ここから本文です

家族3人が消えた日

4/24(水) 5:32配信

九州朝日放送

飲めない焼酎

洋さんはある決断をする。

60年以上暮らしてきた朝倉市黒川を離れ、朝倉市内の中心部に新たに家を建てることを決めた。

「黒川はいいところ。いいところだから残りたいけど、黒川は安全と言える場所が本当に少ない。山が多いから。山が流れるんよ。だからえらい怖い。」

洋さんはなぜ、新築にこだわったのだろうか。

「この歳で新築・・・。借家でいいと思うやん普通は。でも母がいるから。母に不便さを感じさせたくない。」

そしてもうひとつの理由。妻の麗子さん、娘の由香理さん、孫の友哉ちゃんとしっかり向き合える仏間が欲しい。そう、考えたのだ。

そして、黒川の自宅は解体することに。

その解体現場から思いがけないものが出てきた。

洋さんと友哉ちゃんが一緒に映ったラベルが張られたボトル。3年前の父の日に、娘の由香理さんから贈られた焼酎だ。

「よく出てきてくれたと思う。宝よ。これだけは飲みきらんやろうね。」

あの道が・・・

洋さんの農園にまた、立派な梨が実をつけた。

そして、九州豪雨から1年の月日が経った。

この日行われた追悼式で、洋さんは被災者を代表して挨拶をした。
洋さんは挨拶の最後にこう述べた。

「私には娘の主人がいます。一人娘の旦那です。息子の心が癒えて第二の人生ができるまで、私の大切な息子です。」

黒川の自宅跡で花を手向ける洋さんに激しい雨が打ちつける。

九州豪雨からちょうど1年が経ったこの日から3日間降り続いた雨は、西日本に大きな被害をもたらし、200人を超える命が奪われた。

1年前、助けに向かう洋さんの行く手を阻んだあの道は、西日本豪雨で再び崩落していた。

自宅の跡に

洋さんの自宅があった場所は、更地になったままだ。

災害以降、洋さんがここを訪れることはほとんどなかった。

あの日から1年半が経ったある日、黒川の自宅跡に洋さんの姿があった。由香理さんの夫、大貴さんと一緒だ。

手には小さな木を持っている。その木を自宅跡に植えていく。

植えているのは3本のソメイヨシノ。

妻の麗子さん。一人娘の由香理さん。孫の友哉ちゃん。

「3人だから3本。木を植えていればその成長を見ることができる。子どもの成長と同じことで。」

木を植えたあと、由香理さんの夫、大貴さんが洋さんの新しい家にやってきた。

毎月5日。月命日には必ず、2人でお酒を飲んでいる。


KBC 九州朝日放送は4月26日(金)午前10時40分から九州豪雨で3人の家族を失った、渕上洋さんを約2年にわたって取材した報道ドキュメンタリー番組「それでも生きていく」を放送する。(福岡・佐賀エリアのみ)

3/3ページ

最終更新:4/24(水) 9:40
九州朝日放送

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事