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『シンカリオン』×『スパロボ』鼎談!改めて考えるロボットアニメの面白さと『シンカリオン』の重要性

4/17(水) 11:30配信

電ファミニコゲーマー

 2018年1月からスタートしたTVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』が放送2年目に突入した。とりわけ事前に注目されていた作品ではなかったが、放送が始まった直後から、今どき珍しいオーソドックスなロボットアニメとして、幅広い層から注目を集めた。

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 また、主人公・速杉ハヤトのマニアック過ぎる鉄オタトークも話題を呼ぶことになった。ハヤト語る鉄道ウンチクは、本作が新幹線をメインに据えた理由が感じられるほどの説得力があり、こちらも作品の“本気”を感じさせる大きな要素となった。

 そして本気といえば、多くのファンを驚かせたのが、500系新幹線が『新世紀エヴァンゲリオン』とコラボした「500 TYPE EVA」の登場と、シンカリオンへの変形。TV放送時には、BGMにも『エヴァ』オリジナルの楽曲が用いられ、大きな話題を呼んだ。

 そしてなにより『シンカリオン』が魅力なのは、人と人とを繋ぐ“鉄道”をモチーフに、仲間どうしが、そして敵キトラルザスと自分たちが繋がれていく様子を丁寧に描いているからだ。

 このような『シンカリオン』はどのように生まれたのか。それはロボットアニメというジャンルにおいてどんな位置を占めているのか。
  また今回は、本作からロボットアニメの未来にも迫る。

 そこで、企画から携わる小学館ミュージック&デジタル エンタテイメントの山野井創プロデューサー、3DCGシーンの演出を手がける大畑晃一氏、様々なロボット作品のクロスオーバーを実現させている『スーパーロボット大戦』寺田貴信プロデューサーをお招きし、『シンカリオン』とロボットアニメを軸に、それぞれの視点から存分に語り合ってもらった。

文/藤津亮太
編集/クリモトコウダイ
撮影/増田雄介

■『シンカリオン』を『スパロボ』で扱うのは難しい

──今回はTVアニメ『新幹線変形ロボシンカリオン』(以下、シンカリオン)×『スーパーロボット大戦』(以下、スパロボ)ということで……まずは皆さんが気になっていることを最初に聞いておこうと思います。
 ずばり、『スパロボ』に『シンカリオン』は参戦するのでしょうか。また、『スパロボ』作品として見た『シンカリオン』はどのような作品でしょうか。

寺田氏:
 これに関しては「出る」とも「出ない」とも言えませんが、仮に出るなら……という仮定のうえでお話しますと、僕らとしても、昨今1年50話以上続くロボットアニメというのは非常に貴重な存在です。

 まだちゃんと観ていなくて「子ども向けなのでは?」と思っている人もいるとは思いますが、そういう人にも「シンカリオン 500 TYPE EVA」の存在は届いていたりするので、すごくよいコンテンツに育っているということを感じています。

 実際、『スパロボ』の収録をしていると声優さんから、「今後『シンカリオン』は登場するんですか?」なんて聞かれることもありました。

 ただ、『シンカリオン』は『スパロボ』で扱うのは難しいタイトルだといえます。『シンカリオン』は日本の新幹線ありきの物語なので、未来世界の宇宙などで戦っていいのかどうか。

 あと、ロボットがたくさん出て来て、色々と合体するロボットなので、戦闘アニメーションを作るのが大変そうですね。

──なるほど。さて、そんな『シンカリオン』ですが、まずはその概要から入って行ければと思います。
 本作のような企画は、玩具中心の企画としてスタートすることが多いように思いますが、そもそもどういった経緯で誕生したんでしょうか。

山野井氏:
 まず、2013年に弊社のデザイナーが描いたロボがあり、親会社の小学館集英社プロダクション経由でジェイアール東日本企画さんに相談し、JR東日本さんからの許諾を取りに行ったところ、OKをもらうことができたんです。

 そこから改めて「企画としてやりましょう」と動き出したのが、今の『シンカリオン』です。

 だからプロジェクトの初期段階に関しては、タカラトミーさんは全く関わっていないんですよ。タカラトミーさん的にはJR東日本さんのOKが出たので「え!? 新幹線ってロボにしていいんですか!?」という形で、後から参加が決まったというのが経緯なんです。

──そうなんですね。そして2018年1月にTVアニメがスタートするわけですが……企画の立ち上げからかなり時間が空いていますね。

山野井氏:
 最初に弊社が作ったロボットのデザインは、変形や玩具化するという前提がなくて、絵としての格好良さ優先で描いたものでした。

 だから変形機構もまったく考えられていなくて。それでは商品化ができないという問題があるので、リデザイン作業を始めたのですが、それに約1年かかって。

 そこからPVを作りはじめ、さらに2年かかって、ようやくアニメ化にこぎ着けたという感じです。

寺田氏:
 何かのショーで、今の『シンカリオン』と全然違うものを見た記憶があるんですよ。「Project E5」という名前で。僕はそれが最初に見たものですね。

山野井氏:
 それは2014年の「東京おもちゃショー」ですね。その「E5」が弊社デザインのものです。

寺田氏:
 新幹線をモチーフにしたロボットというと、『超特急ヒカリアン』(1997年)があったし、サンライズさんの勇者シリーズでも新幹線を組み込んだ機体がありますから、前例は存在しているんですよね。

 でも、現実世界でレールの上を走っている新幹線をロボットに変形させる点に驚きました。

 そのショーの次に僕が『シンカリオン』を見たのは、タカラトミーさんの玩具販促用DVDですね。僕は「プラレールアドバンス」が好きで商品を買っていて、お店でもらいました。

 そこに『シンカリオン』のプロモーション映像も入っており、土偶型の敵と戦っていて、「え? これはどういう世界観?」と思ったのを覚えています(笑)。

 確か地下でライトアップされた『シンカリオン』が登場するシーンもありました。でも、キャラは出ていなかったですよね?

