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「球が止まって見えた」40年前の決勝 元卓球世界王者・小野誠治さん

4/17(水) 7:08配信

時事通信

初陣で中国選手4人を連破

 卓球の世界選手権が21日にブダペストで開幕する。日本選手のシングルス優勝は1979年平壌大会男子の小野誠治さん(62)が最後だが、今大会は40年ぶりの快挙が期待される。開幕前、小野さんに当時を振り返り、今大会への期待を語ってもらった。

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 優勝から40年が経った今、小野さんは新しい日本人世界チャンピオン誕生を心待ちにしている。「いろんな大会で中国選手に勝って、少しずつでも差は詰まっていると感じられる。今回は今までにない楽しみがあります」と柔らかな笑みを浮かべる。
 79年大会当時、小野さんは22歳。左ペンホルダーのドライブマンで、長いリーチと速いスイングからの「カミソリスマッシュ」が武器だったが、世界選手権は初出場で、優勝など全く頭になかった。だが、4回戦から黄亮、魯尭華、梁戈亮、郭躍華と立て続けに中国の強豪選手を破り頂点に立った。「間にヨーロッパの選手が入っていれば球質、戦術が違ってくるので、今思えば中国選手が4人連続というのが良い形だったのかもしれない」と思い起こす。
 最大のヤマは梁戈亮との準決勝だった。2―2で迎えた第5ゲーム(当時は1ゲーム21点制、5ゲームマッチ)。劣勢に立たされベンチを振り向くと近畿大の先輩、高島規郎さんから無言のメッセージがあった。「もっと打ちなさいというアイコンタクトだった」と小野さん。それまで相手に強く返させないサービスを出していたが、あえて打たせるようなサービスを出し、カウンター気味に返す戦術に変えて逆転の糸口をつかんだ。
 「相手に打たせた球を打ち返すのは勇気がいるけど、そうしない限りあの局面は乗り切れなかった。高島さんのアドバイスがなければ銅メダルで終わっていた」。信頼できる先輩の存在と勇気ある決断が勝利を呼び込んだ。
 続く決勝では卓球人生で一度だけの経験をした。大観衆の中での試合にもかかわらず感覚が研ぎ澄まされ、自分と相手の打つボールの音以外は何も聞こえなかった。いわゆるゾーンに入った状態だ。
 「ボールが止まって行き来しているような不思議な感覚」で、「ひらめいたらこれ、ひらめいたらこれ、という感じ」。全てが思い通りにうまくいった。「今、ビデオで(当時の試合を)見て、こんなことできるはずがないと思う」と自分の姿に驚いている。

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最終更新:4/17(水) 10:36
時事通信

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