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ヴィッセル神戸の黒星再出発に見えた監督退任の影響とさらなる混乱の予兆

4/21(日) 5:01配信

THE PAGE

 サッカー界ではしばしば「監督解任ブースト」なる言葉が使われる。指揮官が突然代わることでチーム内に危機感が芽生え、それまで不振にあえいでいた軌跡が肩上がりに転じる現象をさす。

 最近の日本ならば、本大会の2ヵ月前にヴァイッド・ハリルホジッチ監督から西野朗監督に代わった日本代表がベスト16進出を果たした、昨夏のワールドカップ・ロシア大会が挙げられるだろう。

 そして、開幕から2ヵ月しか経過していない今シーズンのJ1戦線でも、早くも指揮官の交代劇が起こっている。フアン・マヌエル・リージョ前監督との契約解除が電撃的に発表されてから3日。吉田孝行新監督のもとで再出発を期したヴィッセル神戸に、残念ながらブーストの兆しは見られなかった。

 5万4599人の大観衆で埋まった埼玉スタジアムで、浦和レッズと対峙した20日の明治安田生命J1リーグ第8節。開始10分にPKで献上した失点を挽回できないまま、神戸は開幕戦以来となる無得点で3連敗を喫した。試合後の公式会見。吉田監督は開口一番、黒星をポジティブに受け止めた。

「全体的に自分たちがボールをもちながら、サッカーはできたと思う。ただ、結果としては負けたのでそこはしっかり受け止めて、次へ向けての修正を今後やっていかなければいけない」

 試合は神戸の信じられないミスで動いた。DF三原雅俊からのバックパスを受けようとしたDF大崎玲央が足を滑らせて転倒。ボールを拾った浦和のFW興梠慎三がペナルティーエリアへ侵入したところを、慌てて追走してきたDFダンクレーが引っかけて倒してしまった。

 前節までの7試合でわずか5ゴール。そのうち4得点をセットプレーであげるなど、決定力不足に陥っていた浦和は予期せぬ形でリードを奪ったことで、全体的に引き気味になって守備を固めて、ボールを奪うやカウンターを繰り出す戦い方に早くも移行した。

“VIP”不在の再出発

 当然ながら、神戸のボールポゼッションはアップする。最終的には70%を大きく超えたが、浦和が形成するブロックの周囲でボールを回す時間帯がほとんどを占めた。浦和はそれほど脅威を感じなかったはずだし、ボールを支配するなかで相手へ脅威を与えられるキーマンを神戸も欠いていた。

 FCバルセロナおよびスペイン代表で一時代を築いた稀代の司令塔、アンドレス・イニエスタが先発から外れたどころか、リザーブにも名前を連ねていない。開幕から先発フル出場を続けてきた34歳にトラブルが発生したと、吉田監督は会見で言及している。

「ここであまり選手の怪我の状況は言いたくないのですが、大きな問題ではないので。その程度の怪我です」

 6日の松本山雅FC戦で痛め、途中交代に至った股関節が癒えていないのか。スペイン代表で歴代最多となる通算69ゴールという数字を引っさげ、鳴り物入りで新加入したFWダビド・ビジャも、サンフレッチェ広島との前節に続く欠場を余儀なくされた。

 イニエスタが不在のトップ下には元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキが、ビジャが務めた1トップには今シーズンの公式戦で5ゴールをあげているブラジル人のウェリントンが入った。そして、ポドルスキも後半26分に、FW田中順也との交代でベンチへ下がった。

 それぞれのファミリーネームの頭文字を取って“VIP”と命名された、今シーズンの看板トリオがそろってピッチ上にいないのは8試合目で初めてだ。しかし、皮肉と言うべきか。身長186cmのウェリントンを標的に、後方からロングボールを放り込む攻撃の方が可能性を感じさせた。

 スペイン人のリージョ前監督は昨年9月、イニエスタの加入とともに大きく舵を切られた「バルセロナ化」を加速させる役割を担って招へいされた。本家バルセロナのスポンサー、楽天株式会社の代表取締役会長兼社長で、神戸のオーナーでもある三木谷浩史氏は興奮気味に語っていた。

「我々が目指しているポゼッションサッカーに合う、経験値が高くて、インテリジェンスのある監督を探していたなかで、まさかオファーを引き受けてもらえるとは思わなかった」

 これまでも世界で数多くのチームがトライし、断念してきた「バルセロナ化」は一朝一夕では成就できない。だからこそ、三木谷オーナーをして「世界の誰もが知っているイノベーター」と賞賛させたリージョ前監督に長期政権を託したはずが、本人の意向もあって道半ばで去ってしまった。

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最終更新:4/21(日) 6:47
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