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「生きる勇気と希望を届けたい」難病の筋ジスと闘い、寝たきりで情報発信

4/17(水) 21:00配信

産経新聞

 全身の筋肉が衰えていく難病の筋ジストロフィーと闘う蔭山武史さん(42)=神戸市北区=が、声を失った自らの闘病体験を教訓にしてもらいたいと、寝たきりで情報発信を続けている。わずかな筋力でパソコンを操作して自伝を書き、会員制交流サイト(SNS)を通じて2400人以上の友人と出会った。「生きる勇気と希望を届けたい」。情熱は衰えず、5月18日には患者の人権について考えるシンポジウムを開く。(小野木康雄)

 蔭山さんは5歳で筋ジストロフィーと診断された。小学3年のときに入院して以来、兵庫県内や徳島県内の病院で暮らしてきたが、8年前からは在宅療養を続けている。

 現在は人工呼吸器を24時間つけたまま、寝たきりで過ごす。何かの拍子でいつ管が外れるか分からず、毎日が死と背中合わせという恐怖は消えない。それでも、わずかに動くあごを使って特殊なマウスを動かし、ベッドに固定されたモニターを見ながら“筆談”で思いを伝える。

 平成22年には自伝『難病飛行-頭は正常、体は異常。』(牧歌舎)を自費出版。そこに、29歳で声を失ったことによる医療への不信感を、こうつづった。

 《なぜ、あのときに教えてくれなかったのか? だまされたといったら言い過ぎかもしれませんが-》

 18年2月、肺炎を患った蔭山さんに、当時の主治医は「死か気管切開しかない」と迫った。呼吸筋が衰えてたんを吐き出せなくなった筋ジストロフィー患者にとって、肺炎は呼吸困難に直結する死の病。蔭山さんは手術を受け、代償として声を失った。

 だが、実際には気管切開をしない「非侵襲的陽圧換気療法」(NPPV)という選択肢もあった。鼻マスクやマウスピースを使って空気を取り込む方法で、会話や食事の制限は少なく、生活の質(QOL)を維持しやすい。蔭山さんは手術の半年後にインターネットで存在を知ったという。

 自暴自棄にならなかったといえば嘘になる。それでも母、節子さん(76)ら家族に支えられ、「楽しく前向きに生きることをあきらめない」と誓った。

 その生き方と行動力は共感を呼び続け、SNSなどを通じて協力する人が後を絶たない。自分の作った詞にプロのミュージシャンが曲をつけてCDになったり、書いた短編小説が映画化されたり。蔭山さんは筆談でこう語る。

 「私は不自由ではありますが、不幸ではありません。むしろ幸せです。ただ気管切開かNPPVか、ほかの患者さんには選択してほしい」

 シンポジウムは5月18日午後2時から、兵庫県三田市総合文化センター「郷の音(さとのね)ホール」で。無料。予約が必要。問い合わせは、蔭山さんが理事を務めるNPO法人もみの木(tamagogojp@yahoo.co.jp)。

 ■気管切開の必要性、見極めを

 筋ジストロフィーは筋肉が壊れやすく再生されにくい遺伝性疾患で、大きく分けて7つのタイプがある。発症のメカニズムは完全には解明されておらず、根本治療薬はない。10万人当たり17~20人がかかっていると推定されている。

 蔭山さんのタイプは、症状が最も重い「デュシェンヌ型」。10歳ごろに歩行困難になり、20~30代で呼吸不全や心疾患によって亡くなることが多いという。

 人工呼吸については、QOLを重んじる欧米ではNPPVが主流だが、日本では普及が進んでいない。気管切開に比べて医療者の技術習得が必要な上に、診療報酬の点数が低く病院の収入にならないことなどが背景にあるとされる。

 日本におけるNPPVの第一人者で知られ、シンポジウムでも登壇する国立病院機構八雲病院(北海道八雲町)の石川悠加(ゆか)診療部長は「筋ジストロフィーの患者を診る機会が少ない医師には、気管切開が当然だという思い込みもあるだろう。ただ本当に必要かどうかは、整理して対応すべきだ」と話している。

最終更新:4/18(木) 10:51
産経新聞

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