ここから本文です

ケイト・ブッシュの革新性が示された傑作『魔物語』の色褪せない魅力

4/21(日) 18:01配信

OKMusic

アルバム『魔物語』

全11曲で約38分ほど。CDや音源配信の時代においては1パッケージでこれだけというのは短いと感じられるかもしれないが、中身のあまりの深さにそれを意識させない。全曲、アレンジの全てをケイト自身が手がけているのだが、粒ぞろいの楽曲が並び、いずれの曲にも崇高な世界観が描かれており、演奏だけでなく、ヴォーカル表現もこれまでになく複雑になり、可憐に歌っていたデビュー時のケイト・ブッシュはどこにもいない。今回、原稿を書くために棚から引っ張り出したのは90年代のはじめに最初にCD化されたバージョンのものだったが、内容はいささかも古びてはおらず、イヤホンで集中して聴いていると、これが先鋭的なアーティストによる2015年のリリース作だと言われても納得しそうな斬新さで、改めて驚かされた。これを機会に最新のリマスター盤、あるいはケイト側にハイレゾ音源でのリイシュー計画があるのならそれを買い求めようかと思ってしまうほど感動してしまった。

本作を彼女の全ディスコグラフィから選んだのには、本作が彼女の音楽キャリアのある意味で現時点における頂点と考えるからだ。この2年後にリリースされる通算4作目となる『The Dreaming』('82)も本作に負けず劣らず傑作だと思うのだが、そこで示されているのは全身全霊をかたむけ、自分の持ちうる創造のアイデアを絞り出すような壮絶な世界であり、ケイトのヴォーカルも女性シンガーの、というよりは精神が破綻する寸前まで追い込んだアーティストのうめき声、悲痛な叫び、咆哮のようだ。暗いところでひとりで聴いていると怖ささえ感じないでもない。そういう意味で、彼女のクリエイティ部な面とシンガーとしての魅力がバランスよく両立している本作を選んだわけだ。

TEXT:片山明

※OKMusicでは毎週金曜日に『これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!』を配信中! 200を超える洋楽名盤の数々もアーカイブ! 是非ともチェックを!!

2/2ページ

最終更新:4/21(日) 18:01
OKMusic

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事