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RIZINとパッキャオの背景にメイウェザー、 三者が目論むのは日本”ファイト・シティ”化!?

4/16(火) 16:30配信

VICTORY

「メイウェザーの次はパッキャオか!?」
格闘技ファンとスポーツメディアが色めき立ったのは4月7日深夜(日本時間)のことだった。RIZINの榊原信行実行委員長が、マニー・パッキャオとの2ショット写真をツイッターにアップしたのだ。榊原氏の横で、パッキャオが書面にサインしようとしているような写真もあった。その文面はこうだ。
「メイウェザーに続き、RIZIN.15ではこの男と新たな仕掛けを行います」

説明するまでもないが、パッキャオは現在のボクシング界最大のスターの一人。フィリピンの貧しい暮らしからボクシングで成り上がり、フライ級から始まってスーパー・ウェルター級の世界タイトルも獲得した。そしてアメリカでの試合をきっかけに、アジアの選手としては規格外の出世を果たしている。母国では国民的英雄と言っていい存在で、2010年からは国会議員を務めてもいる。

まさかとは思いながらも、想像してしまうのは「パッキャオ、RIZIN参戦!」だ。ファンはもちろん、海外メディアもこのニュースを取り上げた。

荒唐無稽なようだが、RIZINは昨年大晦日、実際にフロイド・メイウェザーをリングに上げている。「さすがRIZIN」であれ「ボクシング界を荒らすな」であれ、多くの人間にとって気になる話題を提供したことは間違いない。

しかし実際には、RIZINとパッキャオはファイト契約を結んでいなかった。4月9日、RIZINの事務所での会見で発表されたのは、パッキャオ推薦選手であるフリッツ・ビアグダンが那須川天心とキックボクシングルールで対戦するというものだった。舞台は4月21日の『RIZIN.15』横浜アリーナ大会。パッキャオも来場し、リング上からファンに挨拶するという。

肩透かしといえば肩透かし。しかし落ち着いて考えてみれば、パッキャオほどのビッグネームが4月7日に契約して4月21日に闘うはずがない。いくらなんでも準備期間が短すぎるのだ。

また仮にRIZINで“闘う”ということであれば、SNSでさらっと発表したりはしないだろう。メイウェザーvs那須川と同じように、極秘にしておいた上で大きな会見場を借り、大々的にアナウンスするはずだ。

4月9日の会見が行われたのは、RIZIN事務所の小さな会見スペース。そこに入りきれないほどの取材陣が詰めかけたのは、RIZIN側としても予想外だったようだ。この会見では大雅の対戦カード(vsタリソン・ゴメス・フェレイラ)も発表されたのだが、大雅の第一声は「パッキャオじゃなくてすいません(笑)」というものだった。

とはいえ、 “那須川天心がパッキャオの刺客と対戦”というのはなかなか面白いマッチメイクだ。フィリピンは近年、MMAでも強豪を輩出しており、ボクシング、MMA、ムエタイで試合をしてきたビアグダンも注目に値する存在と言っていい。
「フィリピンは今、強い選手が多い。集中して闘いたいです」と那須川。昨年大晦日以来のRIZINで「帰ってきたぞというところを見せたいです」とも語った。

榊原氏によると、RIZINとパッキャオ側は今後も選手の交流を行なっていきたいという。会見ではパッキャオからのビデオメッセージも流された。「メイウェザーと闘った天心のファイティング・スピリットに敬意を表します。アジア人では私と天心しかメイウェザーと向き合ったことがない。いつかRIZINで闘いたいです」

RIZINとしては、パッキャオとのビジネスによって、ボクシング以外でも新たな“格闘強豪国”となりつつあるフィリピンとのルートが太くなる。会見に多数の取材陣が詰めかけたように、“パッキャオと絡む”だけでもニュースバリューは大きい。おそらく4.21横浜大会当日も、パッキャオ目当てのメディアがかなり訪れるのではないか。メディアが多ければ、それだけ世間に「RIZIN」という言葉が流通するわけである。
 
