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丸山豊「月白の道」 戦場の記憶 うずき続ける痛み 【あの名作その時代シリーズ】

4/22(月) 12:00配信 有料

西日本新聞

丸山豊、軍医時代のアルバムから。南方戦線での行軍の様子を描いているようだ(作者不詳)

 「あの名作その時代」は、九州を舞台とした作品、または九州人が書いた著作で、次代に残すべき100冊を選び、著者像や時代背景、今日的な意味を考えながら紹介するシリーズです。西日本新聞で「九州の100冊」(2006~08年)として連載したもので、この記事は06年5月7日付のものです。

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 旧陸軍の軍医だった丸山豊は、壮絶を極めた南方戦線から奇跡的に生還した。その記憶を書き残す決意を固めるには、四半世紀の時間を要したと述懐している。丸山にとって戦争は、痛恨の記憶として生涯その胸に刻み込まれていた。一九六九年、本紙に連載した「月白の道」は、中国・雲南省からミャンマー、タイへと敗走を続けた戦場の記録。書き出しは感情を抑えた、さざ波のような文章である。

 「私たちはおたがいに心の虫歯をもっていたほうがよい。…でないと、忘却というあの便利な力をかりて、微温的なその日ぐらしのなかに、ともすれば安住してしまうのだ」

 平和な日常にあっても折に触れて痛み出す「抜歯のきかぬ虫歯」こそが、丸山にとっての戦争の記憶だった。連載には書くことへの強い「ためらい」が散見される。戦場の現実をどこまで忠実に表現するのか。丸山は死の二年前に復刊された新訂増補版の前書きにこんな思いを吐露(とろ)した。

 「戦争については、書けぬことと書かぬこととがある。…それをどこまでも追い詰めるのが勇気であるか、化石になるまで忍耐するのが勇気であるか、私は簡単に答えることができない」 本文:2,392文字 写真:1枚

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西日本新聞

最終更新:4/22(月) 12:00
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