山野井氏:
 当時は企画自体がどういう方向に振られるかまだ分からないので。いっさい人間キャラクターを出さず、イメージが固定化されるのを避けていました。

寺田氏:
 なるほど。あとは駅のポスターか何かで見ました。

山野井氏:
 その頃は「現状から一足飛びにアニメは無理だろう」とみんな思っていましたね。しかも、今の時代にロボットだけで勝負しても、ビジネス的にはなかなか戦えないというのも事実なわけで。

 だから、一旦「90秒のPVをシンカリオンごとに詳細を作って流す」というのが当初のプロジェクトの流れでした。

 その前に、うちは『テンカイナイト』という作品をやった経験があり、やはり作品は積み重ねてやっていかないと駄目だという実感もあったので、そうやって地道にキャラクターを展開していくことからスタートしていったんです。

 ただそのときも、JR東日本さんのオフィシャルの許諾がとれたことがとても大きかったです。そのおかげで、東京駅や幕張駅などの広告スペースに、ポスターを貼っていいということになって。

 当時はプロジェクトもそんなに予算がなかったので、内輪でデザイン制作などをして。みんなで作っているという感じでした。

──そうやって蒔いた種が、ちょっとずつ大きくなってアニメにつながったわけですね。

山野井氏:
 種を蒔いて、みんなで肥料をやったり水をやったりという期間が、おおよそ2年半くらいあったという感じです。

■寺田氏から見た『シンカリオン』とJR各社ごとレギュレーションとは

──先ほど寺田さんには「『スパロボ』作品として見た『シンカリオン』はどうか」という質問をしましたが、いちロボット作品と見た場合はいかがでしょうか。

寺田氏:
 まず言えることは、分かりやすいということですよね。

 変形前の実物が実際に見られるロボットアニメって実はそんなにないですから。

 あと、アニメになって明らかになったこととして、舞台も現実に存在する場所を使っているんですよ。

 たとえば主人公のハヤトが所属する新幹線超進化研究所・東日本指令室大宮支部は、埼玉県の鉄道博物館の地下にあるという設定になっている。これも視聴者にとっては楽しい設定ですよね。

 あと、ロボットは顔で識別することが多いのですが、シンカリオンは胴体の形状とボディーカラーで判別がつくというのも特徴的です。これも新幹線を題材にしているからこそだなと。

 3DCGキャラクターは走らせるアクションに手間がかかるにもかかわらず、なかなか空を飛ばず、陸上戦中心で進むのも印象的でした。こんなにロボットが走り回るアニメは『戦闘メカ ザブングル』くらいじゃないかって (笑)。

大畑氏:
 (笑)。

寺田氏:
あと、観ていると「捕縛フィールドを発生させる人工衛星が一番の弱点なのでは?」とかも考えちゃいますね(笑)。

山野井氏:
 そこは本読み(脚本打合せ)でも話が出ます(笑)。だからこそ敵のキトラルザスは地の底に住む種族にしているところがあって、地底人だからあまり空の上まで意識がいっていないんだろうと。

 シンカリオンの飛行については、最初にJR東日本さんから「空は飛ばせないでほしい」と言われたんです。「新幹線はレールの上を走るものだから」と。

 それはごもっともなお話なので、こちらとしては「ならジャンプはよいですよね」という形でアクションの幅を確保するようにしました。

 ただ面白いのは、JR各社さんでスタンスが違うんです。たとえばJR九州さんは飛行OKだったり。
 だから「シンカリオン 800つばめ」は飛行できるという設定になっている。

 新幹線を持つJR5社が、みなさんそれぞれのスタンスをお持ちなので、シンカリオンごとにやっていいこと/やっていけないことのレギュレーションが違うという。

 そのあたりは、普通のロボットアニメとは違う、いろいろな制約があって、PVの頃からそこを踏まえていろいろ作ってきました。

──具体的にはどんな縛りがあるのでしょうか。

山野井氏:
 たとえば、シンカリオンは現場急行するにしても、制限速度の中でしか急行できないんです。

 たとえシンカリオンであっても制限速度以上は走ってはいけないのである、と。だから北海道に行くときも4時間以上かかるわけです。

 JRさんから特に言われているのは、現実にある場所を扱う以上、そのあたりのルールはきっちり守ってほしいということです。たとえば、シンカリオンは線路上では変形してはいけないんです。

 なぜかというと、変形したら架線に引っ掛かって危ないし、ほかの新幹線の邪魔にもなるわけで。あるいはPVのときに、シンカリオンが海岸線を走る映像を作ったら、「その新幹線は海沿いを走りません」という指摘を受けたこともあります。

 そうやって、気になる部分を問題ない形で落とし込んでいったら、結果ものすごく地に足がついたアニメになりましたね。

寺田氏:
 でも、そこが全然欠点に見えていないのがいいところですね。

大畑氏:
 昔からそうですけど、やりにくいとか面倒くさいことをやることで、新しさが出るとかあるんですよ。

山野井氏:
 そういう意味でいうと、『シンカリオン』の本当の限界点は、現在走っている新幹線の種類以上にシンカリオンを登場させることができないというところかもしれません(笑)。

■最近はロボットアニメをやりたい人たちがいないらしい

寺田氏:
 『シンカリオン』は3DCGパートが結構多いと思うのですが、そのあたりはどうなんでしょうか?

