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ロックの進化に貢献したムーディー・ブルースの絶頂期の作品のひとつ『童夢』

4/19(金) 18:02配信

OKMusic

独自の音楽表現を獲得する時期

彼らはこの『デイズ・オブ・フューチャー・パスト』の経験と、同じく67年にビートルズがリリースしたコンセプトアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツ・クラブ・バンド』や、ヴァン・ダイク・パークスの『ソング・サイクル』などをおそらく参考にしながら、ムーディー・ブルース独自の音楽を確立していく。

68年にリリースした3作目『失われたコードを求めて(原題:In Search Of The Lost Chord)』(全英チャート5位)から、アルバムジャケットのアートワークはフィル・トラバースが手がけ、トニー・クラークがプロデュースすることになった。これは4作目の『夢幻(原題:On The Threshold Of A Dream)』(‘69)(全英チャート1位)、5作目『子供たちの子供たちの子供たちへ(原題:To Our Children’s Children’s Children)』(’69)(全英チャート2位)、6作目『クエスチョン・オブ・バランス(原題:A Question Of Balance)』(‘70)(全英チャート1位)、本作『童夢』(’71)(全英チャート1位)、8作目の『セヴンス・ソジャーン(原題:Seventh Sojourn)』(‘72)(全英チャート5位)まで変わらず、この時期にリリースされたアルバムはどれも甲乙付け難い秀作で、ムーディーズの絶頂期にあたる。ソングライティングは全員が担当しているものの、最終調整はメンバー全員で行なっているのだろう、ひとりで書いているような統一感がある。

本作『童夢』について

冒頭にも書いたが、彼らはプログレのグループとして扱われることが多いが、それは違う。確かにロック界で最も初期にメロトロンを取り入れたり、サウンドエフェクトを使用したりしているのは事実である。しかし、彼らは美しいメロディーを生かすためにそういった手法を取り入れているだけなのだ。言い換えれば、メロトロンやモーグやSEはアルバムのファンタジックなコンセプトを強調するための小道具といった感じだ。

前述したように、彼らの69~72年までのアルバムはどれも秀作だが、71年にリリースした本作『童夢』が日本で一番売れたので、取り上げることにした。興味のある人は他のアルバムも聴いてみてほしい。余談だが、世間が彼らに持っているプログレ的なグループという印象は、リアルタイムで彼らのことを知っている人なら頷いていただけるだろうが、フィル・トラバースの手になるジャケットのアートワークと、一連のアルバムにつけられた秀逸な邦題によるところが大きいと思う。

収録曲は全部で9曲、CD化に際して2曲が追加収録されている。全体を貫く牧歌的な雰囲気はフェアポート・コンベンションやヘロンなどのブリティッシュフォークからの影響も感じられる。また、生ギターをフィーチャーしたナンバーではCSN&Yのようなアメリカっぽいコーラスも披露しているし、ビートルズからの影響も少なくない。1曲目のプログレ的なナンバー「プロセッション」は、コンセプトアルバムの導入部として上手く機能していると思う。おどろおどろしいコーラスから2曲目のポップな「ストーリー・イン・ユア・アイズ」へとつながる部分は、何度聴いてもカッコ良い。「ゲッシング・ゲーム」と「エミリーの歌」は優しさに満ち、「生命をもう一度(原題:One More Time To Live)」や「家へ帰れない(原題:You Can Never Go Home)」は凛とした力強さが感じられる。ラストの「マイ・ソング」はドラマチックな展開を見せる名曲で、CDではこの後にボーナストラックが入っているが、絶対に「マイ・ソング」を最後に聴くべきだろう。

最後に…

今ではすっかり忘れられてしまった感のあるムーディー・ブルースであるが、デビューから55年が経過した現在も活動しているのは驚異的だ。残念ながらレイ・トーマスは昨年亡くなってしまった。しかし、この年ロックの殿堂入りも果たしている。何度も言うが、絶頂期のアルバムはどれも傑作揃いなので、これを機にぜひ聴いてみてください。

TEXT:河崎直人

OKMusic編集部

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最終更新:4/19(金) 18:02
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