もちろん、最終的に目指したいのはパッキャオがRIZINのリングでファイトをすることだ。現時点ではまったくの未知数。どんなルールか、誰が相手かなどは、まだ予想する段階でもないだろう(そんな段階から“妄想”するのもファンの楽しみではあるのだが)。
那須川は、将来的なパッキャオとの対戦について聞かれ「今は考えてないです。いずれ機会があるなら、というくらいですね」とあくまで冷静にコメントしている。RIZINとしても、メイウェザーに振り回された経験があるだけに、パッキャオとはより実りのある交渉をしたいようだ。

実はRIZINとパッキャオのビジネスは、メイウェザーのアパレル、マネジメント関連の会社TMTの協力によって始まったものだという。来日していたメイウェザーはRIZINの会見が行なわれた4月9日の夜、取材陣に向けホテルでコメント。日本での格闘技イベント開催プランを語っている。TMTの専門分野であるボクシングだけではなく、MMAを含めたイベントにしたいようだ。

そこにRIZINも参画していくし「その枠組みにはパッキャオも入ります」と榊原氏。TMT、RIZIN、パッキャオと3陣営が関わるビッグプランが進んでいるというのだ。
メイウェザー=TMTが見据えているは、日本におけるカジノ解禁のようだ。すぐにラスベガスやマカオのようになるかどうかは分からないが、少なくとも日本に“ファイト・シティ”が生まれる可能性はゼロではない。その市場にいち早く乗り込んでいきたいということだ。

そこでMMAの試合も組んでいくのであれば、日本で長くMMAに取り組んできたRIZINの首脳陣は大きな助けになる。選手確保、会場選定、日本に適したPR手法や格闘技ファンへのアプローチは、TMTには貴重なノウハウになるだろう。
またRIZINにとっても、メイウェザー、パッキャオとビジネスを展開するメリットは計り知れない。ボクシングファン、ライト層、RIZINの選手は那須川くらいしか知らないが、メイウェザーやパッキャオなら聞いたことがあるという一般層もいるのではないか。

そうした、今まで以上に多くの人々にRIZINの存在を浸透させていくチャンスなのだ。それが、より大きなビジネスにもつながっていく。普通、スポーツにおける“夢の対戦”は同じ競技、同じカテゴリー、あるいは同じ(近い)階級の中でのトップ同士が対戦することを言うのだが、RIZINは「変なことをやりたい」(榊原氏)というイベントだ。

ボクサーとキックボクサーが闘ってもいいし、そのために既存の競技とは違う独自の特別ルールを設定しても構わないと考えている。そうやってメイウェザーvs那須川は実現したのだ。賛否両論を呼び、それも含めて世間を巻き込むのがRIZINのやり方。TMT、パッキャオとの“チーム結成”は「なぜ」ではなく、むしろ必然でしかない。

スケールが大きすぎて荒唐無稽だと感じる人も多いだろう。確かに、すべての話を鵜呑みにするわけにもいかない。榊原氏は「パッキャオとやるなら五味(隆典)でしょう」、「(SNSで那須川戦をアピールした)コナー・マクレガーとコミュニケーションはある」とも語っているのだが、それが「RIZINでパッキャオvs五味、実現へ」、「マクレガー、RIZIN参戦へ」と直結するわけでもない。

さまざまなルートがあり、数多くのプランがあり、現実のビジネスと榊原氏のアイディアが入り乱れているのが会見でのコメントというものだ。
だから現時点では「慌てるのはまだ早い」というしかない。ただし、繰り返しになるがRIZINはフロイド・メイウェザーvs那須川天心を実現させているのだ。1年前は、そんなことは想像もできなかった。慌てるのはまだ早い。しかしどんな破天荒なスーパーカードが実現してもおかしくはない。良くも悪くも常識はずれなのがRIZINなのである。

橋本 宗洋

最終更新:4/16(火) 17:19
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