ここから本文です

ジャイアンツの壁に湧いた闘志/平成の名場面11

4/17(水) 11:00配信

日刊スポーツ

2012年(平24)のシーズンに、セ・リーグでも「予告先発」が導入された。

一般の野球ファンの感想はさまざまだろうが、野球そのもののルールが変わるわけではない。予告先発が導入されて野球が嫌いになったファンはいないだろう。しかし、野球記者の取材活動は、間違いなく激変した。

【写真】「ジャイアンツの壁」発案者の尾花高夫投手コーチ

ちょっと想像していただければ分かると思う。シーズン中は、前日に先発を予想し、翌日の試合前には答えが発表される。小テストが毎日あるのと同じで、単純に記者としての能力を問われる“日課”でもあった。どんな取材をしていたか思い出してみた。

一番の取材は、先発投手の調整確認である。言葉にすると単純だが、そんなに簡単にはいかない。○○投手は「登板の前日にブルペンに入る」や「登板の2日前にはダッシュ系のトレーニングをする」など、それぞれ調整パターンが違う。まずは選手個々の調整パターンを把握し、練習を見て確認作業をする。目が悪い記者や年配の記者などは、外野で練習する投手を双眼鏡で観察していた。

この取材で大変なのは、担当記者の多い人気球団だ。単純に練習を観察する人数が多いのだから、バレやすいのは当たり前。しかし、球団側も黙ってはいない。東京ドームは、通路を挟んでブルペンと選手ロッカー室があるのだが、練習が始まると誰がブルペンに入ったか隠すための「壁」が出現した。

ベルリンの壁に始まり、今ではメキシコから移民が入れないようにアメリカの国境に壁を造るとか造らないとかで話題になっているが、壁の建設理由で明るい話題はない。「ジャイアンツの壁」の発案者は当時の尾花高夫投手コーチだったが、記者と球団側に険悪な雰囲気を作ったのを覚えている。

だいたい、壁を造ってブルペンに誰が入ったかを隠そうとするぐらいで効果はない。面倒な手間にはなったが、グラウンドから引き揚げてくる投手を見ていれば誰がブルペンに入ったか想像できるし、投げているかはミットの音で分かる。隠そうとすればするほど、それが知りたくなるのが人間のさが。壁のおかげで記者室とグラウンドへの行き来が不便になった腹立たしさもあり「絶対に当ててやる」とファイトも湧いた。

なにより、壁ができる前から先発予想はしていたし、取材方法は山ほどある。次回は今だから明かせる取材方法を紹介したい。(つづく)

【小島信行】

最終更新:4/17(水) 11:16
日刊スポーツ

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事