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障害のある議員極端に少なく 統一地方選に挑むも制約多く

4/17(水) 18:50配信

毎日新聞

 統一地方選で障害を持つ人たちが選挙戦に挑んでいる。だが選挙運動や議会活動に制約があり、障害のある議員の割合は障害者の割合に比べて極端に少ない。統一地方選の対象ではない地方議会でも、障害のある議員がバリアフリーのための支援を受けながら奮闘している。【成田有佳、斎藤文太郎】

 2017年1月に改選した埼玉県戸田市議会の委員会。市の担当者がマイクで答弁すると、補聴器を着けた佐藤太信(たかのぶ)議員(38)の向かい側に座る手話通訳者が訳していく。同時に音声が文字に変換されてパソコンに表示された。

 佐藤議員は2歳で聴覚を失った。幼い頃から発声の猛練習をしたため、相手の唇の動きで話を理解し、声で意思を伝えられるが、音は補聴器をしても途切れ途切れにしか聞こえない。「聞こえないからこその視点を政治に生かしたい」と立候補して17年に初当選した。

 当選直後、議会が用意したのは手話通訳だけだった。しかし、予算審議で億単位の数字や「土地区画整理事業」といった手話で訳しにくい言葉が次々と出てきて理解が追いつかず、音声を文字に変換するシステムの導入を要望して認められた。音声変換も誤字や脱字があり「他の議員と同じ情報を得るには両方が必要」と説明する。

 今年度は手話通訳とシステムのため約430万円が議会費で計上された。戸田市では聴覚障害者の傍聴や手話を学ぶ議員が増えており、「健常者との壁をなくす活動をしていきたい」と話す。

 21日投開票の兵庫県明石市議選で再選を目指すろうあの女性議員(59)は、議会では手話で発言し、通訳が声で伝える。議会は女性の当選後、普段の活動で必要な通訳を確保しやすいよう政務活動費を通訳に使えることを手引に明記した。

 障害がある全国の議員らでつくる「障害者の自立と政治参加をすすめるネットワーク」(代表=伝田ひろみ・さいたま市議)などによると、今回の統一選には視覚や聴覚、肢体に障害がある人が20人以上立候補した。

 7日投開票の千葉市議選に立候補した訪問介護事業所経営の渡辺惟大(ただひろ)さん(32)は全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病「筋ジストロフィー」のため電動車いすで選挙戦に臨んだ。首から上以外に動くのは右手首と指先だけ。街頭演説ではマイク付きヘッドホンとスピーカーを使ったが、大きな声を出せないため呼びかけは近くを走る車の音にかき消された。手を振るのも、握手もできなかった。

 着替えも排せつも介助が必要で、普段は障害福祉サービスを利用している。しかし、告示前に市選管から「街頭での選挙運動にサービスは使えない」と説明されたため、ヘルパーや友人に協力を頼むと、多くがボランティアを買って出てくれたという。

 渡辺さんは落選したが、市議会事務局は議場内の段差解消や質問時の登壇、起立採決について改善の検討を始めた。

 ◇都道府県議会と政令市議会でわずか0.2%

 障害のある議員の公式なデータはないが、毎日新聞の17年の調べでは47都道府県議会と20政令市議会に車椅子利用者が7人、視覚障害者が1人おり、総定数に占める割合は約0.2%。18年版障害者白書によると、身体障害者は国民の約3.4%、精神、知的も含めると約7.4%に何らかの障害があるといい、議員の比率は低い。

 議員活動をする環境もまだ整っていない。三重大の大倉沙江助教(政治学)が昨年、障害があることを公表している29人の議員にアンケートしたところ、回答した市区町議25人のうち介助者の報酬を自己負担(一部負担含む)している議員は14人いた。

 立候補して議員として活動する中で差別を感じた人も15人に上った。「合理的配慮を求めたら同僚議員から特別扱いだと批判された」「視察の付き添いを家族がするのは公費の私物化だと市民から投書があった」との声が寄せられたという。

 選挙運動でも障壁がある。公職選挙法で選挙カーに乗車できるのは候補者のほか5人までと定められているが、現状では介助者と運動員の線引きが難しい。選挙公報について音声変換ができるようデータでの提供や点字版を求める声もある。

 大倉助教は「現在の選挙制度は障害者の立候補が十分に想定されていない。障害者の政治参加を進めるため、見直しが必要だ」と指摘する。【成田有佳】

最終更新:4/17(水) 19:20
毎日新聞

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