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富士通の人材と技術は優秀だが、未来を描くのが難しい状況

4/26(金) 13:00配信

アスキー

富士通がトップ人事を発表。SE出身の時田隆仁執行役員常務が社長に就任することがわかった。その時田氏がいまの富士通について話した。

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今回のことば
 
「富士通には優秀な人材と、尖った技術やアイデアがある。だが、次の未来を描き、お客様に新たな価値を届けることは不得意だという反省がある」(富士通の時田隆仁次期社長)
 
経営トップの若返りで成長戦略を加速
 富士通は、時田隆仁執行役員常務が、社長に就任するトップ人事を発表した。田中達也社長が取締役会長に就く。時田氏は、3月28日付けで執行役員副社長に昇格しており、6月24日に開催予定の定時株主総会を経て、社長に就任することになる。
 
 また、古田英範執行役員専務と安井三也執行役員専務が、代表取締役副社長に就任し、それぞれテクノロジーソリューションおよび営業部門、グローバルコーポレートおよび海外部門を担当。山本正已取締役会長は、取締役シニアアドバイザーに就任する。
 
 時田次期社長は、田中社長の6歳下。経営トップの若返りを図ることで、成長戦略を加速させる。
 
 時田次期社長は、1962年9月2日生まれ。1988年4月に富士通に入社。入社後にはシステム本部に配属。主に金融部門を担当し、2005年までは複数の大手生命保険会社の大規模システム再構築などを担当してきた。
 
 「メインフレーム、UNIX、Windows、インターネットといった技術革新を経験してきた。いま起こっている技術変化に対しても、このときの経験が生かせる」(時田次期社長)とする。その後、メガバンクを担当するとともに、金融分野におけるSIビジネスを統括。「レガシーの勘定系システムをオープン化するために、さまざまな課題解決に取り組んできた」という。
 
現場のノウハウや経験を生かす
 2014年6月に金融システム事業本部長として、金融機関全体を担当。Fintechの流れにあわせて、金融機関のデジタル対応にも取り組んできたという。2015年4月に執行役員に就任。2017年4月に執行役員 グローバルデリバリーグループ副グループ長を経て、2019年1月に執行役員常務 グローバルデリバリーグループ長に就任していた。
 
 ここでは、世界8ヵ国にサービスデスクやオフショア開発の拠点を設け、1万2000人の陣容で展開し、グローバルカンパニーの顧客に対応。この間、時田次期社長はロンドンを本拠地としてこのビジネスを統括した。
 
 「入社以来、一貫してお客様に近いところで働いてきた。そして、テクノロジーの変遷とお客様ニーズの多様化、厳しいコンペティションを経験してきた。富士通は、形をかえ、質をかえ、サービスオリエンテッドカンパニーへと変わろうとしている。最前線で培ってきた現場のノウハウや経験を、成長戦略に生かし、さらなる成長につなげることが、私に求められていることである」とした。
 
 社長就任の要請時期については明らかにしなかったが、「もちろん驚いたが、大変光栄だとも感じた。迷いもあったが、期待に応えたいと考え、覚悟を決めた」と語る。
 
インテグレーションが求められている
 SE出身の社長は、黒川博昭氏以来、11年ぶりである。
 
 「入社以来、私が所属してきたSE部門は、システム本部からシステムインテグレーション本部、サービスインテグレーション本部と、何度も名称が変わってきた。これは、ビジネスそのものや、お客様の要望が変わっているからこそである。
 
 システムにはインテグレーションが必要であり、いまはデジタルの時代における新たなインテグレーションが注目されている。自前のサービスだけでは、デジタル化を支援することができない。さまざまなサービスベンダーと協業するインテグレーションが求められている。数々のインテグレーションの経験を生かすことが、社長に指名された理由であると考えている」とも述べた。
 
必要であれば人員に手をつけることも
 時田次期社長は「プラットフォーム単体でビジネスができる時代ではなく、アプリケーションやサービスだけで勝負できる時代でもない。サービス、プラットフォーム、アプリケーションを統合し、富士通が最も強いインテグレーションの力によって、新たな価値を作り上げることが大切である。
 
 とくに海外のテクノロジーの知見を取り入れることが必要である。そして、サービスオリエンテッドカンパニーとしての成長を目指す富士通にとっては、人材が一番大切である」とした。
 
 とはいえ「変化を捉えながら、変革は行なっていく。必要であればやらねばならない。具体的には決まっていないが、人員についても手をつけることもあるだろう」とも語る。
 
 一方で富士通が持つ課題についても指摘する。
 
富士通のSEは協業が下手
 「富士通には優秀な人材と、尖った技術やアイデアがある。それにも関わらず、それを統合したり、知恵を結集して、次の未来やステップを描いたりすることが難しい状況にある。この理由はなにか。
 