山野井氏:
 基本は、予算との兼ね合いで「1話あたり4分目安」で考えています。ただ、会社的なことをいうと、CG屋さんとして『シンカリオン』には賭けている部分がありました。

 そこで、取締役を含めて上のほうからは「最初の1クールは3DCGシーンの尺については目をつぶれ」と言われていたので、そこまで尺については厳密なものでもなかったです。
 結果、1クール目終わった時点で、3DCGシーンが平均5分くらいになっていたんです。

 しかも2クール目に入ったら400秒、6分強という回も出てきた。それでこのあたりが限度だと。
 それでそこから改めてグッと3DCGシーンを圧縮していって、本来の平均4分の枠内に収めていくようにしました。

大畑氏:
 最初の頃は戦闘シーンが“Aパートで1回、Bパートで1回入る”というパターンが多かったですよね。

 それが途中から、まずはハヤトたちが、ご飯を食べたり遊びにいったりする日常パートから入るようになって、そこにピッと呼び出しが入って、「ここからバトルタイムです」となるパターンになってきた。

山野井氏:
 考え方からすると、戦隊もののフォーマットに近いです。

 もちろん各話それぞれにメリハリはあっていいので、時々重たい戦闘シーンが入るのはいいのですが、毎回そうなってしまうとメリハリも効かなくなってしまいますし。

 そういう意味では3クール目から、そういう塩梅の調整を池添監督と脚本の下山さんがコントロールしてくれました。

 3DCGカットでひとつ補足しておくと、普通にご覧になっている方は忘れがちかもしれませんが、ただ走っているだけの新幹線も3DCGの尺にカウントされるんです。アクションシーンだけではありません。

 あと、アクションに頼って盛り上げようということになると、3DCGシーンがどうしても増えがちということもありました。しっかり脚本の段階で、お話に牽引力を持たせることが“3DCGシーンの尺を抑えることにも繋がる”ということです。

 この点は、シリーズ構成の下山健人さんたち脚本チームにはすごくお願いしたところです。

──3DCGシーンはそうやって作られているんですね。では、3DCGシーンの中でうまくいったシーンや、逆に苦労したシーンはどこでしょうか。

大畑氏:
 うーん、苦労した、ですか……。今が一番苦労しているところで(笑)。

 ちょうど大きなエピソードの区切りのところの、ずっと戦ってきたキトラルザスとの決着がつく第64話をやっています。先日発表になりましたけれど「E5はやぶさ MkⅡ」という新しい機体が出てくるので、そこはちょっと楽しみにしてもらってもいいかなと思います。

寺田氏:
 「E5はやぶさ MkⅡ」は日本刀っぽいもの持っていましたね(笑)。これは映えるなあと。

 シンカリオンは得物でいうと剣(E5はやぶさ)、ライフル(E6こまち)、ドリル(E7かがやき)の順番で出てきて、さらに忍者(E3つばさ)もいたなと。

 僕ら世代だと、ゲッターロボのパターンで考えてしまうので、2号機的なスタンスの機体がドリルのほうが納得いくなとか思ったりしました。

大畑氏:
 (笑)。

山野井氏:
 各シンカリオンの個性は、ロボットアニメのお約束というより、路線の個性に寄っています。

 なので、デザイン作る際、秋田新幹線の「E6こまち」であれば、まず「なまはげ」と「マタギ」というお題があるんです。そこからライフルという小道具が出てきたんです。

 「E7かがやき」の場合も、飯山トンネルという大きなトンネルがあることからドリルが決まり、JR東日本の、新幹線の中で一番パワーがあるということを踏まえてキャタピラを装備させています。
 もともとのコンセプトは「相撲取り」でしたが、それをブレイクダウンするうちに今のような形に。

 ちなみにシンカリオンの特徴のひとつは、そういう武器のネーミングが「カイサツソード」「フミキリガン」「シャリンドリル」といった具合に、結構バカバカしい名前になっているところです。

──それは、なにか狙いがあるんですか?

山野井氏:
 『シンカリオン』のターゲットはまず小学生男子ですが、そこにウケるための大事な要素として、ダサい感じのフックが必要なんです。

 “ダサパウダーを振りかける”といいますか。新幹線そのものはかっこいいものなので、いじりづらいのですが、手に持っている武器はあえてちょっとダサいネーミングにしていこうと。

寺田氏:
 『秘密戦隊ゴレンジャー』なども、そういうところがありますよね。敵の怪人もユニークなのが多いし、親戚の子どもに観せたら、必殺技のゴレンジャーストーム(ラグビーボールをパスして、最後に敵怪人に蹴り込む)もバカウケで。

 平成の『仮面ライダー』も最終フォーム的なものは、かなり大胆なスタイルになっていたりしますけど、やっぱりそういうのが子どもにウケたりするんですよね。

山野井氏:
 そういう部分は子ども向け番組であれば、忘れてはいけないことだと思っています。

 自分としても、「うんこちんちん」で笑っていた頃のマインドを思い出しつつ(笑)、やっているところはありますね。まあ、とはいえ『シンカリオン』では「うんこちんちん」的な方向はできませんが。

──また、シンカリオンと戦う巨大怪物体もさまざまなタイプが登場します。3DCGキャラクターなので、もうちょっと使い回しされるのかなと思っていたのですが。

山野井氏:
 最初に、巨大怪物体をどれくらい出せるかを考えました。

 そのときに、1年のシリーズでエピソードが50本もあるのに、敵が10体しか登場しないということはありえないだろう、そこはそれなりの数が必要だよね、と。

 うちでは『デュエルマスターズ』というカードゲームアニメも担当していますが、そこでは年間に120体くらいクリーチャーを出しています。

 しかも、そのうち100体くらいはほぼ使い切りです。だから巨大怪物体についても、登場が1回きりということには抵抗はありませんでした。

──3DCGの話題ですので、大畑さんについてもいろいろと伺いたいのですが、大畑さんはメカデザイナーや監督として大畑さんの名前を覚えているファンも多いと思います。CG演出という肩書は初めてですよね?

