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【スポーツコラム】「さすが」?それとも「ならでは」? ~タイガー・ウッズの視線はプライスレス~

4/17(水) 7:32配信

時事通信

 米ゴルフ界は今年から新しい日程で動いており、米ツアーが旗印に掲げるビッグ大会、プレーヤーズ選手権は従来の5月から3月へ前倒しで開催された。

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 日程が変わったことで、これまで現地観戦がかなわなかった全米各地の大学生たちが春休みを利用して開催地フロリダへ足を運べるようになった。米ツアーはすかさず大学生向けのディスカウント料金を設定し、新たな観客層獲得のための努力を惜しまなかった。

 そんなふうに、それぞれの事情と都合によって素早くアクションを起こすあたりは、「さすが、米国だな」と感心させられた。

 しかし、今年、同大会を訪れた大学生の中には、春休みとディスカウント料金の活用にとどまらず、大きな満足感に浸るに至ったすごい大学生がいた。

 2017年5月にタイガー・ウッズが薬物の影響下で車を運転して逮捕された際、うつろな目をしたウッズの顔写真が世の中に出回ったことは、皆さんも記憶されていることだろう。

 あろうことか、ウッズのあの顔写真を胸の真ん中にプリントしたTシャツを着て、プレーヤーズ選手権会場のTPCソーグラスにやって来た米国人大学生がいた。ウィスコンシン大学の3年生、トーマス・ウエスリング君だ。

 「僕はタイガー・ウッズの大ファンなんです」

 昨年9月の米ツアー最終戦、ツアー選手権でウッズが復活優勝を遂げたときも、ウエスリング君は現地でその勝利を見守っていたという。

 「きょうは、そのとき20ドルで買ったTシャツを、あえて着て来ました」

 Tシャツの真ん中には、ウッズ逮捕時のあの顔写真がドカンとプリントされていた。

ついに、ウッズが来た

 なぜ、大ファンなのに、わざわざそんなTシャツに身を包んで来たのか。そう問われたウエスリング君の返答はこうだった。

 「もしも、タイガーの視線をもらい、リアクションがもらえたら、僕にとって、それはプライスレス。お金では決して買うことのできない、かけがえのない体験になるからです」

 視線をもらえたからといって、物理的にどうするわけでも、どうなるわけでもないという。いわば、ウエスリング君が自分で自分に課した課題のようなもの。うまくいったら記念になるし、うれしいということ。要するに、ウエスリング君の自己満足のための挑戦だった。

 大会最終日。17番グリーンを終えたウッズが18番のティーグラウンドへ向かって歩いていくはずの小道のロープ際に、ウエスリング君は胸を高鳴らせながら立っていた。

 ついに、ウッズが近付いて来た。

 「タイガー! ヘイ、タイガー!」

 ウッズは、大声でそう呼び掛けたウエスリング君のそばを通り過ぎる際、彼のTシャツにちらっと視線を向け、思わずうつ向き加減に苦笑した。

 「ヘイ! 見たぞ! 見たよね!?」

 興奮しながら、そう叫んだウエスリング君のこの言葉にちょっと解説を加えると、「タイガー、今、クスッと笑ったところを僕は見たぞ。タイガー、今、僕のこのTシャツを確実に見たよね?」となる。

 自らの課題を見事にクリアしたウエスリング君は「Tシャツ代に支払った20ドルは僕の生涯で最もお買い得のベスト20ドルになりました」と大満足の笑顔を輝かせていた。

 それにしても、ウッズ逮捕時の顔写真をプリントしたTシャツを作る業者もいれば、それを購入するファンもおり、あえてそれを着てウッズに見せ、反応を得ることにチャレンジする人もいるというあたりは、お国柄の違いと言うべきか? それともユーモア? ジョーク? これも個性?

 何と表現すべきか難しいのだが、その場に笑いが起こっていたことは事実。これも「さすが」かどうかはさておき、米国ならではの現象だと思わずにはいられない。

(ゴルフジャーナリスト・舩越 園子)

〔時事通信社「金融財政ビジネス」より〕

最終更新:4/17(水) 7:32
時事通信

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