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北極圏LNG、官民の思惑交錯 領土交渉カードと採算性で歩調に乱れ

4/17(水) 7:16配信

SankeiBiz

 ロシアの独立系ガス大手ノバテクが、北極圏の液化天然ガス(LNG)事業への参画を三井物産と三菱商事に打診し、官民は水面下で参加を模索している。領土交渉を進めたい官邸は北極圏LNGへの参画を交渉カードにしたい考えで前のめりだが、民間は経済合理性の観点から慎重に交渉を進めており、足並みは乱れている。6月に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)に合わせて開かれるとみられる日露首脳会談が節目になるだけに、打開策を打ち出せるかが鍵だ。

【写真で見る】ロシア北極圏のヤマル半島にある液化天然ガス(LNG)施設「ヤマルLNG」

 ◆露政権肝煎り事業

 ノバテクが進めるのは、北極圏にあるロシア北部ヤマル半島でのLNG事業の第2弾「アークティック(北極)2」(ヤマルLNG2)の建設計画で、総事業費は3兆円超ともいわれる。ノバテクはヤマル2の権益に6割を出資する方針で、既に仏石油大手トタルが10%を出資する方針を表明し、30%を日本、サウジアラビア、中国企業に打診する。

 プーチン大統領は、今月9日にサンクトペテルブルクで開かれた「第5回国際北極圏フォーラム」でも改めて北極圏開発の重要性を強調。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)調査部の原田大輔担当調査役は「早晩、既存油田の減退が見込まれる中で、北極圏のLNG開発はその代替開発であり、アジアの新たな市場開拓につながるプーチン政権最大の肝煎り案件」と分析する。

 可採埋蔵量は世界の未発見の天然ガスの30%弱、石油などの13%が存在するほどだ。地球温暖化で夏場の海氷が減少し、東向きの北極海航路が現実味を増し、アジア向け輸送が拡大すると、脚光を浴びた。

 こうした中で日本政府関係者はこのほど、両社に対して参画すればJOGMECを通じ、エネルギー安全保障上の重要性から5割超の支援を検討すると打診したもようだ。

 同事業は西向き航路ではバレンツ海を抜けると欧州への通年運航が可能だが、東向き航路は氷が解ける夏季のみの運航で、アジア向けにはコストがかかる。積み替え基地の建設などには国際協力銀行(JBIC)などの政策金融も総動員する構えだ。

 世界のLNG需要は、環境重視を進める中国が2017年に韓国を抜き第2のLNG輸入国となり、日本を抜くのは時間の問題だ。南西アジアなどでも需要が急増し、23年頃には需給が逼迫(ひっぱく)する見通しで、環境変化で昨年以降、大手商社の大型プロジェクトの投資決定も再開機運にある。

 加えて「LNGは日本やアジアにとって再生可能エネルギーの本格導入前の重要なエネルギー源で、ロシアからの調達先多様化は安全保障上の意義も大きい」と関係者は口をそろえる。

 もちろん、民間にとって豊富な埋蔵量と調達先多様化の魅力は大きい。ノバテクも「生産コストは米国産シェールを下回る」と、生産コストの競争力をアピールする。

 ◆読めぬ米追加制裁

 三井物産と三菱商事は水面下で権益の取得価格などを交渉中だが、ロシア側も強気で、「きちんと株主に説明できるだけの採算性確保」には至っていないもようだ。権益の取得価格をめぐっては、仏トタルも参画を表明した昨年に比べ原油価格が下がっているため値下げ交渉中ともいわれるが、ロシア側は譲らず難航しているとみられる。

 最大のリスクは米国による追加制裁の行方だ。ただ、ヤマル2は既に仏が参画表明済みで、経済制裁対象となる深海開発を回避すべく、陸上や浅海で開発を進めており、直接の批判の懸念はない。

 JOGMECの原田氏は「同事業は、ロシア側の補助金や輸出税、法人税などの減税があって、初めて成り立つプロジェクトだ」と指摘する。それだけに、24年までのプーチン大統領の任期以降もこれらの支援策が継続するかどうか。民間側はロシア側の政府保証も条件にしたい考えだ。

 また、積み替え基地の整備には、港湾などのロシア側のインフラ整備も不可欠だ。

 安倍晋三首相は、6月下旬に来日するロシアのプーチン大統領と日露首脳会談を行う見通し。経済フォーラムには、ノバテクのミケルソン最高経営責任者(CEO)の来日も想定される。

 日本政府はロシア側から秋波を送られていた国営石油大手のロスネフチの株式一部売却もスイスの資源大手グレンコアやカタール投資庁にさらわれた苦い経緯もある。欧米の経済制裁は、リスクの半面、ロシアが日本に秋波を送る最大のチャンスともいえる。ノバテクは年内の最終投資決定を模索しており、打開策を打ち出せるかどうか。残された時間は少ない。(上原すみ子)

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【用語解説】ヤマルLNG2

 ロシアの独立系ガス大手ノバテクが進める北極圏のLNG事業で、アークティック(北極)2」「ヤマルLNG2」とも呼ばれる。生産能力はヤマルLNGと同じ、約1650万トンで、事業費は3兆円超とも目され、2023年頃の生産を目指す。17年12月に生産開始した「ヤマルLNG」では、日本勢は権益には参画せずLNGの直接購入契約もないが、プラント建設は日揮や千代田化工建設が参画し、国際協力銀行(JBIC)が海外輸出信用機関と共同で融資をつけた。

最終更新:4/17(水) 7:16
SankeiBiz

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