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町村議選 相次ぐ無投票当選 議員のなり手不足、より深刻に

4/16(火) 21:02配信

毎日新聞

 16日に告示された統一地方選の町村議選は列島各地で無投票当選が相次ぎ、より深刻化する議員のなり手不足の実態を裏付けた。投票機会を失った有権者だけでなく、当選した候補者たちからもため息が漏れた。

 五島列島北部の島々からなる長崎県小値賀(おぢか)町。定数8の町議選は立候補締め切り間際に8人目が駆け込み、定数割れは免れたものの無投票に終わった。記録が残る1963年以来初めてだ。

 午後4時過ぎ、町役場にサンダル履きの元職、黒崎政美氏(76)が現れた。告示当日、「自分が選挙にする」と腹を決めたが、夕方になっても欠員1のまま。最後に届け出て、無投票当選になった。「そもそも議員は8人でも足りん。欠員になれば議会は機能しなくなる」

 農漁業が盛んな町は戦後は人口1万人超だったが、人口減に伴い18あった定数も削減。近年はぎりぎりで誰かが滑り込んで無投票を阻止してきた。

 町議会は改革に取り組んだ。2015年3月、月額18万円の議員報酬を50歳以下に限り30万円に増額する条例案を可決。全国の注目を集めたが、町内に「出れば金目当てと邪推される」と波紋も広がった。翌月の町議選に若手は立たず、条例は18年に廃止された。

 15年には町議会の一般質問後に傍聴席の意見を聞く「模擬公聴会」も導入。「聞きたい質問が出ずイライラする」との町民の声がきっかけだが、若手や女性の立候補につなげる狙いもあった。

 唯一の新人、近藤隆二郎氏(53)は公聴会で質問を重ね、「もっと深く議論したい」と立候補した。関西の大学教授を辞め、祖父母の故郷へ移住。親戚の手は借りなかった。「根強い組織がなくても選挙に出られると若い世代に見せたい」

 改革の先頭に立ってきた立石隆教議長(68)は健康上の理由などで引退する。30~40代の住民らに出馬を促し続けたが、壁は厚かった。「民主主義の根幹である議会の重要性が伝わらなかった。こういう最後を迎えるとは、皮肉なもんです」

 日本の地理的中心として「ど真ん中町」を自称する人口約2万人の長野県辰野町。定数14に対して立候補は13人にとどまり、定数割れとなった。現職9人の引退が響いた。

 5期目の篠平良平氏(72)も引退を決めた。前回は後継者が見つからず、引退を先延ばしした。今回も前々日の夜まで地区の男性の説得に当たったが「仕事がある」と断られた。「今は定年後も再雇用で長く働ける。仕事を辞めて引き受けてくれるほど、議員の活動内容や必要性が理解されていない」

 同じく引退する宇治徳庚(のりみち)氏(75)は昨年、議員のなり手不足を念頭に置いた住民アンケートを中心になって実施した。報酬月額22万7000円と定数は「今のままでよい」が回答の約半数を占め、議会で現状維持を決めた。

 「議員をやってみたい」と答えた人も10人以上いた。それだけに定数割れの結末に「これほど厳しいとは」と言葉を失った。「選挙がないと、町民も役場も住民代表という意識が薄まる。議員が減ると多様な声を聞きづらくなる」と懸念する。

 一方、定数6の山梨県丹波山(たばやま)村議選は8年ぶりの選挙戦となり、村議選としては初めて選挙看板も設置された。地縁血縁がものを言う村議選ではこれまで選挙カーも走らなかった。新人候補は「地縁血縁も大事だが、より多くの支持を集めたい」と説明する。

 かつては村内8地区の代表が村議を務めた時代もあったとされる。だが、約4年前に村内のケーブルテレビで議会中継が始まり、16年からは中学生が「子ども議会」を始めた。現職候補は「『質問をしない議員はいらない。子ども議会の方がましだ』との厳しい声も届く」と苦笑する。

 村民の視線を意識した村議会は今年3月、定数を2削減した。元村議の女性(93)は「村の発展のため活発な議論をしてほしい」と期待を寄せる。【千脇康平、安高晋、野呂賢治】

最終更新:4/17(水) 0:37
毎日新聞

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