大畑氏:
 そうですね。私は、元々メカデザイナーという仕事からこの業界に入りまして、メカデザインの仕事から広がっていく形で、メカシーンやアクションシーンも演出できるのではないかということで、監督も手がけることになりました。

 1980年代半ばから1990年代初頭はまだOVA(オリジナルビデオ)も多く作られていて、メカキャラクターに特化したジャンルだと、しれっと監督になって好きなことができたということがありました。

 そういうどさくさに紛れて監督になれる時代だったんです(笑)。『装鬼兵MDガイスト』はそうして生まれた作品でした。

寺田氏:
 『MDガイスト』は、すごくカロリーの高い作画をやっていましたよね。当時「TVアニメと比べてOVAのほうが、作画レベルがずっと高いな」と思った記憶があります。

大畑氏:
 ありがとうございます。自分はアニメブームの最盛期のお尻のほうから仕事をスタートしたので、いろんなフラストレーションがありまして、『ガイスト』はそのフラストレーションによって作られた作品ですね(笑)。

寺田氏:
 (笑)。

大畑氏:
 自分は、もともとメカデザイナーになりたいとか、アニメーションの監督になりたいとか、そんなに確たる目標はありませんでした。

 ただ、東京で映像やイラスト、デザイン関係の仕事がしたいという気持ちだけで業界に入って、やりながらいろんなことに興味を持っていくようになった感じで。

 なので監督業も、改めて声がかからなければ、またメカデザイナー専業に戻っていたと思います。でも幸い、監督業のほうも定期的にお声がけいただいてきたので、これまで続いてきた感じです。

 ただ、絵コンテでいろんな作品に参加したことはあっても、演出として参加するのは『シンカリオン』が初めてで、当然クレジットに恥じない仕事をしないといけないということは強く思いました。

──3DCGシーンのチェックが主な仕事ということでしたが、具体的にはどういう形でお仕事をされているのでしょうか。エンディングクレジットをみると絵コンテに連名で名前が出ていることも多いですよね。

大畑氏:
 『シンカリオン』では第7話の3DCGパートの絵コンテが最初の仕事でして、「後続で上がってきた絵コンテにも少し手を入れてほしい」となり、第4話と第5話の3DCGパートの絵コンテについて少し手を入れさせてもらって。だからクレジット的には第4話から参加した……ということになると思います。

 ただ、その頃はまだ“お客さん”的な立場で、自分自身も全体の制作体制を把握するのにとまどっていた時期でしたね。その後、1クールを過ぎた頃になってようやく自分の役割がハッキリしてきたかなという感じでした。

 制作側も「呼んだはいいけど、コイツをどう使うんだ」というのは皆さん悩まれたんじゃないかと思います(笑)。

 池添監督が元々CGアニメーションの演出もやられていた方で、たとえば第1話、第2話は最初から参加していたメインのスタッフで3DCGシーンが作られているんです。

 ただ、毎週作るとなると物量的に大変ということで、だんだん3DCGシーン関係のチェックをこちらで専門に受け持つようになっていきました。

──なるほど。

大畑氏:
 池添監督からまず言われたのは、「ロボットの戦闘シーンで、なにかアイデアがあれば協力してほしい」ということでした。そういうことであれば自分のフィールドだから、絵コンテもお手伝いしますよ、と。

 そうすると「最近はロボットアニメをやりたい人たちがいないらしい」という話が聞こえてくるんです。ロボットアニメの絵コンテも、めんどくさくて大変だから、やりたくないと。

 私としたら「えっ?」という感じですけど(笑)。それで戦闘シーンの絵コンテが、最初から私のほうに振られることが多くなってきたんです。

 とはいえ、もちろん戦闘シーンの絵コンテを描いていただいている方も多くいらっしゃいます。

 なので、そこは全体の統一感をとるために、ある程度のパターンの中に収めるように手を加えつつ、状況を見て、「少し違いを出してみよう」とか「変わったことができるな」というときには、池添監督にアイデアを提案して修正をすることもあります。

 あとは、それがうまく3DCGの映像になっているかどうかをチェックする。それが今の『シンカリオン』における仕事の全容ですね。

 だから、全くタッチしていない回もありますし、逆にかなり修正をしたという回もあります。どうにかこうにかおかげ様で評価をいただいているので、このままテンションが落ちないよう、最後まで走り抜けたいと思っていますね。

──シンカリオンは、胸も肩も張り出しているデザインなので、アクションをさせるといろいろなところが干渉しそうに思うのですが、そういった苦労はありますか?

大畑氏:
 デザインだけ見ていれば確かにそうですが、アクションのときは人間の動体視力で判断できないレベルで相当ごまかしを入れています。

 これはすべての3DCGキャラクターにいえることでもあって、早い動きのときはそれほど気にはならないんです。

 もっといえば、人間が作画をしている2Dアニメでも、ロボットはデフォルメしたりパーツを付け加えたりして、ある意味ごまかしてかっこよくしている画面も多いですから(笑)、そのあたりは似たようなものかなと思います。

 むしろ困ったのは、バトルフィールドがひとつしかないし、しかも、外では戦わないという縛りですね。あと、シンカリオン自体を戦いの中で壊すのも難しい。

 普通にメカアクションを演出しようとしたときに、「これでどうやっておもしろくするんですか?」というような制約があって、そこは最初の段階でなかなか飲み込めませんでした。

 こんな不自由なところで自分の持っているものが出せるのかと不安にも思ったりして、慣れるまではやっぱり時間がかかりましたね。1カ月くらいでなんとか慣れましたけれど。

■改めて考えるロボットの面白さ

──ここからはロボットの面白さについて掘り下げていこうと思います。大畑さん自身は、今回『シンカリオン』のアクション演出に関わって、ロボットの面白さを改めて感じたことはありますか?

