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迫る仮設住宅の入居期限 被災者ら延長申し入れ 九州北部豪雨

4/17(水) 19:16配信

毎日新聞

 2017年7月の九州北部豪雨で甚大な被害を受けた福岡県朝倉市で、仮設住宅の入居期限(原則2年)が今夏に迫り、住民から期限延長を求める声が上がっている。しかし、九州北部豪雨は、東日本大震災などのように国の「特定非常災害」に指定されておらず期限延長の対象外であるとして、県は延長しない考えだ。復旧工事が続き自宅に戻れない被災者もおり、専門家は柔軟な対応が必要と指摘する。【青木絵美】

 「復旧や復興の工事関係者が借りているようで、アパートに空きがない」。朝倉市杷木(はき)林田の仮設団地に暮らす大工の小嶋喜治さん(63)は不安をにじませる。土砂災害に見舞われた地元の同市杷木松末(ますえ)の石詰(いしづめ)地区は昨秋、被災者生活再建支援法に基づく「長期避難世帯」に認定され居住できない。川の復旧工事が続き戻るめどは立っていない。それでも床下浸水した自宅を片付け、土日などに通って風通しをしながら帰還の日を待つ。

 だが、仮設団地は建築基準法などにより入居期限は原則約2年とされ、今夏に退去が迫る。期限に合わせて災害公営住宅が完成予定だが、入居を申し込んだ小嶋さんは収入要件が合わず対象から外れた。物件を探してはいるが希望する杷木地域に空き物件がない。「よそに出て行けということなのか。せめて半年でも延長できれば」

 小嶋さんらは他の入居者ら約130人と被災者の会を結成。今月11日に県庁を訪ね1、2年の期限延長を申し入れた。九州北部豪雨により福岡、大分県で仮設住宅(民間借り上げのみなし仮設を含む)で暮らす被災者は827人で、朝倉市は746人(3月末現在)。福岡県側は申し入れに対し災害公営住宅が完成することなどを説明し延長に応じない姿勢を示した。入居期限に備え、県はいったん民間賃貸住宅などに移る時の引っ越し代を助成し、朝倉市も義援金を活用した支援策を打ち出している。

 被災者の相談に携わる松尾朋弁護士(福岡県弁護士会)は「2年で古里に戻るめどの立たない人もおり、仮設住宅の期限と特定非常災害の規定が実情に合っていない」と指摘。「まずは特定非常災害の認定を被災地の復興の状況に合わせて柔軟に運用し、将来的には仮設住宅に関係する法令を見直すべきだ」と訴える。

 転居を強いられれば心身への影響も懸念される。東北大の辻一郎教授(公衆衛生学)によると、東日本大震災の被災地、宮城県石巻市で被災者約2200人を対象にした昨年の調査では、転居4回以上で睡眠障害を発症する人の割合は約4割を占め、転居回数が増えるほど発症割合が高かった。辻教授は「見通しがつかない中で被災者がばらばらになり、再建の厳しい人は取り残されたように感じる。生活再建を個々人に委ねず、誰も取り残さない視点が行政には必要だ」と指摘する。

 ◇特定非常災害

 1995年の阪神大震災をきっかけに設けられた制度。「著しく異常かつ激甚な非常災害」が指定され、仮設住宅の入居期限延長や運転免許証の有効期間延長などができるようになる。阪神大震災の他、新潟県中越地震(2004年)▽東日本大震災(11年)▽熊本地震(16年)――に適用され、18年には豪雨災害で初めて西日本豪雨が指定された。

最終更新:4/17(水) 20:37
毎日新聞

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