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【平成の事件】開かぬ「パンドラの箱」、日米地位協定 横須賀米兵強盗殺人から13年、遺族の痛み

4/16(火) 10:00配信

カナロコ by 神奈川新聞

 日米安全保障体制を象徴する街、横須賀。日米両国の部隊が重要拠点を構えるこの地で、2006年に米兵が市民を惨殺する事件が起きた。米軍との共存路線を歩む街に暮らし続けながら、遺族はこの13年間、被害や日米関係にどう向き合ってきたのか。(神奈川新聞記者・高橋融生)

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 横須賀港を臨むマンションに暮らす山崎正則さん(71)のもとには年に2回、刑務所からの封書が届く。

 被害者支援の制度に基づく通知。内縁の妻=当時(56)=を殺害した罪で服役している米兵の受刑の様子を伝える内容だ。

 「仮釈放されないか、今はそれが不安でね」

 事件から、13年が過ぎた。2人で生活し始めたばかりだった家から、今も離れられない。山崎さんの亡母のためにと妻が選んでくれた仏壇に、今は妻自身の遺影が立ててある。

地位協定「運用改善の機能を示す」

 京急横須賀中央駅に近い雑居ビルの階段踊り場に、妻が倒れていたのが見つかったのは、2006年1月3日の早朝だった。肋骨は折れ、内臓は破裂。財布から現金が抜き取られていた。

 街頭の防犯カメラには、彼女に近づく外国人の男の姿が映っていた。1キロほど離れた場所には、米海軍横須賀基地がゲートを構える。神奈川県警は米軍に照会した。既に基地に戻っていた空母「キティホーク」乗員の男が、米軍当局の捜査に、事件への関与を認めた。

 日米地位協定では、米軍関係者による公務外の犯罪の1次裁判権は日本側にあるが、容疑者の身柄が米軍側にある場合は、起訴まで米軍が拘禁を続けるとも規定されている。ただ、1995年の日米合同委員会合意で、殺人や強姦に関しては、米側が日本への起訴前の身柄引き渡しに「好意的な配慮を払う」とする地位協定の運用改善がなされていた。

 元米国務省日本部長のケビン・メア氏は当時、東京の在日米大使館で安全保障部長を務めていた。事件の連絡を受けて「すぐ日本側に引き渡すべきだ」と主張したという。

 「証拠もあり、本人も関与を認めている。軍内部からは運用面での前例となることに慎重な意見も上がったが、『これが起訴前引き渡しの対象に当てはまらないなら、何が当てはまるのか』と言った」

 議論はワシントンに移り、最後には起訴前引き渡しに応じるとの結論に至る。日米合同委員会が開かれ、外務省からの引き渡し要請に、在日米軍は即座に応じた。メア氏は「地位協定の運用改善が機能していることを示す必要もあった」と回想する。

 米兵は逮捕され、強盗殺人罪で起訴された。2006年6月の横浜地裁一審判決は、「現役米兵による凶悪犯罪は地域住民に強い衝撃を与えた」として無期懲役を言い渡し、確定した。

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最終更新:4/16(火) 20:32
カナロコ by 神奈川新聞

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