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沈黙を強いる力に抗って 世田谷一家殺人事件の遺族を苦しめてきたもうひとつの傷

4/21(日) 11:11配信

BuzzFeed Japan

死後も孫の障害を受け入れられなかった母

母はさらにもう一つの鎖に苦しめられていたと入江さんは考えている。

亡くなった末っ子の礼君は発達障害があり、母は礼君の障害を生前から、そして、亡くなった後さえも受け入れることができなかった。

「可愛がっていなかったわけではないのですが、ずっと受け入れられなかった。特に母の世代は障害を『恥』として受け止めています。今でこそ発達障害や自閉傾向についてはオープンに語れるようになっていますが、当時はどういうものかもわからず、できたら人には言いたくないものと考えられていました」

「就学時健診の時も、にいなちゃんと同じ普通学級は難しいかもしれないことをよそには絶対に言いたくなかったようです」

保育園のお迎えにも行き、にいなちゃんと共に孫の世話を焼くのを楽しみにしていた母だが、それでもやはり亡くなった時の嘆き悲しみにさえ「温度差」があった。

「にいなちゃんが亡くなったことは『日本の宝を失った』ぐらいの勢いで言うのに、礼君については『もしかしたら礼君の障害が原因で事件を起こされたのかも』と憶測を語ることさえありました。犯人も障害を持っていて、同じ障害を持つ礼君が可愛がられていたのが憎かったのかとか。未解決事件なので、様々な憶測をしてしまうものなのですが」

亡くなってからしばらく経ったある日、そんな母と入江さんの間で決定的な出来事が起きる。

「礼君は亡くなっても仕方なかったのよ」

母がそう語るのを聞いて、入江さんは「なんてことを言うの!」と激怒した。

「私がすごく怒ったのを見て、母は全身に紫斑ができるほどショックだったみたいです。『年をとってから娘に否定されるとは思わなかった』と言われましたが、私は『あなたとは違う生き方を選ぶ!』と母に告げました」

この時のことを入江さんは「母と精神的に決別をした時だった」と振り返る。

「第一発見者としての心の重みをずっと抱えていて、母の素が出た瞬間でした。もしかしたら私自身も母と同じような気持ちがあったかもしれない。それに対して、ここで反抗しなければ生きていけないと思うぐらい、私も素になって母と対峙したのだと思います」

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最終更新:4/21(日) 11:11
BuzzFeed Japan

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