大畑氏:
 私の世代の人たちは、高度成長期の真っ只中に生まれて、物心ついたらロボットがいて特撮ヒーローがいて、という環境に育ってきました。その頃は、そういう賑やかな時代でしたね。

 なので私の年齢的にいうと、ロボットアクション、ヒーローアクションについては50年くらいの経験値があるわけですよ(笑)。そうやって触れてきた作品の中には『マジンガーZ』『ガンダム』『ゴジラ』『ウルトラマン』といった作品もあって、子ども時代は、そういう作品に触発されていたからこそ、想像の世界で楽しむことができました。

 『シンカリオン』に参加するにあたっては、今放送を観ている子どもたちに、自分が体験したような「楽しみ」をちゃんとサービスしてあげられたら、という気持ちで取り組みました。

 だから、自分にとってロボットアニメの魅力ということを考えると、「子どもたちのヒーローへのあこがれや正義に対しての思いを受け止める存在であること」というのが、まずあります。
 そしてその上で、バトルや操縦の快楽という部分を満たしてあげるために、ロボットがあるのではないかと思います。

──では、寺田さんが考えるロボットの魅力とはなんでしょうか。

寺田氏:
 日本人って、大仏とかデカいものが好きですよね。だからまず、“大きな人型”に対しての憧れがあって、それがロボットの魅力の根源なんでしょうね。1分の1のガンダムを見たときにはやっぱり、「おお」と思いますからね。もっとも、アニメから想像していた感じからすると、周辺の建築物と比べて意外に小さいなと思いましたけれど。

一同:
 (笑)。

寺田氏:
 僕が子どもの頃と比べると、ビルとクリーチャーやロボットのサイズ感は大きく変わっています。それでも巨大な人型への憧れはまだちゃんと残っていますよね。逆にいうと、だからこそゴジラはビルに負けないように巨大化して『シン・ゴジラ』は118.5メートルと、初代『ゴジラ』に比べて倍以上の大きさになっている。

 自分自身のロボット体験も、大畑さんとだいたい同じような感じで、『マジンガーZ』から入って、その後『ガンダム』『マクロス』など、いろいろ観てきました。

 さらに『ウルトラマン』などの巨大ヒーローも見ていたわけですが、いずれの作品も「正義」なりなんなり、いろいろ大事なテーマを扱ってはいますが、やはりその魅力の一番は「大きな人型」にあって、それがかっこいいということに尽きると思います。

 これは根源的な感覚というか、未だにスーパー戦隊シリーズのロボットが子どもにとって好まれて、定番作品になっているということと深く関係があると思います。

 そういう意味で『シンカリオン』は、子どものストレートな憧れの存在をロボットに直結させているのがすごいコンテンツだな、と。まあ、僕の年齢からすると、新幹線といえばまず「0系」なので、「『0系』出てこないなぁ」と思いながら観ていますが(笑)。

山野井氏:
 (笑)。

──寺田さんは、『マジンガーZ』のどのあたりに魅力的を感じましたか?

寺田氏:
 マジンガーZが硬いところですね。素材である「超合金Z」が、とにかく強いと。

 あとは、“人が乗らないと動かない”というところも大きかったです。巨大ロボットアニメの先駆者である『鉄人28号』はリモコンによる遠隔操作だったのに対して、『マジンガーZ』は兜 甲児がホバーパイルダーに乗り込んで、ドッキングして操縦する。

 人の心がパイルダーオンすることで、神にも悪魔にもなれる──これは漫画版の話ではありますが──というところが大きかったです。

 しかも序盤で、「兜 甲児をどうにかしてしまえば、マジンガーZは無力化できる」みたいな話をやっていて、そこもすごかったですね。

──大畑さんにとって「原点」となったロボットは何でしたか?

大畑氏:
 漫画のほうになりますが、『ゲッターロボ』という漫画が(笑)。石川 賢さんが描いた『少年サンデー』連載の漫画版ですが、あれに勝るロボットものはないというか。

 もちろん、こういうことを言うと、文句をいう人がいっぱいいると思うんですけど(笑)。子どもの頃に最初に何を見たか、刷り込みですよね。一番やばいの見ちゃったなと(笑)。

寺田氏:
 『ゲッターロボ』と『デビルマン』はアニメと漫画が違い過ぎるほど違いますからね(笑)。

大畑氏:
 石川 賢版の『ゲッターロボ』が描いているのは、「巨大ロボットというのは、死ぬ気で乗らなければいけないもの」だということなんです(笑)。

 死ぬ気で戦って、例え死んだとしても動かして敵を倒さなければいけない……そんなテンションの漫画でした。もっとも、後半になるにつれてだんだん子ども向けになっていきましたが、最初はホントにすごかったですね。

 アニメの『ゲッターロボ』もチラチラ観ていましたけど、やっぱり漫画のほうにどうしても惹かれていましたね。

 そういえば『マジンガーZ』も、僕はやはり漫画から入っているんです。それで、アニメが始まったときにリアルタイムで観たのですが、「漫画と違うなあ」という印象があって。
 子どもですから、そういうところは融通が利かないというか(笑)。そこは子どもの頃からオタクっぽかったんですね。

 ただ、今のようにスマホもないしネットもなくて、遊びが少なかった時代ですよね。

 1週間に1回TVが放映されて、漫画誌で追いかけるという時代でしたから、その一週間の間が本当に退屈で退屈で。
 それで、その間に何をしたかというと、自分なりにいろいろ考えたり妄想したりして、今でいう二次創作じゃないですけれども、漫画を描くんです。

