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「ロボット工学三原則」に正面から取り組んだ『アイ,ロボット』※注!ネタバレ含みます。

4/26(金) 14:36配信

CINEMORE

「ロボット工学三原則」をテーマとした映画

※本記事は物語の結末に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。


 アレックス・プロヤス監督のSF映画『アイ,ロボット』(04)は、シナリオライターのジェフ・ヴィンターによるオリジナル脚本「Hardwired」に、アイザック・アシモフの短編集「われはロボット」(50)の要素をブレンドして作られたストーリーが基になっている。

 ロボットが生活に溶け込んだ2035年のシカゴを舞台に、USロボティクス社のラニング博士(ジェームズ・クロムウェル)が謎の死を遂げることから物語が始まる。事件の捜査を担当するスプーナー刑事(ウィル・スミス)は、これが自殺ではなく殺人であり、容疑者はNS-5型ロボットのサニーであることを突き止める。

 しかしラニング博士の愛弟子でもあるカルヴィン博士(ブリジット・モイナハン)は、ロボットの陽電子頭脳にプログラミングされた「ロボット工学三原則」(*1)によって、そんなことは起きえないと反発する。そしてスプーナー刑事は、警察組織内でも孤立していくのだった。


*1 第一条: ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。第二条: ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、与えられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。第三条: ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのない限り、自己を守らなければならない。

ロボットの演技

 本作におけるロボット・サニーの動きは、舞台俳優やアニメの声優として活躍しているアラン・テュディック(*2)の演技がベースになっている。担当したのは、ロボットが登場する535カットを手掛けたデジタルドメイン社の、アニメーション・スーパーバイザーであるアンディー・ジョーンズだ。彼は、『ファイナルファンタジー』(01)のアニメーション・ディレクターや、短編作品集『アニマトリックス』(03)の「ファイナル・フライト・オブ・ザ・オシリス」で監督を務めた実績を買われてこの仕事を任された。

 こういったCGキャラクターを表現する際、普通に考えたらモーションキャプチャー(*3)を使用したと思うだろう。現在なら、ヘルメットカムなどと呼ばれる頭部搭載のカメラで表情を読み取ったり、手袋型のデバイスで指先の細かな動きまで拾える。だがこの時代はキャプチャー技術が未熟であり、俳優の大まかな動きしか捉えられなかった。

 またキャプチャー作業は、ボリュームと呼ばれる専用スタジオ(*4)を必要とする。そのため普通のスタジオやロケ現場で、俳優の演技と同時にキャプチャーすることもできなかった。

 ジョーンズは、今回315カットを担当するWETAデジタル社が、『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』(02)のゴラムに用いた手法を参考にした。これは3Dロトスコープと呼ばれるテクニックで、通常のセットやロケにおいて、俳優たちの演技と同時にテュディックらロボット役の撮影を行う。そして、撮影された映像からアニメーターたちが表情を読み取って、CGモデルに当てはめていった。


*2 テュディックは『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)の「K-2SO」も演じている。

*3 アクションシーンなどにおいては、モーションアナリシス社の赤外線カメラを用いた、光学式モーションキャプチャーも行われている。またロングショットでNS-5が蟻のように群がるシーンは、WETAデジタル社が『ロード・オブ・ザ・リング』(01)のために開発したAI群衆シミュレーションソフトのMassiveも使用されている。

*4 現在は、「LEDマーカーを用いる」「慣性センサーやGPSを利用する」「スーツに描かれた図形パターンから画像ベースでキャプチャーする」などといった方法で、屋外でもモーションキャプチャーが使用できるようになった。

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最終更新:4/27(土) 1:00
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