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「隠蔽の成功がさらなる隠蔽を生む」立て直しに苦闘したキャリアが見た神奈川県警の闇

4/24(水) 10:00配信

カナロコ by 神奈川新聞

 キャリアの本部長が主導した覚醒剤隠蔽事件をはじめ、殺人、恐喝未遂、贈収賄、窃盗、性犯罪――。1999年9月から相次いで発覚した神奈川県警の不祥事は、過去に隠蔽した事案が表面化するだけでなく、新たな不正や犯罪が続々と発生して底なしの様相を呈した。混乱の収拾と組織の立て直しを託された警察官僚の金高雅仁氏は、処分と謝罪、対応に追われ続けた。前代未聞の不祥事対策に苦闘した後、警察組織の中枢を歩んだ元警察庁長官の金高氏が、県警不祥事の背景や教訓などを語った。(神奈川新聞記者・渋谷文彦)

命令された不祥事 組織と個人、どう罰するか苦悩した

 覚醒剤隠蔽事件では当時の本部長ら5人が有罪になったほか、23人に上った大量処分で当時の警務部長や担当監察官が懲戒免職になり、停職や減給の処分を受けた幹部3人が辞表を出した。末端で関与した外事課員らも処分。組織と個人の関係が焦点になった。

 「覚醒剤を使用した警部補をホテルに軟禁して一週間ほど一緒に泊まり、(覚醒剤反応が出なくなるまで)尿を採り続けた外事課員の警部補らを処分したが、その時、ものすごい議論があった。本部長に直接言われたら逆らうかもしれないが、本部長命令は直接警部補には行かない。警備部長がいて外事課長がいて外事課補佐がいて重畳的になる。その命令に従った、抵抗しなかったことを処分理由にできるのか。これに、ずいぶん悩んだ」
 
 絶対的な権者から来る命令と、末端の行為の関係が難しく、苦悶した。下した結論は本部長注意。重視したのは、県民の視線だった。

 「組織と個人を考えると、最終的な処分を決めるのが非常につらかったが、結果的には私が判断した。懲戒処分は酷だがお咎めがあり、本部長が直接注意する処分にした。警察官は違法行為を取り締まる立場。それが上から言われて罪を犯し、お咎めなしでは県民の目が許さない。罪を犯せという命令を出しているのは、本部長であっても犯罪者。それを摘発するのが、県民が期待する警察官だと思う。そういう考え方を浸透しないといけないと思い、あえて処分した」

 神奈川県警の問題が連日報道される中、不祥事を積極的に公表しないよう指示したマニュアルを監察官室が91年に作成していたことも判明。「(公表は)一般市民への警察の信頼感と警察職員の士気を低下させるだけ」「マスコミとの摩擦を恐れるだけの安易な考えで公表することがあってはならない」と、不祥事隠しと受け取られかねない内容だった。

 「それが影響しているか別として、神奈川県警にはそういう体質があった。先行2事件(押収ネガ悪用の女子大生脅迫と集団暴行)を見ても、あれを表に出さないで処理するのはありえない。一つは業務に絡んだ悪質な懲戒免職、もう一つは凄惨なリンチみたいな事件なのに捜査もせず、なかったようなことを言う。いくつかの都県警本部を渡り歩いたが、あそこまでの隠蔽を見たことがない」

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最終更新:4/24(水) 10:00
カナロコ by 神奈川新聞

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