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【先生の明日】熱血教師は40歳で死んだー「美談ではなく悲劇」 教員の過労死はなぜ後を絶たないのか

4/16(火) 15:00配信

カナロコ by 神奈川新聞

逆説的な「幸運なケース」

 審査請求を進めるうちに分かったことがあった。「これでもうちは、幸運な方だということです」

 逆説的な言葉の理由は、教員の過労死認定を巡る申請制度にある。公務災害は、所属長(校長)による勤務実態調査書が申請書類となるためだ。

 「でも校長は教員を働かせすぎた監督者であり、張本人なので、現場が協力に後ろ向きになってしまうケースが一般的。この壁に行き当たって、泣き寝入りする遺族はものすごく多い」(工藤祥子さん)

 過去には遺族から申請の依頼を受けた校長が、書類を数年間にわたって隠していたケースまであった。

 過労問題を扱って40年の大ベテラン、松丸正弁護士(72)は「だから教員の過労死の相談を受けたら、僕はまず校長のところへ飛んでいく」と語る。

 「少なくとも制度的には、個々の校長の責任が問われることはない。この手続きは校長の責任を追及するものではなく、遺族の救済のためだということを分かってもらう必要がある」

 文科省の調査によると、公立中学の先生は全体の4割が、月に100時間以上の時間外労働を記録している。月80時間の過労死ラインを超え、産業医への報告義務が課されている危険水域だ。統計上は約9万人の中学校教員がこのゾーンにいることになる。

 ただ実際に過労死申請をするのは例年1ケタで、しかも認定されるのはその半分程度だ。松丸弁護士は、潜在的な過労死者数をこう予想する。

 「在職中の公立の教員は、年間で約500人が亡くなります。各種統計や自分の経験則を踏まえると、少なくともその10分の1、つまり50人近くは過労死と考えられる。現在、実際に認定されるのはさらにその10分の1です」

 夫がその氷山の一角となった工藤祥子さんは、この過小な数の背景にも構造的な要因があると指摘する。

 「過労で苦しむ先生が相談するとしたら、学校内なら教頭や校長、校外なら教育委員会や人事委員会になる。つまりその環境をつくっている側なんです。責任を負うべき側が積極的に動いてくれるわけがない。民間の労働基準監督署に当たる指導権限のある第三者機関がないと、本当に困っている先生たちは救えない」

 現状では、過労死弁護団全国連絡会議が運営する「過労死110番=03(3813)6999」へ連絡するのが最善だ。

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最終更新:5/14(火) 9:25
カナロコ by 神奈川新聞

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