ここから本文です

『COMPLEX』は平成元年だったからこそ成し得た吉川晃司と布袋寅泰による奇跡のコラボレーション

4/24(水) 18:02配信

OKMusic

リスナーの期待をはるかに上回った楽曲群

1988年12月。あの吉川晃司(Vo)が布袋と本格的に組むことがアナウンスされた時は、比喩ではなく、まさしく歓喜の声を上げたことを覚えている。確か最初は友人から“布袋が吉川とバンド組むらしいぞ!”と告げられたと記憶しているのだけれども、とにかくワクワク感が止まらなかった。少し大袈裟に言うと、アーティストの新作音源を心待ちにしたのは、あとにも先にも、この時しかなかったような気もする。そして、その吉報から約5カ月後に届けられたアルバム『COMPLEX』は、吉川と布袋、ふたりのアーティストの個性がぶつかり合った期待を裏切らぬ出来栄えであった。

まず、先行シングルとして発表されたM8「BE MY BABY」が良かった。事前の予測をはるかに上回るカッコ良さ。The Ronettesの超有名なヒット曲と同名ということでオールディズを喚起させるタイトルながらも、イントロでの布袋の《BE MY BABY》のリフレインからのギターのヘヴィなストローク。そこに“威風堂々”と表現したくなるほど、どっしりとした存在感を示す吉川のヴォーカルが乗り、その歌メロはサビでサウンドとともに開放的かつキャッチーに展開する。メロディーと歌詞だけを抜き出すと意外なまでにシンプルなのだが、決してそう聴かせないアレンジの巧みさ。そして、何よりも匂い立つようなロックのワイルドさが全体を支配している。1+1が確実に2以上になる実例をまざまざと見せられた格好だった。待ち侘びた身にとってBOØWYの穴埋め的なものとしてとらえていた部分もあったと前述したが、実際に遭遇したCOMPLEXは決して代替えなどではなく、まったく新たなロックヒーローだったのである。それが1989年春、即ち平成元年度の始まりのこと。まさに新しい時代の到来を感じさせたのである。

そのM8「BE MY BABY」にこの上なく期待を煽られた末に手にしたアルバム『COMPLEX』も、これまたまったくその期待を裏切らなかった。吉川と布袋は、オープニングM1「PRETTY DOLL」でいきなり攻撃性とスケールの大きさを見せつける。吉川が作詞作曲したナンバーで、メロディーと曲自体の進行はJ-POP的(当時はそんな言葉はなかったように思うが…)というか、ある種、オーセンティックでありながらも、そこに前年のソロ『GUITARHYTHM』で見せた布袋のニューウエイブ感を注入。吉川の作品でも布袋の作品でもなく、COMPLEXの作品としか言いようがない、まさしく化学変化がそこにあった。今改めて聴くとイントロでギターの音が左右に振れるのはご愛敬といった感じだが、当時はそれもまた新鮮に感じたものだ。

M2「CRASH COMPLEXION」でヘヴィなロックを続けたあと、M3「恋をとめないで」でポップチューンを披露。キャッチーなメロディーとキラキラとしたギターのリフが印象的なナンバーで、こういう軽快な楽曲をやれるのもCOMPLEXのポテンシャルの高さを示したと思う。メロディーもサウンドも歌詞も初期衝動を具現化したようなところがあり、シングルカットされていないにもかかわらず、COMPLEXを代表する楽曲としてファンに支持されたのは、そうしたフレッシュなところがパッケージされているからなのかもしれない。リリースされたばかりの頃は、某音楽評論家にその歌詞をかなり揶揄されていたし、2011年の再結成時に吉川本人も“当時の歌詞をそのままの気持ちで歌うことは難しい”といった主旨の発言をしていることから、もしかするとM3「恋をとめないで」はメンバーにとっても認めたくない若さゆえの過ち((c)シャア・アズナブル)なのかもしれないけれど、その瞬間をパッケージしたという意味では、これはこれでやはり名曲であろう。

名曲と言えば、続くM4「Can't Stop The Silence」は隠れた名曲とでも言うべき秀作。ミディアムテンポのヘヴィグルーブ系ナンバーで、叙情的かつドラマチックな楽曲展開を、吉川の渋い声と、布袋のブルージーなギターとで彩っている。COMPLEXと言うと、やはりM8「BE MY BABY」やM3「恋をとめないで」のイメージが強かろうが、M4「Can't Stop The Silence」のような、ポップさこそ薄いがしっかりとロックな質感を残すナンバーをやった辺りに当時のふたりの心意気を感じるところである。話は少し飛ぶが、その辺はアルバムラストに収録されたM12「CRY FOR LOVE」も同様で、こうしたメロウなナンバーを残したところも見逃せない。

2/3ページ

最終更新:4/24(水) 18:02
OKMusic

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事