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フェラーリ・ディーノを改造!?│F40ベースのV8エンジンを載せる

4/19(金) 19:15配信

octane.jp

“アウトロー”と呼ばれるのを好まない

これこそ“フェラーリ”ディーノと呼ぶにふさわしい車だ。なにしろフィアットと共用のV6ではなく、本物のフェラーリV8エンジンを搭載するのだから。ケビンも“アウトロー”と呼ばれるのを好まない。「ボディパネルはすべてフェラーリのファクトリーで造られたものです。スロットルボディやエンジンブロック、トランスミッション、ブレーキ、インテリアの装備に至るまで、可能な限りすべてフェラーリのOEM製品を使用しました。このディーノはアウトローではありません。いってみれば“ステルス”ですよ」ケビンの主張はもっともだ。

F40ベースのエンジンと冷却システムに、328のギアボックスと360のブレーキを組み合わせ、フルアジャスタブルのコイルダンパーユニットを装備した。これだけでも大変な苦労があったに違いない。さらに、デビッド・リーがロールケージを好まなかったので、ケビンとそのチームはシャシーやサスペンションのマウント部分を角型鋼管やシーム溶接で慎重に補強した。このディーノは“チェア&フレア”と呼ばれる仕様に合わせて、ホイールアーチにリップを装着し、デイトナ風のシートを備えている。見事な内装を仕上げたのは、オルーク・コーチトリマーズを率いるケビンの息子のロブだ。もうひとつ頭を悩ませたのがヘッドライトだった。アクリルガラスのカバーを付けたのだが、その取り付け部分を隠すのがリーの希望だったからだ。リアのエンジンカバーもカーボンのフレームにアクリルガラスをはめ込み、磨き上げられた美しいファンネルが常に外から見えるようになっている。

ボディはブラック、インテリアはオリジナルと同じ赤と黒で仕上げられ、標準仕様とほとんど同じに見える。エンジンカバーのほかに外観で異なるのは、オリジナルより大きい17インチのアロイホイールだけだ。このホイールも、オリジナルのカンパニョーロに似せてケビンが特注したもので、モダンすぎない“本物”の佇まいを残しながらも、車の存在感を大きく高めている。

燃料噴射を備える自然吸気V8エンジンは即座に始動した。その後のアイドリングも抜群の安定感だ。クランクシャフトはフラットプレーン型だから、ドロドロといった一般的なV8の音とは違い、効率を極めたレーシングエンジンの硬質な音である。車内に響くエンジンノイズが控えめなのは、遮音材をふんだんに使っているためだ。ドライビングポジションは低く、ステアリングとの間に充分なスペースがある。快適なシートを覆うのは香り高い柔らかなレザーだ。油圧式にアップデートされたクラッチの動きは軽くリニアで、328のギアボックスも、扱いにくいオリジナルよりはるかに協力的である。

ディーノV8はあっけに取られるほど運転しやすい車だった。発進からクリーンだ。電子制御だからストールはまずあり得ないだろう。私はもっと時代がかった感触を予想していたのだが、これは最先端技術で造り上げられた車なのだ。次に驚いたのが乗り心地だった。サスペンションは柔らかいが、車体を水平に保ち、バランスも崩れず、足元からガシャンといった音が快適なコクピットに忍び込むこともない。キビキビとした反応と復元力、洗練された感触は、コニ製コイルダンパーユニットの絶妙なセッティングと適度なロープロファイルタイヤの成せる技だ。

そうかと思うと、ギアをひとつ落として切れ味鋭いスロットルペダルを踏み込めば、完璧な仕立てのV8エンジンが抑えの利いた猛々しい咆哮で応える。1000kg強の車体に400bhp(トルクは230lb-ft)のパワーを隠し持つのだから、その感触は走りたくてしかたがないしなやかな獣のようだ。そして驚異的なエンジンが8500rpmという桁違いのレッドラインを目掛けてぐんぐん回転を上げていくのである。

ラック&ピニオン式ステアリングは気づかないほど繊細な電動アシスト付きで、ブレーキはこの軽量パッケージにはオーバースペックではないかと思うほど強力だ。このディーノは、パッケージとしての洗練度でオリジナルをはるかに上回る。強烈に速いのはいうまでもないが、真の驚きは全体としての完成度の高さだ。最新技術による車の実力は、トップギアで1000rpmまで回転を落としてから少し踏み込んでみれば分かるとケビンが言う。やってみると、なるほどピックアップは滑らかだし、スナッチングやトランスミッションからのショックもない。恐ろしく速いだけでなく、実によくできたスポーツカーだ。これならロサンゼルスの市街地を走ってもストップ&ゴーを苦もなくこなすだろう。しかも大幅にアップグレードされた空調システムのおかげで、美しい車内は常に涼しいままだ。つまり、歴代フェラーリ中随一のルックスはそのままに、現代スポーツカーのパフォーマンスを手に入れたのである。

その一方で、現代のハイテクとアナログな技術が見事に融合している。ボディシェルは小さく、Aピラーは細く、その反応はシャープだが、操るのはあくまでもドライバーだ。速い車に“乗せられて”いるのではない。328のギアは素早くメカニカルな感触で、ブレーキも強力だが、そのさじ加減はすべてドライバーに任されている。V8エンジンが奏でる荘厳なる調べも、偽のアコースティックなどではなく“本物”だ。また、ハンドリングが穏やかで、シャシーも驚くほど洗練されているので、最高400bhpの大パワーも自分の力で制御可能だと思わせてくれる。

ディーノV8は“アウトロー”などではない。これは純粋なるフェラーリだ。あの偉大なるブランドが誇る美と洗練とパフォーマンスを、ドライビングシートに座る幸運な人間に味わわせてくれるのだから。モトテクニークではディーノV8の限定生産を計画しているという。


1974年モトテクニーク・フェラーリ・ディーノV8
エンジン:3542cc、V型8気筒、DOHC、電子制御式スロットルボディ燃料噴射装置
最高出力:400bhp/8500rpm 最大トルク:31.9kgm/6000rpm
変速機:5段MT、後輪駆動 ステアリング:ラック&ピニオン、電動アシスト付き
サスペンション(前・後):ダブルウィッシュボーン、コイルダンパーユニット
ブレーキ:ベンチレーテッド・ディスク 車重:1085kg
最高速度:270km/h(推定) 0-100km/h加速:5秒(推定)

Octane Japan 編集部

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最終更新:4/19(金) 19:15
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