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中国経済、減速下げ止まりも不安の芽 地方マンションの値崩れ深刻化

4/17(水) 21:10配信

毎日新聞

 【北京・赤間清広】中国国家統計局が17日発表した今年1~3月期の国内総生産(GDP)は、物価変動を除いた実質で前年同期比6.4%増だった。昨年10~12月期から横ばいとなり、1年ぶりに成長率の減速に歯止めがかかったが、2018年通年実績の前年比6.6%増を下回る水準が続く。政府の景気対策が奏功した形だが、無理な「カンフル剤」を打ち続ければ、経済に新たなリスクを生みかねない。米中貿易戦争も懸念材料だ。

 ◇「過剰な値引きで、市場の秩序乱されている」

 北京と上海のほぼ中間に位置する江蘇省ひ州市。イチョウの産地として有名な田舎町に異変が生じたのは3年ほど前のことだ。畑や低所得者の住居が次々と潰され、その跡地が高層マンションに変わった。当局の金融緩和を受け、現在も重機の音が響きわたる。

 江蘇省では17年から高速鉄道の新路線建設が始まっている。20年開通予定で、ひ州にも新駅ができる予定だ。高速鉄道ができれば、周辺の不動産価格は跳ね上がる。そう当て込んだ大手不動産開発会社が殺到し、マンションの建設ラッシュを招いた。

 しかし、地方都市でマンションの買い手は多くない。期待されていた不動産価格の高騰は起きず、値崩れが深刻化している。高級マンションのショールームを訪ねると、販売員が「中級以下のグレードのマンションは確実に値崩れしますよ」とささやいた。しかし、この高級マンションでも1年で約1割も値下がりしたという。ベランダから外を眺めると、建設中のマンションが10棟以上、視界に入る。価格上昇は当面、望めそうにない。

 「過剰な値引きで、市場の秩序が乱されている。挑戦的な価格設定をすべきではない」。ひ州の不動産業界は今年2月、マンションの値引き競争に警鐘を鳴らす文書をまとめた。しかし、在庫を抱えたくない業者の投げ売りは止まらない状況だ。需要を無視した過剰投資のつけが、田舎町を追い詰めている。

 中国政府は17年後半から、地方の債務解消のためインフラ投資などを抑制する緊縮策をとってきた。しかし、米中貿易戦争の影響などで中国経済の減速傾向が鮮明になると、再び景気刺激に軸足を移し、当局の金融緩和も拡大して投資を刺激する「カンフル剤」を打ちはじめた。

 今年1~3月の固定資産投資は前年同期比6.3%増と、18年の通年実績(5.9%増)から加速した。インフラ投資が4.4%増(18年実績は3.8%増)に伸びる一方、民間投資は6.4%増(同8.7%増)に縮小しており、当局主導の景気対策が中国経済の減速を止める原動力になったのは間違いない。

 中国経済の持ち直しを期待し、1~3月の不動産開発投資も11.8%増(同9.5%増)と拡大傾向にあり、地方都市にも開発の波が押し寄せつつある。一方、不動産販売面積は年明け以降、前年比マイナスが続き、特にオフィス需要は2桁減と厳しい。需給のミスマッチが起きているのは明らかで、ひ州を襲ったリスクが全国に拡大する危険もある。

 ◇個人消費は伸び悩み目立つ

 「一連の政策の効果が表れた。政策効果にけん引され、企業心理の改善も広がっている」。中国・国家統計局の毛盛勇報道官は17日の記者会見で、中国経済持ち直しの動きが民需にも拡大していると強調した。

 1~3月の工業生産は6.5%増(18年実績は6.2%増)。3月単月でみれば前年同月比8.5%増と大幅な改善を示した。ただし、現状で企業活動を積極化しているのはセメント業界など政府主導のインフラ投資の恩恵を受ける業界が主体となっており、この動きを幅広い業種に広げられるかが課題だ。

 企業活動と並ぶもう一つの柱である個人消費は伸び悩みが目立つ。1~3月は8.3%増(同9.0%増)に縮小した。インターネット通販は15.3%増と好調を維持しているものの、自動車やスマートフォンは深刻な販売不振に陥っており、消費者の財布のひもは固いままだ。

 李克強首相は3月の全国人民代表大会(全人代=国会)で、総額2兆元(約33兆円)規模の減税・社会保険料軽減策を表明し、4月から一部を実行に移した。「6~6.5%」に設定した今年の成長率目標を達成するためには、民需の本格回復が不可欠だからだ。

 しかし、SMBC日興証券の平山広太シニアエコノミストは「外部要因が不透明な中、企業や消費活動の積極化は当面、望みづらい」と指摘する。

 最大の懸念要因は米国との貿易戦争の行方だ。米中は収束を目指し通商協議を続けているが、最終合意の場となるトランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談の日程は定まらない。トランプ氏は交渉決裂もにおわせながら中国に揺さぶりをかける。

 世界第2位の経済大国に成長した中国経済の下げ止まりは世界経済にとって朗報だが、国内外に「経済の下押し圧力」(毛報道官)を抱える中、景気の好循環に持ち込めるかは依然、予断を許さない状況だ。

 ◇日本メーカー、警戒緩めず

 中国は経済成長率の低下に一定の歯止めがかかったが、中国向けに半導体や電子部品を製造する国内メーカーは警戒を緩めていない。中国経済の不透明感を払拭(ふっしょく)できないためで、国内では生産調整が続く。

 半導体大手のルネサスエレクトロニクスは、国内外で14カ所ある工場のうち13カ所の稼働を4月下旬以降に停止することを検討している。国内の6工場では、最長2カ月間、停止する見通しだ。

 同社によると、米中貿易戦争や中国経済の減速で産業用ロボットなどの需要が減少している。今後の需要動向によっては停止期間を短縮する可能性もあるが、関係者は「特に7月から12月の需要が読めず、需要が低いままとなるリスクに備える必要がある」と話す。

 産業用モーター大手の日本電産も1月、2019年3月期の業績予想を下方修正すると発表している。昨年11~12月に中国で売り上げが減った影響を受けての判断だが、同社幹部は「3カ月たった今も、中国市場の状況は変わっていない」とみている。電気自動車(EV)のモーターなど、新製品への引き合いがある一方、既存製品の売れ行きがよくないという。

 シャープも中国でのスマートフォン用部品の需要が落ち込んだ影響を受け、19年3月期の連結売上高予想を1月に下方修正している。シャープは「部品の生産数は、供給するメーカーの発注次第で決まる。中国経済の動向を引き続き注視するしかない」と語る。同社が台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業傘下に入って以降、その生産・販売網を生かし中国で売り上げを伸ばしてきた液晶テレビも、供給過剰で価格が下落したため、販売数を抑えているという。【小坂剛志、加藤美穂子】

最終更新:4/17(水) 21:25
毎日新聞

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