 『マジンガーZ』や『ゲッターロボ』とか、他の会社のロボットも含めて版権を無視して自分で勝手に漫画を描いて遊んでいました(笑)。

 結局、子ども時代の自分の脳内には『ゴジラ』も『ウルトラマン』も『マジンガーZ』も同じ世界のものとして存在していたんです。

──大畑さんは『マジンガーZ』についてはどう思いましたか。

大畑氏:
 巨大ロボットというと、『鉄人28号』まで遡らなくても、実写特撮でやはり遠隔操作型の『ジャイアントロボ』もありました。

 ただそれと比べても、思った通りに動かせるだけでなく、乗り込んで触って一体化するという感覚がある『マジンガーZ』は魅力がありました。

 その一体化の感覚は、コクピット操縦型のロボットものの一番の魅力の部分だと思います。ドラマを創る上では、メリット・デメリットがあると思いますが、最初に物心ついたときから、そういうものが好きで、それは今も続いている気がします。

寺田氏:
 魅力というとカッコよさだけでなくって、バカバカしさというか、首をかしげるようなシチュエーションも魅力のひとつになるんですよね。

 『ゲッターロボ』のゲッター1をみると、TVアニメ版の「ゲッターウィング」というまっすぐ鉄板状の翼が背中から伸びるのですが、漫画版はヒラヒラとしていて完全にマントとして描かれていて。子ども心に、「このゲッターウィングは何でできているんだ……」と頭をひねったことを覚えています(笑)。

大畑氏:
 ロボットに乗り込んだら、鼻血吹いたり、ゲロ吐いたりすることも、カッコよさかというとちょっと違いますね(笑)。ただ、それによって“ロボットは死ぬ気で乗らないといけない”という、刷り込みがされたわけで。

山野井氏:
 それは“乗り物酔いするくらい、激しい乗り物”ということですか? 僕は全然世代ではないので……すみません。

寺田氏:
 漫画版の話ですけど、ゲッターロボはパイロットにかかる負荷が凄いので強靭な肉体と精神力を持っているヤツじゃないと乗れないんです。パイロットを見つけるまで300人以上が脱落しているという。

山野井氏:
 なるほど、それはすごい設定だ……。

大畑氏:
 だから、漫画はパイロットを探すところから始めるんですよ。天才科学者と言われた早乙女博士が、主人公の流 竜馬がパイロットに向いているかどうかを確かめるために殺し屋を差し向けるという。

 石川 賢先生のファンはみんな分かっていますが、どの作品もヤクザ・テイスト、『仁義なき戦い』みたいなテイストで作られていますから。そういうものを小学生のときに読んでしまったら、影響を受けざるを得ない。

寺田氏:
 3人いるゲッターチームのうちのひとり・神 隼人も、クールでニヒルなキャラクターとして知られていますが、漫画版での初登場時は全然違いますからね。

大畑氏:
 違いますね(笑)。

寺田氏:
 もう表情というか、目からしてキレキレですからね。

大畑氏:
 永井先生が描かれている『激マン! マジンガーZ編』という回想録漫画がありますが、それを読むと、『マジンガーZ』のエピソードの中に並行して『ゲッターロボ』の企画も進んでいる風景が描かれているんですよ。

 『ゲッターロボ』の漫画は、企画のアイデアは永井 豪先生だけれど、実際に漫画を描くのは石川先生に決まる。ところが石川先生がなかなか描けずに苦労している、と。

 それはなぜかというと、漫画の作中では、石川先生が「流 竜馬がサッカー部のキャプテンでは健全すぎて描けない」と悩んでいるからで(笑)。

そうしたら永井先生が、「変えてもいいよ」と。「俺も『デビルマン』で変えちゃったから、いいんじゃない」(笑)。

 それで石川先生のほうから、流 竜馬は空手の達人というアイデアが出てくるんです。

 これが本当なのか、漫画用の創作なのかはわかりませんが、これを読んだとき、何十年目かにして、すごく納得がいったんです(笑)。確かに石川先生からしたら、サッカーは健全過ぎただろうなと (笑)。

──山野井さんのロボットアニメ体験はどんな感じでしょうか?

山野井氏:
 いやー、正直僕自身はアニメをあまり観ない人なのですが……。記憶に残っている限りで言うと、一番古いのは『機甲戦記ドラグナー』ですね。プラモデルも買いました。そこから次は『機動警察パトレイバー』。TVアニメの後に映画を観て、その後にOVAを観る、という順番でした。

 あとは『機動戦士ガンダム』ですね。私は本放送オンエアの世代じゃないので、朝の時間帯で再放送していたときに、断片的に観て。
 そこで触れつつ、情報として知っているという感じですね。

■『スパロボ』が紡いだキャラクターの命脈と変化

──今、「本放送世代ではないけれど、再放送でその作品に触れた」というお話がありました。再放送がほとんどない現在、ロボットに関しては『スーパーロボット大戦』のシリーズがキャラクターの命脈を繋いだ側面もあると思うのですが。

寺田氏:
 とはいえゲームですからね。

 放送と違って、そもそもゲームに興味がないとやっていただけないという壁があります。

 僕としては『スパロボ』はロボットアニメのカタログという側面を持っていると思っています。色々なロボットが登場するので、ユーザーさんがご存じない作品に触れていただくきっかけになると。

 ただ、ゲームに登場させられる量には一定の限界がありますし、世代の幅が広がっていくという難しさもあるんです。

 たとえば『機動戦士ガンダムSEED』から入った人にとっての『ゲッターロボ』って、TVアニメ版や漫画版ではなく、OVAの『真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日』のほうだったりするんですよ。

 だから漫画版の『ゲッターロボ』で有名な、武蔵が死ぬときのゲッター1の胸から、ゲッター炉を手で掴み出すシーン。『トップをねらえ!』では、あそこを踏まえてオマージュをやっているわけですが、元ネタをご存じない方がいらっしゃるわけで。
 ガンバスターの武器はだいたい元ネタがあるんですが、それを教えると驚く若い方も多いです。

──大畑さんは『トップをねらえ!』にも参加されていますよね?

