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売り上げ1兆円突破、アドビがサブスク化に成功した理由。幹部が語った「データ重視経営」の核心

4/25(木) 20:12配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

「イノベーション」の速度が変わってきた

なぜアドビはサブスクリプション型に移行したのか? その理由についてアドビ上級副社長 兼 デジタルメディア事業部門 事業本部長 ブライアン・ラムキン氏は、

「従来の永続型ライセンスでは、流通の関係などもあり18~24カ月に一度、新しいフラッグシップアプリを発売する開発サイクルになります。

(つまり)仮に新機能を開発して、ユーザーにいち早く提供したいと思っていても、そのサイクルに合わせてリリースする必要があった。当時はこのタイミングで良かったのですが、今はイノベーションのスピードが加速しており、それでは十分ではありません」

と説明する。

従来のボックス売りのビジネスモデルが18~24カ月という発売サイクルをとっていた背景には、コンピューター業界(ハードウェア)の新製品サイクルが大きく影響している。当時はパソコンも、有名な「ムーアの法則」(18~24カ月ごとに、1つの半導体に集積できるトランジスタ数が倍になるという経済原則)に従って18~24カ月に一度、最新モデルが登場していた。このサイクルでソフトウェアも含めてPC業界全体が回っており、これに沿って新製品を投入することは当たり前だった。

しかし、それもアドビがサブスクリプション型への移行を決めた2011年頃から大きく変わってきている。最大の要因はスマートフォンの隆盛だ。スマートフォンは一般消費者が利用する電話から、生産性を重視するオフィスワーカーやクリエイターも使うツールへと進化した。

スマートフォンではAppStoreでソフトウェアが提供され、早いところは日々、遅くとも月単位でアップデートがかかるのが当たり前だ。そうした中で、ボックス売りの18~24カ月アップデートを続けていれば、その勢いについて行くことができなくなる。イノベーションから取り残されるということになりかねない。

サブスク化には社内からも「多くの反対があった」

だが、「この更新サイクルでは遅すぎる」というのは、今になったから言えることだ。

サブスクリプション型へ移行すると決めた当時には、ユーザー(顧客)に加え、従業員からも多くの反対にあったとラムキン氏は言う。

「誰にとっても変化を受け入れるのは難しい。毎日使っているツールが新しい形になるとしたら不満を感じるのは当然だろう。しかし同時に、実はその方々こそイノベーションを必要としていた。従って、我々はお客様に対してはこんなイノベーションができますとデモをし、コミットメントすることで理解を得ていった」

サブスクリプション型へ移行することで、ソフトウェアのバージョンアップは毎月、場合によってはもっと短いサイクルでできるようになった。この結果、ユーザーが新しい機能を利用できるようになるまでの期間が圧倒的に短くなった。

そしてCreative Cloudの名前からもわかるように、サービスの基本はクラウド経由で提供するようにしたため、モバイル(スマートフォン、タブレット)にアプリケーションを提供することも容易になった。

このため、アップルのiPhone/iPadとAndroid向けのモバイルアプリを提供し、外出先ではそれらのモバイルアプリを、自宅や会社に帰ってきたらPCのデスクトップアプリをという新しい使い方が提案できるようになった。

さらに2016年にはCreative CloudにクラウドベースのAIサービス「Adobe Sensei」を導入し、PhotoshopなどCreative Cloudのアプリケーションでの定型処理をAIが自動で行う機能なども実現した。いずれもサブスクリプション型へと移行したからこそ提供できるイノベーションだ。

この決断が正しかったことはユーザー数からも明らかだ。売り切り型の時代、ユーザー数は数百万の規模だったが、今や数千万の規模へと「桁が1つ上がった」とラムキン氏は説明する。

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最終更新:4/25(木) 20:12
BUSINESS INSIDER JAPAN

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