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慰安婦の渦中に飛び込みドキュメンタリー映画「主戦場」を撮った日系米国人デザキ監督「意味のある議論に移っていくといいなと思っている」

4/16(火) 18:20配信

スポーツ報知

 戦時中の慰安婦たちは本当に日本軍の「性奴隷」だったのか。官憲による「強制連行」は本当にあったのか。なぜ元慰安婦たちの証言はブレるのか。日本政府に法的責任はあるのか―。そんな疑問を抱き、慰安婦問題を巡る論争の中心人物たちを訪ね回ったドキュメンタリー映画「主戦場」(122分)が20日から東京・渋谷のシアターイメージフォーラムで上映される。日韓を中心とする激しい論争の渦中に飛び込んだのは、日系米国人のドキュメンタリー映像作家、ミキ・デザキ氏(35)。約2年半に渡って日本、韓国、米国の識者、論客らの主張に耳を傾けて、見えてきたものは何か。デザキ氏にインタビューした。

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(構成・甲斐 毅彦)

 慰安婦問題は日韓のみならず、サンフランシスコ市で慰安婦像の設置が論議を呼んだことから米国でも広く知られるようになった。日系米国人のデザキ氏は問題意識は持ったが、先入観を持たなかった。

 「私には日韓両国に友人がいます。皆、誠実な人たちです。それにも関わらず、日韓の関係が今までにも増して悪くなっていることを残念に思いました。これには不必要ないがみ合いがあるのではないか、と。これは一部のメディアが文脈や背景を示さずに微妙な方法で、ナショナリズムを高めているのではないか、と考えました。これは日本のメディアだけでなく、もちろん韓国のメディアでも同じことです」

 慰安婦問題の主な論点は、戦時中の官憲による強制連行があったのか、なかったのか。もう一つは慰安婦たちの生活実態が「性奴隷」であったのか、なかったのか、という点だ。「なかった側(否定派)」の論者は自民党衆院議員の杉田水脈氏、カリフォルニア州弁護士でタレントのケント・ギルバード氏、ジャーナリストの桜井よしこ氏ら。「あった側(肯定派)」は吉見義明・中央大教授ら歴史学者や韓国挺身隊問題対策協議会や元慰安婦が暮らすナヌムの家の関係者など。デザキ氏はまったくかみ合わぬ双方の主張を反証させ合いながらニュース映像などを織り込んで映像を編集。その両論併記の手法は精緻だ。デザキ氏は、当初どちら側にも肩入れをせずに取材に取りかかったという。

 「最初は双方の主張に(共感の針が)行ったり、来たりでした。保守派(否定派)の人たちの話は論理的に聞こえましたし、当初は知識もありませんでしたので、話を聞きながら自分が彼らにからめ取られていきました。彼らの意見に抵抗するような論点を持っていなかったのです」

 だが、慰安婦否定派の主張を聞いているうちに、デザキ氏は徐々に保守団体「日本会議」の存在に注目していった。

 「なぜ保守派の人たちが慰安婦問題を封印しようとしているのか、疑問を持ちました。例えばカリフォルニアのグレンデール市の慰安婦像を巡っての訴訟。小さな街でのことに、どうしてこれほどの労力をかけるのか。そこには意図があるに違いないと思いました。。一連のネットワークの人たちはいったい何を目的にしているんだろう、と」

 映画の内容については、これ以上は触れず、見た上で、共感できるかどうかを個々が判断すべきかもしれない。作品を通じて、徐々にデザキ氏の共感の針が一方に傾いていくが、双方に揺れ動き、悩む過程も感じ取ることができる。

 「映画を見ていただく方にも(映像を通して)そのような体験をして欲しいと思っています。これまでの議論は意味のないことをグルグルと繰り返し語り合ってきた。今後は意味のあることに移っていくといいな、と思っています。文脈や背景を知ることではじめて語れることはあると思います。この映画が、今後の解決へ向かう取っかかりになれば、と思っています」

 ◆ミキ・デザキ 1983年、米フロリダ州生まれの日系米国人2世。ミネソタ大ツイン・シティーズ校で医大予科生として生理学専攻で学位取得後、2007年に英語教師として来日、山梨・沖縄県の中高等学校で5年教べんを執る。同時にYou Tuberとしてコメディービデオや差別問題の映像作品を制作。タイで仏教僧となるために修行青、15年に再来日。上智大大学院グローバル・スタディーズ研究科修士課程を18年に修了。「主戦場」は釜山国際映画祭2018ドキュメンタリー・コンペディション部門の正式招待を受けた。

最終更新:4/17(水) 8:58
スポーツ報知

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