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【平成ラストG1「天皇賞・春の追憶」吉田哲也が語る】平成9年(97年)マヤノトップガン

4/24(水) 7:03配信

スポーツ報知

 時折、語気を強めながらも、丁寧に伝えていた。「そうじゃなくて…」。レース4日前、マヤノトップガンの共同会見。手綱を執る田原は、微妙なニュアンスを時間をかけて語った。突き詰めれば大切なのは馬との呼吸―。まるで禅問答のように思える会見を見ながら、大先輩だったS紙のF記者は言った。「ワシには、勝てる、と言っているように聞こえるけどな」

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 前年の覇者で有馬記念の勝ち馬サクラローレルが主役だったが、有馬でローレルに続いたマーベラスサンデー、そしてマヤノトップガンが3強を形成した。ドバイ・ワールドCは始まって2年目で、春の大一番は天皇賞―。そんな時代だった。

 4月に入社したばかりのルーキーT記者が研修にやってきた。一緒に取材して、普通に原稿を打ってもらった。競馬初観戦だったT君がレース後、目を輝かせながら言った。「マヤノトップガンって、次はいつ走るんでしょうかね。感動しました」

 意地と意地がぶつかり合うような4コーナーからのサクラローレルとマーベラスサンデーの競り合い。直線半ば、サクラがマーベラスを差し返した瞬間、後方で人馬一体となってエネルギーをためたマヤノトップガンが矢のような脚で抜き去った。レース後、誰もが勝因と敗因を探そうとするが、それが陳腐な作業に思えるほど、すさまじい一戦だった。

 T君はシドニー五輪やW杯日韓共催の取材で大活躍した。ところが、12年後の11月、病に倒れ、旅立った。もう、あの日のことを彼と語り合うことはできない。ただ、春の天皇賞が来るたびに、京阪・淀駅で別れ際に見た彼の笑顔を思い出す。

(平成8~11年大阪本紙予想担当、現大阪レース部長)

最終更新:4/24(水) 7:25
スポーツ報知

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