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【その壁を超えてゆけ】プロレスラー大谷晋二郎、いじめ撲滅のために闘う

4/20(土) 14:00配信

日刊スポーツ

「いじめを見たことがありますか?」

ただ、逃げない。強い人になる。それが難しいことも大谷は痛感している。いじめは目に見えない、声に出せない、抵抗できないもの。いじめ問題に関われば関わるほどその大変さに気付くという。大谷は学校を訪ねる度に、子どもたちにこう質問する。
「いじめをしたことはありますか」「いじめをされたことはありますか」
どちらも手を挙げる人はほとんどいない。
だが、「いじめを見たことがありますか」と聞くと、半分以上が手を挙げるという。「いじめは、すっごくデリケートだと年々気付いていくんです。すごいことを掲げているな、って。ひと言ひとこ言、無責任なこと、いいかげんなことは言えない」

1人の男の子が手を挙げた

大谷にとって忘れられない1人の男の子がいる。大谷の地元山口のある中学校に行った時のことだった。全校生徒の前で、いつものように「自分の夢を語ってくれる人、手を挙げてください」と呼びかけた。でも、誰も手を挙げる人がいなかった。
「絶対いるはずだぞ。よし、勇気をもって手をあげるまでおじさん待つからね」ともう1度呼びかけると、前の方に座っていたややふっくらした男の子が1人手を挙げた。
「彼が立ち上がったら、生徒のみんながざわついたんです。そんな状況の中で僕は『みんなも夢をもっているはずだ。でもこの場で言うのは恥ずかしいよね。この子はその中で手を挙げたんだよ。ヒーローだよ。拍手』って言いました。彼は恥ずかしそうにしていたんですけど、消防士さんになりたいとしっかり自分の夢を話してくれました」
その男の子が、講演後に大谷の控室を訪ねてきた。
「ある先生に『どうしても大谷さんに会いたいという子が来ているんです』と言われて待っていたら、その子だったんです。『さっきはありがとね。助かったよ。ありがとう。強い子だね』って肩をたたいたら、泣き始めたんですよ。『なにか抱えていることあるのかな、ありがとうね』と言って抱きしめて、握手をして。そうしたら、元気よく『ありがとうございました』とあいさつをして、出ていきました。彼に勇気をもらいましたよね。その時、どういう状況だったのかは分からないけど、もしかしたら彼は難しい状況にいたのかもしれない。だから彼が立った時、ざわついたんじゃないですか。先生は『あの子は引っ込み思案で自分からものをしゃべる子じゃないんです。でも、たぶんあの子変わりますよ』って言っていました。その出来事だけでも、この活動やっていてよかったと思っています。数多くの人を勇気づけるのも大切だけど、1人の子を勇気づけることも大事。価値は一緒だと思います」
苦しい状況にいる子どもへ、何かが届けばいい。その願いが実った瞬間だった。

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最終更新:4/20(土) 15:11
日刊スポーツ

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