大畑氏:
 はい。ただ、企画自体にはノータッチですけれど。

 ガンバスターのデザイン自体が『ゲッターロボ』へのオマージュなんですよね。

 庵野監督自身も、漫画版『ゲッターロボ』の直撃世代ですから、きっと「アニメ業界のデザイナー関係で、ダイナミックプロ系の雰囲気でロボットを描けるヤツは誰だ」ということで発注が来たんじゃないかなぁと思っています(笑)。

 『新世紀エヴァンゲリオン』のエヴァンゲリオンも最初はやっぱり、『ゲッター』のイメージがあったそうですし。

 だから『トップをねらえ!』は、「自分が影響を受けたおもしろいものをいっぱい集めて、新しいものを作る」というのがあの作品のコンセプトだったと思います。

 ガンバスターの場合、全6話の作品のうち出ているのは3本だけなのに、今だに覚えていてくださる方が多いんです。人気もあって商品にもなったりしていて、そこはキャラクターとして非常にすごいことだと思いますね。

山野井氏:
 弊社は僕らの世代がメインなので、いわゆる昔のロボットアニメを知っている人はすごく少ないんですよ。

 もちろん『ガンダム』や『エヴァ』、あるいは『勇者』シリーズなどを知っている人間はいますけれど、根っこの部分から知っているわけではなくて。

 そういう時代に、ロボットアニメのよさを改めて知ってもらう作品をやろうと思ったときには、大畑さんみたいな人がうちの会社的に不可欠だと思っていますね。僕らだけじゃできない作品だと。

大畑氏:
 確かに自分の役割はそこなのかな、とは思いますけれど、何の気なしに出したロボットの例が通じなくて困ったりはしますね(笑)。

──『スパロボ』についてもう少し聞かせてください。四半世紀以上も続くタイトルですから、ファンの求めるものであるとか、年齢層の変化もあったのではないかと思うのですが。

寺田氏:
 『スパロボ』は基本的にロボットアニメのお祭りだと思っています。そこは最初から変わっていない部分ですね。本来ならば融合させるのが難しい世界観を、共通点を見つけてなんとかするという形で、「オールスターもの」として仕上げているわけです。

 こういうオールスターものは、もう前からあって、『ウルトラ』シリーズにおける「ウルトラ兄弟大集合」とか、『仮面ライダー』シリーズにおける「ライダー大集合」といったエピソードがそうだったわけです。
 『スパロボ』は「東映まんがまつり」における『マジンガーZ対デビルマン』から始まる劇場版マジンガーシリーズにヒントを得て、それをゲームでやってみた作品なんです。

 その上で、年齢層の広がりや変化がファンの求めるものを変えている、というか“多様化させている”ところはあると思います。シリーズ当初は基本的に懐かしのロボットアニメを登場させていましたが、途中から放送が終わって間もない作品を出すようになりました。

 ただ、新しめの作品は知っているけれど、古い作品は知らないとか、その逆も起こってくるわけです。その全部に応えられるのが理想でしょうけれど、逆に、もっと各世代に向けていろいろな──たとえば『マジンガー』や『ゲッター』が好きな世代にだけ向けた対象年齢40歳以上の『スパロボ』といったものが、あってもいいのかもしれないとは考えるところです。

 「昭和のスーパーロボットだけを集めました」みたいな(笑)。

大畑氏:
 『スパロボ』にもオリジナルロボット出ていますよね。それでアニメも作られましたが、なぜ子ども向けにしなかったんですか?

寺田氏:
 『スパロボ』のオリジナルロボットを支持して下さるコアユーザー層の平均年齢が高かったからですね。

 あと、『スパロボ』はシミュレーションRPGなので、低年齢層のユーザー向けではなかったということもあります。僕個人としては、低年齢層にも受け入れてもらえるロボットコンテンツを作ってみたいなあと思っていますが。

大畑氏:
 そういう理由だったんですね。たとえば映画『アベンジャーズ』が幅広い世代に観られていますけれど、そこからさらに子ども向けのアニメを作っているんですよね。そういうトータルコーディネートみたいなものができるんじゃないかなぁと期待をしているのですが。

寺田氏:
 おっしゃる通り、ある時期からプリスクール向けでロボットが登場するスーパー戦隊シリーズと、ハイターゲット向けのロボット物の間を埋める作品が少なくなったんですよね。

 以前はそこに『勇者シリーズ』や『エルドランシリーズ』、『魔神英雄伝ワタル』のような作品がありました。また、『銀河漂流バイファム』みたいにハードなSF物でありながら、ストーリーは子供達がメインとなっていて大人も楽しめる作品もありました。

 昨今だとそこの隙間にはロボットアニメ以外の人気コンテンツが入っていて、ハイターゲット向けのロボット物へなかなかつながりにくいような気がするんですよね。

 でも、そんな時に『シンカリオン』が出て来て、「接点きた!」と思いました。これで子供達が巨大ロボットへの興味を持続させてくれれば嬉しいなと。

山野井氏:
 僕自身は少し前に『ダンボール戦機』に関わらせてもらったこともあり、「小学生が観るロボットアニメは難しい」という話はよく聞きました。でも僕としては、ちゃんと仕掛けていけばまだまだ全然いける余地はあるのでは、と思っています。

 ただ一方で、プログラミングが可能なロボットが身近で使われるようになっていることを考えると、単純に「乗り込み操縦型」みたいな表現が通じない時代に差し掛かってきているのではないかという感覚もあります。