 長年に渡って、お客様を第一とし、現場に強く、お客様に寄り添ったビジネスを行なう反面、アイデアを出しながら、次のテクノロジーでお客様の新たな価値を届けることが不得意になっていたためだ。お客様の要望を聞くことだけで、リスクヘッジするマインドセットが生まれていた。
 
 これが、お客様を積極的にリードするメンタリティーにおいて、阻害要因になっている。かつては、メインフレームも、OSも、ミドルウェアも富士通製であり、すべてを富士通製でできることがプライドであり、それがお客様にとって一番いいことであると思っていた。
 
 いまは、自前だけではできない時代であり、お客様が求めているのは自前よりもスピードである。いまは外の力を使って協業することが大切ではあるものの、富士通のSEはそこが下手である。これが正直な思いである。外をもっと使うんだということを後進に伝えていきたい」とし、グローバル展開についても、
 
 「富士通が持つ、ひとつひとつの強いところを伸ばしながら、横の連携ができるマネジメントのメカニズムを定着させたい。グローバルビジネスは、堅調といえる状況にはない。世界8ヵ所のデリバリー拠点もうまく使いきれていない。それは自ら指揮をしてきて感じている点である。
 
 8拠点を横に連携させ、現場からの知見をデリバリーやサービスを作り上げるメカニズムを通じて、お客様に近いところで新たな価値を届けたい。デリバリー拠点は発注者と受注者という上下の関係でビジネスを行ないがちだが、まずはお客様の近くに立つことが大切である。
 
 グローバルと日本というように組織が分かれている状況も課題であり、いかに一体化して活動できるかが大切である。そうした活動ができるグローバルの組織にしたい」とする。
 
 そして「日本のSEと同じような活動を、グローバルに行なうには、まだ時間がかかる。だが、そうした姿を目指したい」述べた。
 
これまではテクノロジーソリューションに集中
 また「私は、メガバンクのトラブルのなかでも渦中のなかにいた。メンタルの部分でも鍛えられた」としたほか、「現場のSEの力だけでは、お客様のダイナミックな変革支援ができない。PCを作っている人たちや、ソフトウェアを作っている人たち、ネットワーク部門の力を結集することが大事である」などとも語った。
 
 一方、6月に会長に就任する田中社長は「私は社長就任以来、富士通の形をかえる、質をかえることに取り組んできた。形をかえるという意味では、コアとなるテクノロジーソリューションに集中することで着実な成果をあげた。
 
 2019年1月からは、テクノロジーソリューション事業を進化させ、質をかえる取り組みを加速してきたが、今後の事業の成長、発展を目指すためには、新しいリーダーによる、新しい経営体制に引き継ぐことがいいと思い、いまがそのタイミングだと考えた」と述べる。
 
計画の途中でバトンを渡すことにならない
 2015年10月に発表した経営方針では、田中社長の在任期間中に連結営業利益率10%以上、海外売上比率50%以上を目標に掲げていたが、2018年10月にはこれを撤回。テクノロジーソリューション事業において2022年に営業利益率10%の達成を目指すとしていた。
 
 「お客様に提供できる価値によって、営業利益率が決まってくる。だからこそ、私は営業利益率10%にこだわってきた。また、グローバル企業として戦うには、8~10%、あるいはそれ以上の営業利益率が必要だと考え、それが成長を支える基盤になると捉えていた。人材、経験、技術、リソースといった点では、グローバルで戦う形の道筋はできたが、まだ確立できていない」とし、
 
 「世の中の変化は激しい。目標としている2022年までに3年ある。ここは思い切って、新たな社長の体制でやることがいいと考えた。しっかりとプランを立てて、新たな体制でこれをやり切ってもらいたいと考えた。自分では、計画の途中でバトンを渡すことにならない、この考え方で正しいという納得感がある」とした。
 
予想外の就任
 また「富士通は、まだ適材適所にはなっていない。シナジーが出る形になっていない」とし、「富士通には創造的な技術力や経験、ノウハウがあるが、これらを統合した形でお客様に価値を提供できていない。シナジーを出さなくてはならない。これが成長につながる。
 
 また、グローバルのプレゼンスを上げていかなくてはならない。ここには、直前までロンドンでグローバルビジネスを行なっていた時田氏の経験が生きるだろう。パワフルな人物であり、シナジーを生むことにも期待したい」と発言。
 
 「時田氏はシビアさが求められ、さまざまなことが起こる金融機関の大規模プロジェクトをマネージしてきた。なにがあっても動じないこと、ビジョンを持っていること、達成するために部下を牽引していくことができる。富士通が抱えている課題を解決し、変革を成し遂げることができる力強さを感じた」とした。
 
 時田氏の社長就任は、関係者の間でも予想外のものだったといえる。現場を知る、SE出身の新社長がどんな手腕を発揮するのか。富士通のこれからの変化に注目したい。
 
文● 大河原克行、編集●ASCII

最終更新:5/9(木) 18:13
アスキー

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