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隠れた可能性を発見 転職・起業の新たな発想「他人に目標を立ててもらう」

4/17(水) 9:30配信

産経新聞

 人生100年時代を迎え、1つの会社に定年まで勤め上げて余生を過ごすという従来の人生設計が通用しなくなっている。転職や起業などキャリア形成の手段が多様になり、それに備えた目標の設定は重要だ。だが、自分一人ではどうすればいいか分からない。総合人材サービス事業を手掛けるパーソルキャリア(東京都千代田区)は、他人に目標をたててもらうワークショップ「タニモク」のノウハウを無料で公開し、斬新な発想を導き出している。

 ■隠れた可能性を発見

 他人に目標を立ててもらうというと一見、主体性がないように思える。しかし考案者でウエブマガジン「“未来を変える”プロジェクト」編集長の三石原士(もとし)氏は「他人の視点や価値観を参考にした目標を立てることで、自分自身の隠れた可能性を発見できる」と効用を語る。

 タニモクは平成30年9月の本格スタート以来、首都圏中心にワークショップなどを開催している。今年1月には芥川賞作家の羽田圭介氏ら複数のゲストを迎えて、応募者から選ばれた100人が一堂に会しての大規模なワークショップイベントが開かれた。それぞれ4人1組になりグループごとに実施。そのうちの1組に密着取材した。

 IT人材派遣会社の人事部で健康管理を担当する30代女性、電機メーカーで人工知能(AI)開発に携わる男性(40)、コンサルティング会社勤務の男性(37)、フリーランスのアパレル向けコンサルタント男性(45)。それぞれが初対面だ。

 手順としては(1)まず自分を取り巻く現状を、制限時間5分でA4判の紙に絵で表現(2)そのうちの1人が他の3人に対して、自分が描いた絵について5分で説明(3)絵の内容について8分間で質疑応答(4)説明を聞いた上で3人は説明者の目標を5分で考えてA4判の紙に書き出す(5)各自4分ずつで説明者に対して自分の考えた目標をプレゼンテーション-を3時間ほどかけて4人で繰り返す。一巡したら今後どう生かしていくかを各自がA4判の紙に書き出し、読み上げて発表する。

 このうちコンサルティング会社勤務の男性は、名古屋本社で自動車向けシステム保守を担っていたが、今は東京に単身赴任してコンサルティング業務に就いている。東京転勤後にスタートアップ企業の関係者と知り合い、違うキャリアへの転身に関心を持つようになり、「今の会社にいるか転職するかで迷っている」と自らの状況について報告した。

 それを聞いた3人はそれぞれ自分だったらどのような目標を立てるかという視点で、「自動車関連の人脈をつくり、今の仕事を続けながら転職に向けて活動する」「付加価値を上げて転職しやすくするため、今とは別の専門性を身に付ける」「まず家族のいる名古屋に転勤の希望を出して、戻った上で転職するかをじっくり考える」と、三者三様の見解を提示した。それぞれの意見を聞いた上でコンサルティング会社勤務の男性は「転職するための強みを身に付ける」という目標を宣言した。

 当日参加した他のグループからは、「利害関係のない人が自由に話す場がいいと思った」(50代男性)、「やらなくてはいけないと分かっていても躊躇(ちゅうちょ)していたが、『やれ』といわれたので覚悟が決まった」(40代女性)、「自分と他人の頭が掛け合わされる感覚が面白かった。仕事以外での目標設定をすることがあまりなく、それを共有するというのも新しい感覚だった」(30代女性)といった感想が聞かれた。

 ■具体的な成果も

 具体的な成果も現れている。人材関連事業を手掛けるヒキダシ(東京都世田谷区)の木下紫乃代表取締役は、タニモクでのアドバイスをきっかけに「スナックひきだし」を開業。週1日昼間に開店する「昼スナ」で、ビジネスの一線で活躍する経営者など20代から80代まで、700人を超えるコミュニティーづくりを実現している。木下さんは「自分では無理だと思ったことを、他の人から目標として示されたのが新鮮で、やってみようという気になった」と述べている。

 タニモクで立てた目標を実行するのは本人次第だが、三石氏は「会員制交流サイト(SNS)でつながりを保ち、3カ月後や半年後にグループで振り返ると効果的」と一つの方法を示す。タニモクの実施方法自体は無料で公開するが目標実現の可能性を高めるため、パーソルキャリアが支援プログラムを提供することもある。今後ワークショップを月1回のペースで主催していく。学生や主婦向けといった対象の拡大も検討し、取り組み成功事例を増やすことでキャリア形成のための新しい方法として普及を図っていく。(経済本部 佐竹一秀)

最終更新:4/17(水) 9:30
産経新聞

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