 今や家庭の中でも、siriとかAlexaに喋って指示を出している時代ですから。

大畑氏:
 昔のロボットで「乗り込み操縦型」のコンセプトがよかったのは、その当時、子どもにとって“自動車が憧れの対象”だったからですよね。

 「自動車を運転したい」という憧れを背景に、自動車をキャラクター化したのがロボットだったわけですから。

 でも、これからAIが普及したら、操縦という概念がなくなって魅力的に見えなくなるかもしれないし、もしかすると、助手席に乗っているアシスタントがロボットだというほうがリアリティを感じられるようになるかもしれない。

山野井氏:
 そうすると、これはまた時代が一周して、乗り込まないほうがリアリティを感じられてウケるときが近づいているのかもしれない。「いけ、鉄人!」と命令するほうがピンとくる人も多いかも。それって『ポケモン』的な考え方で、今やそういう感覚のほうが普通になっているかもですね。

寺田氏:
 個人的には、逆に世間がそっちに進むのならば、「乗り込み操縦型」にこだわってみたいとも思いますね。乗れないメカに対して、憧れを感じることはできたとしても、それが果たして愛着にまでいくかどうかは、疑問だなと。乗り込むという動作を通じて、視聴者はリアリティを感じることができるのでは、と思います。

山野井氏:
 そのリアリティは確かに必要で、『シンカリオン』はそれが新幹線である、というところにかなり負っているんですよ。

 1/1の手に届く感じがあることで、視聴者にアピールした部分はあると思います。ただ、かといってそれがロボットへの憧れに直結しているかというと、そうも言い切れないかなと。

 でも、ロボットがいなければいいかというと、絶対にそんなことはない。そのあたりの中で、ロボットをどう扱っていくかは難しいテーマではありますね。

大畑氏:
 僕が昨今のメカものを観ていて思うのは、メカが多いなということです。

 確かにビジネス的な理由があるのかもしれないけれど、やはり自分の憧れの対象であるロボットは、まず強い個性を持った1体があることが大事で、むしろ多くの人がそこに執着してくれるような魅せ方、作り方が大事なのだと思っています。

 あと、当たり前のことではあるんですが、ちゃんとドラマにロマンがほしいですね。作品はロボットだけで成立するわけではないので。

山野井氏:
 そうですね。ちゃんとしたドラマでないと結局面白くないわけで、そこをちゃんと作り込まないものは定着しませんからね。

大畑氏:
 狙ったのか偶然かどうか分からないですけど、僕の観点からすると『シンカリオン』はロボットが出てくるホームドラマという趣向の作品なんです。

 親子や友だちの絆を描くという物語の中に、自然にロボットが入っているというあたりが観やすいというか、視聴者が作品に乗りやすいところだという気がします。

 シリーズ前半は、仲間たちとシンカリオンのバリエーションがどんどん増えていく展開ですが、あそこでシンカリオンもキャラクターもしっかりと区別がついていたのは、運転士の少年たちの魅力がそれぞれのシンカリオンのキャラクターになっていたからですね。

 そのあたりがホームドラマ的なロボットアニメという印象につながっています。

寺田氏:
 『シンカリオン』は、そういう地に足がついたところが本当によくて。たとえばロボットアニメって、乗り込むときに天井が開いて、シートが上からガッと降りてきたりしますよね。

でも『シンカリオン』は、運転席の横にある扉から普通に乗り込みますから(笑)。搭乗方法は違いますが、『無敵ロボ トライダーG7』に似た感じがありますね。

 小学生の主人公がなんでも屋の社長をやっていて、お仕事で出撃することになる。しかも、トライダーは公園の下にある格納庫にしまわれていて、頭部は露出している。付近の住民にとっては身近な存在で、劇中ではリアリティがある感じですね。

大畑氏:
 そして、その上で、本当に送り手側がやらなければいけないは、受け手側が「まさか」と思うものを実現させることだと思います。

 『シンカリオン』も本当に、一本一本いろんな制約がある中で作業をしていますが、毎回「このシーンは子どもの心に残ってほしい」とか「来週の放送までこのインパクトで関心を保たせたい」とか、そういう気持ちでやっています。

山野井氏:
 いま振り返ってみて、『シンカリオン』が地に足着いたロボアニメになったのは、手の届くところにある“実在の新幹線を題材にできたこと”が強く影響したのだと思います。その流れで、いろいろな提案もやりやすい状況があって、『エヴァンゲリオン』にしても『初音ミク』の登場にしても可能になりました。そういう楽しい感じを、しっかりと今後も保っていけたらと思います。

──本日はありがとうございました。(了)

 ロボットアニメは、視聴者の身近なところにあるテクノロジーと深い関係を持っている。

 具体的にいうと、ロボットは、“擬人化された重機であり自家用車である”という側面がある。そういう意味では、新幹線がシンカリオンとしてキャラクター化されるのも、極めて自然な流れといえる。

 だが一方で、ロボット工学の急激な発達やAIの広がりは、従来の車や列車の類縁としての「ロボット像」を大きく変えることをロボットアニメに迫っている。また、そうした変革の時期にあって、小学生に「ロボットアニメ」が身近な存在ではなくなっているという事実もある。

 このような状況を踏まえると、『シンカリオン』は、「オーソドックスなロボットアニメ」だからこそ「ユニーク」な存在になってしまったというパラドックスが見えてくる。

 しかし、このパラドックスを考えることなしに、ロボットアニメの未来は見えてこない。そしてそのヒントは、本鼎談のあちこちに潜んでいるはずだ。

©プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所・TBS 

電ファミニコゲーマー:藤津亮太、クリモトコウダイ

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