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『COMPLEX』は平成元年だったからこそ成し得た吉川晃司と布袋寅泰による奇跡のコラボレーション

4/24(水) 18:02配信

OKMusic

己にないものを補てんし合ったサウンド

M4以降、吉川作詞作曲だけあってメロへの歌詞の乗せ方、歌唱が絶妙で、そこに布袋らしいエッジーなギターリフが絡むM6「IMAGINE HEROES」。そして、リズミカルなサウンドもさることながら、そもそもサビでの吉川のヴォーカルに呼応する布袋のコーラスがたまらないM10「RAMBLING MAN」などが続いていくが、当然のことながら、いずれにしても吉川のカラーと布袋のカラーとが混ざり合ったユニットならではの化学変化が見られる。やはり、これがアルバム『COMPLEX』の特徴である。吉川はそれまでのキャリアで体験したことがなかったロックバンドへの憧憬があり、一方の布袋はソロ活動を始めたものの、この時期はまだヴォーカリストとしての未熟さを感じていたそうで、両者ともにその頃の己になかったものを補い合えたのがCOMPLEXの本質であったという見方があるが、まさしくそれを実現したのが『COMPLEX』であった。

基本的には文句の付けようがない作品なのであるが、レコーディング期間が短かったからなのか、多くの楽曲でリズムが打ち込みなのが若干残念ではある。個人的には池畑潤二(Dr)が参加したM3「恋をとめないで」、M10「RAMBLING MAN」、M12「CRY FOR LOVE」が素晴らしすぎるので余計にそう思う(収録曲中、ドラムがクレジットされているのがこの3曲)。筆者は幸いにも最初の全国ツアーを観ることができたのだが、池畑氏のドラミングの鋭さを目の当たりにして、『COMPLEX』収録曲がさらに輝きを増すような感覚を得たこともよく覚えている。2nd『ROMANTIC 1990』では生ドラムは増えていたが、それでも全13曲中5曲と比率としては少なかったところを見ると、COMPLEX自体、デジタル指向だったのかもしれない。しかし、あのバンドならではのグルーブを生で体験してしまうと、ちょっともったいないことをしたのかも…という思いは拭えない。拭えないが、こればかりは栓なきこと。

平成元年に生まれた奇跡のコラボレーションは、翌年の2nd『ROMANTIC 1990』の制作中に音楽面での意見衝突が表面化して、解散に至った。個性の強いふたりだったがゆえに両雄並び立たなかった…というのが専らの見方。[本能のままに生音を制作し、シンガーソングライターとして急成長する吉川と、音楽の細部にわたるこだわりだけでなく、活動コンセプトやファッション、ビジネス面に至るまでを綿密に計画しプロデューサー視点でトータルで捉える布袋との間に徐々に溝が生まれ]たという([]はWikipediaからの引用)。COMPLEX以降のふたりは、布袋は自らがヴォーカルを務めてヒット曲を量産し、吉川は今も名うてのミュージシャンたちとライヴ活動を行なっているので、その見方も決して穿ったものではなかろう。2011年7月、東日本大震災復興支援チャリティーライヴとして復活しているので、再始動は100パーセントないとは言い切れないが、COMPLEXは両スーパースターの活動の奇跡的な結合点であったと見て、今も残る音源を愛でるのが現在の接し方が正しいと思う。

TEXT:帆苅智之

OKMusic編集部

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最終更新:4/24(水) 18:02
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