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「まぼろしの邪馬台国」宮崎康平 心の目で見た古代ロマン【あの名作その時代シリーズ】

4/19(金) 12:00配信 有料

西日本新聞

吉野ケ里遺跡に沈みかけた太陽が黄砂でかすみ月のように浮かび上がった。「まぼろしの邪馬台国」の姿がだぶる=佐賀県吉野ケ里町

 「あの名作その時代」は、九州を舞台とした作品、または九州人が書いた著作で、次代に残すべき100冊を選び、著者像や時代背景、今日的な意味を考えながら紹介するシリーズです。西日本新聞で「九州の100冊」(2006~08年)として連載したもので、この記事は06年4月30日付のものです。

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 やわらかな日差しの中、赤いツバキの花が地面に落ちていた。近くの高校から部活動の掛け声が届く。「はーい」「はーい」。女子高生がテニスボールを打つ小気味いい音が交差する。長崎県島原市の島原城の片隅。「盲目の作家」、宮崎康平さんの石碑が静かに立っている。

 「終戦は無慈悲に、私に失明を与えた。それから十五年、白いステッキにすがりながら、とぼとぼとまぼろしの国を探し求めてさまよい歩き、いまやっと、その周辺にたどり着いたような気がする。」

 碑文は「まぼろしの邪馬台国」のまえがきだ。四十年ほど前、全国的な古代史ブームを巻き起こしたベストセラーである。

 中国の歴史書「魏志倭人伝」に書かれている邪馬台国は、千八百年ほど前、女王卑弥呼(ひみこ)がいて、中国に使いを派遣した。しかし、日本のどこにあったのか分からない。康平さんは、そんな「まぼろしの国」に迫り、本を書いた。以来、高度経済成長期が終わり、オイルショック、バブル経済、その崩壊を経て、二十一世紀になった。それでもなお、邪馬台国は謎のままだ。

 島原城近くの歩道に小さな観光記念碑がある。「遠い国 ヤマタイさがした康平さん」。優しい碑文に目をとめていたら、子犬連れの散歩の人が軽く会釈をして通り過ぎていった。

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 康平さんは島原鉄道の常務を務め、火野葦平や劉寒吉らが活躍した「九州文学」の同人でもあった。いま、同誌の代表の高尾稔さん(80)=佐賀市=が懐かしむ。「天衣無縫というか、やんちゃ坊主というか。涙もろい情熱家でしたね」。同人仲間が参加した韓国旅行で、韓国の文化関係の大臣と面会したとき。みんなが緊張した面持ちでいたのに、康平さんだけは平然とあぐらをかいて座ったという。 本文:2,356文字 写真:1枚

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西日本新聞

最終更新:4/19(金) 12:00
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