ここから本文です

【先生の明日】熱血教師は40歳で死んだー「美談ではなく悲劇」 教員の過労死はなぜ後を絶たないのか

4/16(火) 15:00配信

カナロコ by 神奈川新聞

理由のある、悲劇

 工藤義男先生の葬儀には、延べ2千人が参列した。当日は、最寄り駅の改札から徒歩5分程度の葬儀場まで、会葬者の列がつながった。午後6時に始まったお通夜が終わったのは、午後10時半ごろだった。

 「後日、夫が顧問をしていたサッカー部の生徒が尋ねてきてくれた。彼らが、僕らのせいだって泣くんですよ。夫は部活が大好きで、『いくら疲れていてもあいつらの顔見ると元気が出る』って。でも最後となった練習では、夫は木陰から立ち上がれなかったらしい。生徒たちは、そんな姿を心配していたらしくて」

 妻の祥子さんは、泣きながら「あなたたちのせいじゃないよ」「あなたたちが夫の生きがいだったんだよ」と言い聞かせた。

 祥子さんの元に届いた教え子や保護者からの手紙も、100通ではきかない。中には工藤さんに憧れ、同じく教員を目指した生徒や、実際に教職に就いた教え子も複数いた。

 〈将来は日体大を目指して、先生と同じ体育指導者になりたいです〉

 〈いつかはサッカー部の顧問として工藤先生と対戦する日を夢見ていました〉

 〈私は今高校の教員をしています。先生の熱心な姿、厳しさ、どの生徒とも親しく接する心の大きさ…。先生のような教師、いや、男を目指して全力で進んで行きたいです〉

 教師という仕事を愛し、誇りにしていた夫の思いは、少なからぬ人に届いていた。「たぶん夫が子供たちに一番伝えたかったのは、人生は楽しいんだよというメッセージだったはず」。だからこそ、なおさら思う。

 なぜ、こんな人が死ななければならなかったのか。

 こんな人が死んでしまう学校現場とは何なのだろうか。

 慕ってくれた同僚や夫に憧れて教員になった教え子に、二度と同じことを繰り返させたくない。彼らの人生や夢が守られる、学校にしたい。祥子さんが活動を続ける理由、そして原動力がここにある。

 現在、民間を含めて全国で60件もの過労裁判を抱える松丸弁護士も言う。

 「これを、熱血先生の美談で終わらせてはならない」

 教員の過労死はどれも、明確な理由のある悲劇だ。

 働き方改革、ワークライフバランスが世の中でこれほど訴えられているにもかかわらず、先生たちは、なぜこれほど働き過ぎるのか。それには「定額働かせ放題」とも指摘される、先生のみに適用される「給特法」という法律の存在があった。

連載【先生の明日】
 この記事は神奈川新聞とYahoo!ニュースによる連携企画です。教職員を取り巻く課題を伝え、その解決策について考えます。「過労問題」編は、4月16日、17日、18日の3回にわたって配信予定です。

4/4ページ

最終更新:5/14(火) 9:25
カナロコ by 神奈川新聞

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事

あわせて読みたい