはパテントマップを作って、ライバル企業をウォッチするために使っていたりする。
 
 ただ、スタートアップに通じた知財専門家が少なくなかなか適切な知財専門家に出会えないケースも多い。このため、知財は難しく何をしていいかわからないという声も多く聞く。まず、最低限考えるべきは、商品名を決めるときに他人の権利を調べること。これを行なっていないと、ローンチ語に訴状や警告を受けて、商品名の見直しやプロダクト再開発、損害賠償に発展する可能性が大きい。
 
 また、コア技術を守るためにどうするべきかを考えること。出願する際の書き方によって、情報が漏れてしまうためテクニックが必要。権利をとるなら公開されてもいいのか、どの国の権利を取得するのか、権利をどう使うのかをよく考える必要がある。
 
 特許庁ではこうした悩みをお持ちのベンチャー企業を支援するため、ベンチャー支援チームを作り、短期間で審査したり、料金の減免、知財アクセラレーション・プログラムIPASを用意するなどの活動を行なっている。特許庁のサイトでも情報を公開しているので、参考にしてほしい。
 
スタートアップの知財コミュニティポータルサイト“IP BASE”:https://ipbase.go.jp/
 
 
文● 飯島範久 編集●ガチ鈴木/ASCII STARTUP

最終更新:4/17(水) 15:51
アスキー

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