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訪日外国人が見たニッポンの選挙 日本は不思議の国か

4/17(水) 9:45配信

産経新聞

 平成最後となる統一地方選は前半戦の知事選や都道府県議選などが終わり、後半戦が14日に告示された。街頭で有権者に支持を呼びかける候補者に、選挙カーからの名前の連呼や街頭演説、選挙ポスター…。選挙中のおなじみの光景だが、その様子を物珍しそうに眺めるインバウンド(訪日外国人客)も少なくない。彼らには、日本の選挙はどのように映るのか。春の観光シーズンを迎え、訪日客でにぎわう京都で尋ねると、国ごとの選挙運動の違いや課題が浮かび上がってきた。(桑村大)

■国ごとの違い鮮明

 「一生懸命活動しているみたいで、好感を持つよ」。オランダから来日したヤンセン・ピーターさん(42)は、JR京都駅前(京都市下京区)で、初めて街頭演説を目にした。オランダでは、候補者が新聞やテレビの討論番組で政策を訴えるのが一般的で、「日本のように街中で直接市民に演説することはほどんどない」と説明する。

 恋人とイタリアから訪れたガッローニ・セシリアさん(30)は、掲示板に貼られた選挙ポスターに注目する。「顔写真だけでなく政策を載せるなど、ポスター1枚で候補者がどのような人物か分かるようにしたらいいのに」と感想を口にした。

 京都府議選と京都市議選の選挙運動が行われた同市内。特に訪日客の興味をひいたのが、候補者の名前を連呼して支持を訴える選挙カーのようだ。

 「名前を知ってもらうためには効果的だね」と感心した様子で話すのは、英国人のウィリアムズ・ダニエルさん(26)。英国にも候補者のポスターを貼った宣伝カーはあるが、拡声器で声を上げたりしないという。

 一方、カナダのマーシェンド・ローリエさん(27)は、選挙カーが候補者名を連呼する点に、「もっと政策を訴えたらいいのに。名前だけの連呼で走らせる意味はあるのか」と懐疑的だ。散策を楽しんでいた米国人のルーシン・ポリーナさん(27)は「うるさくてかなわない。私が有権者なら絶対に投票しない」と否定的だった。

■有権者との接点足りぬ

 日本の選挙運動に疑問を投げかけるのは、観光客だけではない。京都市内に住んで12年のフィンランド人、ハッカライネン・ニーナさんは「いまだに日本の選挙運動は不思議な点ばかり」と打ち明ける。

 フィンランドでは、候補者が街中にブースを設営し、有権者が直接質問することが可能。テレビでも候補者同士が主張をぶつけ合い、街中に貼られる政党のポスターには、選挙を通じて訴えたい内容を明示しているという。

 ハッカライネンさんは「選挙カーで支持を呼びかけるのもいいが、政策や人柄を知る場を増やし、この人に投票したいと思わせるような選挙運動が必要なのでは」と話す。

■制約多すぎ!?公選法

 外国人から賛否の声がある選挙カーだが、大阪大大学院人間科学研究科の三浦麻子教授(社会心理学)らのグループの研究では、候補者の好感度アップにはつながらなくても、得票に結びつくことが明らかになっている。

 研究グループは平成27年の兵庫県赤穂市長選に立候補した3人のうち、1人の男性候補に密着。選挙期間中、候補者の選挙カーに同乗し、スマートフォンのGPS(全地球測位システム)機能を利用して移動経路を計測したほか、連呼行為や街頭演説にかけた時間をそれぞれ分単位で記録した。

 無作為に選んだ有権者2千人に、実際に投票した候補や各候補の好感度、選挙運動の接触の有無などを尋ねる調査票を送付。回答のあった908人分の調査票から、候補者の移動経路と有権者宅との位置関係などのデータを分析した。

 その結果、この男性候補の選挙カーが自宅近くを通った人ほど、男性に投票する傾向が高かった。一方、各候補への好感度については違いはみられず、選挙カーで候補名を連呼することが好感度アップには影響しないことが分かった。

 ただ、候補者たちにも名前の連呼をせざるを得ない事情がある。

 「選挙カーを使って支持を訴えるのも、公職選挙法が『選挙の公正さ』を担保しようと候補者の行為をかなり制限しているから」と指摘するのは、候補者の依頼を受けてさまざまな戦略立案を手がける選挙プランナーの松田馨さん(38)だ。松田さんによると、背景には、候補者の行為について禁止する旨の規定が多いことから「べからず選挙法」などと批判もされる公選法の存在がある。

 先進国では一般的な戸別訪問も日本では制限されており、候補者は有権者に広く呼びかけながら支持を集めるためには、現状では選挙カーが有効だという。

 松田さんは「有権者の意思をより正しく選挙に反映させるためには、どのような選挙運動が適切なのかという視点が大事。公選法も時代に応じて見直す必要があるのではないか」と話している。

最終更新:4/17(水) 9:45
産経新聞

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