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英離脱派が大合唱する“第2国歌”

4/17(水) 9:30配信

毎日新聞

 欧州連合(EU)からの離脱を巡り、英国が大混乱に陥っています。そもそも英国の離脱派がEUから離れたい理由は何なのでしょうか。毎日新聞ロンドン特派員の三沢耕平記者は、離脱派を支持する人たちが好む英国を象徴する歌にそのヒントが隠されていると分析します。【毎日新聞経済プレミア】

 「英国人は、決して、決して、奴隷にはならないぞ!」。英下院がメイ首相の離脱協定案を三たび否決した3月29日午後。ウェストミンスターに集結した数千人の離脱派市民が大合唱していたのは英国第二の国歌といわれる「ルール・ブリタニア」だ。

 「ルール(Rule)」は「統治」を意味し、「世界を統治するのは英国人だ!」「奴隷にはならないぞ!」という歌詞が繰り返される。離脱派はEUの官僚が作る法律に支配されず、主権を取り戻そうと訴えてきた。EU加盟国であることをEUの「奴隷」と捉える離脱派の思いに通じることもあり、涙を浮かべながら歌っている人もいた。

 ◇「愛国心」を刺激する文言

 世界に衝撃を与えた英国のEU離脱は2016年6月の国民投票で決まった。ウェールズから来たという運送業、ジョセフ・ラミーズさん(57)は「我々は既に国民投票で離脱を選択している。離脱の延期は国民を裏切る行為だ」と話し、「ルール・ブルタニア」を繰り返し歌っていた。

 首相官邸前に向かうと、別の離脱派グループが路上で大規模な集会を開いていた。大音量で流れていた曲は、「希望と栄光の国」(ランド・オブ・ホープ&グローリー)。英国の作曲家、エドワード・エルガーの行進曲「威風堂々」の一部に歌詞をつけたもので、やはり英国第二の国歌として親しまれている曲だ。

 「汝(なんじ)の領土はますます拡大を続ける」

 「汝を強大ならしめた神は、なお汝を強大ならしめん」

 この曲の歌詞も英国人の「愛国心」を刺激する文言が並んでおり、参加者は英国旗やプラカードを振りながら合唱していた。強硬離脱を主張してきた英独立党(UKIP)のバッテン党首も駆けつけ、「もしEUを離脱できないなら英国の民主主義は終わる」と訴えた。

 ◇蛍の光で「バイバイEU!」

 再び広場に戻ると、スコットランドの民謡「オールド・ラング・サイン」(古き良き日々)のメロディーに合わせて「バイバイ~、EU!」と合唱する集団がいた。日本では「蛍の光」として卒業式で歌われる定番だが、原曲の歌詞は別れた旧友に思いをはせる内容となっている。近くに住む運転手のジェシー・カラードさん(48)は「離脱してもEUとの友人関係は続く。ただ、それだけのことだ」と話していた。

 世論調査会社ユーガブが4月4日に発表した調査によると、ロンドンでは「離脱の撤回(EU残留)」を支持する回答が48%、「合意なき離脱」の支持が26%。だが、英北部、英南部、英中部では、「合意なき離脱」を支持する回答がいずれも4割超となり、ロンドン以外の全ての地域で「合意なき離脱」の支持が「残留」支持を上回った。

 離脱に反対する市民のデモ活動もヒートアップしており、3月23日には国民投票のやり直しを求めるデモ行進に100万人以上が参加した。離脱派と残留派に生じた亀裂は修復できないほどに広がっている。

最終更新:4/17(水) 14:12
毎日新聞

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