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「令和元年」日本の防衛力と安全保障環境、「平成元年」とこんなに違う  

4/18(木) 9:37配信

弁護士ドットコム

5月1日から新しい元号「令和」が始まります。改元を機に、政治や経済、社会など、様々な分野で、平成30年間の振り返りが活発化していますが、日本の防衛力や安全保障環境という観点ではどんな変化があったのでしょうか。

今回、安全保障に詳しいライターのオダサダオさんに寄稿していただきました。オダさんの分析からは、日本を取り巻く大きな環境変化と、変化に対応しようとしてきた姿が垣間見えます。

●冷戦時代、自衛隊はソ連に対応することを目的に育てられた

昭和の終わりは、冷戦の終わりでもありました。冷戦中、日本は、ソ連の脅威に対応するべく、自衛隊部隊を配置していました。北海道に置かれていた第7師団は、侵攻してくるソ連の戦車部隊を迎え撃つための部隊であり、イージス艦は、ミサイルの飽和攻撃を仕掛けてくるソ連の艦艇に対抗するものでした。冷戦下、自衛隊はソ連に対応することを目的に育てられました。

冷戦の終わりとともに、それまでの体制は変更を余儀なくされました。ソ連ではなく、北朝鮮のミサイルや尖閣諸島などへの対応が必要となりました。

このため、ソ連の脅威に対抗するために配備していた戦車の数は削減されました。昭和63年度には74式戦車のみで、1180台保有していました。平成30年度は、74式戦車、90式戦車、10式戦車と戦車の種類は増えましたが、640台にまで減りました。平成のはじまりに保有している戦車をまだ使っているということは、戦車の更新に予算を割けなくなっているとも言えます。

そして、離島防衛や、シーレーン防衛、海外での任務といった遠方任務に対応するために、艦艇は大型になりました。保有艦艇の基準排水量を全て合わせると、昭和63年度は267千トンでしたが、平成30年度は488千トンになりました。平成元年には、まだイージス艦は配備されていませんでしたが、令和元年には6隻のイージス艦と、基準排水量1万トン以上のヘリコプター搭載護衛艦(ひゅうが型、いずも型)を4隻配備しています。

また、北朝鮮のミサイルに対応するために、ミサイル防衛システムが配備されました。平成に入り、自衛隊は体制を大きく変化させていったのです。

●平成に入り、安全保障体制を揺るがす事件が次々と

平成の間、日本の安全保障政策は目まぐるしく変わってきましたが、それを象徴するのが、「危機管理」という言葉でした。このキーワードから考えてみましょう。

平成直前の1980年代後半から平成初頭の1990年代前半、日本は、冷戦の終結と、北朝鮮問題や中国の台頭といった日本周辺の安全保障環境の変化によって、新たな安全保障を模索し続けました。

この動きは、1980年代に既に始まっていました。1979年のソ連によるアフガニスタン侵攻以来、米ソの新冷戦が激化し、日本においても安全保障政策の見直しが図られていました。

中でも1980(昭和55)年に出された総合安全保障戦略においては、日本の危機管理機能の強化策として、安全保障会議の創設を提言しています。1986(昭和61)年に国防会議から安全保障会議に改組されましたが、日本の危機管理体制の改善はその後も議論となりました。

平成に入り、こうした動きに拍車がかかりました。湾岸戦争、北朝鮮のミサイル発射などの一連の北朝鮮問題、阪神大震災や地下鉄サリン事件など、日本の安全保障体制を揺るがす事件が次々と起こりました。

そうした中で、日本の危機管理体制に疑問符がつけられ、体制の強化が図られていきました。そして、2013年に国家安全保障会議(NSC)が創設され、翌年にはそれを補佐する機関として国家安全保障局が発足しました。こうして、日本の危機管理能力の強化が図られたのです。

●令和の時代、危機管理能力が試される

こうしてみると、平成の安全保障は「危機管理」という言葉で表すことが出来ます。日本はより良い「危機管理」を実現するよう、仕組みを整えてきました。それが一応の結果を見たのが、平成の終わりでした。

令和元年を迎えて、日本自身に残された安全保障の課題は、憲法改正のみで、その他には目新しい課題が存在しないと言えます。また、憲法改正にしても、平和安全法制(いわゆる安保法制)や危機管理能力の強化によって、必要性自体が薄くなってしまっているとも言えるでしょう。

他方、トランプ政権の誕生、中国の台頭、北朝鮮の核問題と、日本を取り巻く国際環境は混迷しています。冷戦のような核兵器による対決の可能性は低くなりました。しかし、中国の軍事力がさらに拡大すると、尖閣諸島や南シナ海において、中国の海洋進出はより活発になっていく恐れがあります。また、北朝鮮問題も解決の道が見えずにいます。こうした中で、トランプ政権は、日本に安全保障の役割分担を求めています。実際に問題が起こった時こそ、日本が作ってきた危機管理能力が試されると言えるでしょう。

弁護士ドットコムニュース編集部

最終更新:4/18(木) 9:37
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