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来園客はピーク時の半分、それでも「旭山動物園」が譲らないこと

4/20(土) 10:14配信

ニュースイッチ

動物の死に向き合う、教育施設としての役割にこだわり

 日本最北の動物園、北海道旭川市の旭山動物園は、かつて年間300万人の入園者が押し寄せる大ブームに沸いた。今はピーク時の半分程度まで落ち着いたものの、国内外から多くの人が訪れる。札幌駅からJR北海道の特急と路線バスを乗り継いで1時間半。園内は決して広くなく、おなじみの動物がほとんどだ。しかし、ここでしか見ることのできない動物の魅力が、人々を引きつけている。

 閑散期となる冬の北海道。誘客促進にはスキーや、スノーボードといったウインタースポーツ以外の魅力創出が課題だ。冬期も開園する旭山動物園では、積雪や凍結対策など安全面に配慮しながら、冬ならではの動物の生態を観察できるよう、工夫が凝らされている。

 中でも有名なのは、キングペンギンの集団が観客の目の前を通っていく「ペンギンの散歩」だ。12月から3月までの積雪時のみ実施しており、500メートルほどの距離を30分から60分ほどかけて歩く。

 動線に手が届く位置で様子を観察できるとあって、訪日外国人にも大人気。スマートフォンを手に待つ人の列に、職員が日本語と英語で注意を促す。ペンギンに直接触れるマナー違反は、ほぼない。

 ペンギンの散歩は芸ではない。板東元園長は「ペンギンは自由参加。冬は運動不足になりがち。お客さんいなくてもやっていた」と話す。キングペンギンは集団で移動して1キロ以上歩く習性があるという。その生態を、せっかくだから見てもらおうと始めたと言う。

 旭山動物園は、動物の生活そのものを見せる「行動展示」で一躍有名になった。そのコンセプト自体は日本各地の動物園や水族館に広まっていったが、板東園長は「コピーはできても、うちを超えるような所は出てきていない」と残念がる。

 根幹にあるのは動物のさまざまな表情を見せたいという思いだ。前後の動作を含めた動きの連続を見られるよう工夫し、動物のよく知られている姿とは違う角度や行動を発見できるようにしている。板東園長は「動物はただ動いているだけ。そこがうちの強みだ」と自信を見せる。

増える訪日外国人にも対応

 旭山動物園は公立。市の特別会計で運営されており、教育施設としての役割に、こだわりを持つ。そのためか訪問者に考えさせる展示も特徴的だ。害獣としてシカが増えた自然界の現状と開拓の歴史を紹介し、動物の死にも向き合う。流氷とともにやってくるアザラシを通じて、温暖化など環境問題を考えるきっかけにしてほしいとの思いも込める。

 動物の習性を伝える表示板は職員の手書きだ。外国人客の増加を受けて、最近は英語表示を充実させている。板東園長は「みんな動物のことを知っているようで知らない」と来園者を待ち構える。

日刊工業新聞・小林広幸

最終更新:4/20(土) 10:14
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